幸福な退職―「その日」に向けた気持ちいい仕事術―(スージー鈴木)の書評

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幸福な退職―「その日」に向けた気持ちいい仕事術―
スージー鈴木
新潮社

本書の要約

スージー・鈴木氏の仕事術の基本には、MMK(無駄なく・無理なく・機嫌よく)という考え方があります。著者は無駄な時間や労力を削減し、自分らしく働くべきだと述べています。本業だけでなく、複業(2枚目の名刺)を持つことで、自分の可能性を広げられ、幸せな退職が実現できるようになります。

MMK(無駄なく・無理なく・機嫌よく)が生産性を高める理由

無駄なく・無理なく・機嫌よく(スージー鈴木)

この本にもっと早く出会っていたら、私の広告会社時代はもっと楽しいものになっていたでしょう。 広告会社は根性と頭と要領の良さが求められるというストレスフルな環境です。チームで仕事をする、厳しい締め切りが存在するために、残業が当たり前の過酷な職場でした。

実際、名誉の戦死も度々起こっていましたが、私は運よく生き延びることができました。もし、あの時死んでいたら、今の楽しい人生には巡り会えなかったのですから、「仕事なんかで死んでたまるか!」という著者の考えに共感を覚えます。

55歳を機に博報堂を退職したスージー鈴木は、サラリーマン時代から音楽評論家として活躍し、2速の草鞋を履いていました。著者が実践してきた仕事術には、「2枚目の名刺を」「5×10の法則」「65点主義」などがあります。この働き方の根底にMMK(無駄なく・無理なく・機嫌よく)があります。

・2枚目の名刺を・・・1つの分野にとどまらず、異なる分野での経験を積むことで、自分の世界を広げられます。他の業界を知ることで、働き方や思考法を変えられます。自分の強みも再発見できます。

私も48歳の時に本を出版することで、2枚目の名刺を持つことができました。ここから会社に依存することがなくなり、自分らしく生きることができるようになり、その後の独立にも繋がりました。皆さんもぜひ、自分のやりたいことを肩書きにし、実際に名刺を作ってみてください。

・5×10の法則・・・効率的な時間管理を実現するための方法。遅刻するメンバーの人数分だけ、生産が下がります。(ネガティブ版「5×10の法則」)会議のテーマに関して、たった10分でもいいから、時間をかけて参加者が何かアイデアを考えてくることで、5人×10分=50分の事前アイデア群から議論を始めることが出来るので、生産性が高まります。(ポジティブ版「5×10の法則」)

・65点主義・・・完璧主義から解放されるための考え方です。スージー鈴木は、仕事やプロジェクトに対して必ずしも100点を目指さず、65点で十分と考えることで、自分の生産性を高められます。アウトプットの確認を提出先に早めにしておくことで、無駄な作業や失敗を防げます。

スージー鈴木の仕事術は、若手から定年前までのあらゆる世代にとって有益なものです。無駄なく働き、効率的に仕事をこなすことでストレスを軽減し、充実感を得ることができるのです。また、幸福な退職を迎えるためにも、仕事に対して適度なプレッシャーをかけることや、複数の分野で経験を積むことが重要だと思います。

会社から離れるとあれほど悩んでいた職場での人間関係が小さなものに見えます。外の世界を知れば知るほど、人間関係で悩まなくなるというのが、私の独立してからの体験からも言えます。

スージー・鈴木のカニ十則

自席にふんぞり返って、人と情報を待つだけのオヤジ。そんなオヤジからは人や情報が離れていきます。逆なんです。歳を重ねるほど、社内の若者や取引先に対して、自分から積極的に動く。自分から動いて、時間を積極的に動かしていく。そうすると、人や情報が集まってきます。

広告会社での昇進に伴い、現場での活動が減少するという傾向があります。これは広告会社における一般的な現象です。昇進すると、クライアントやパートナーとの接触時間が減り、情報が集まらなくなり、結果として仕事の質が低下してしまうことがあります。

しかし、この問題を解決するためには、自ら積極的に動くことが重要です。自分から行動し、時間を有効活用することで、人や情報が集まってくるのです。

自分らしい退職をするためには、「無駄なく・無理なく・機嫌よく」(MMK)が重要であることを著者はカニ十則として提案しています。(電通の鬼十則のパロディ)

1、「無駄なく・無理なく・機嫌よく」(MMK)
2、「仕事なんかで死んでたまるか」
3、「17時53分に席を立つ」
4、「65点でいい。でも安定的に65点を」
5、「明日出来ることは今日しない」
6、「1つの仕事に1つのアイデア、スプーン1杯の自己顕示欲を」 
7、「アイデア作りは『ひろげ』と『ぶつけ』」
8、「議論を具体に引きずり落とす」
9、「ですよねー」
10、「もう終わっちゃったのかなぁ」「まだ始まっちゃいねえよ」 

自分の人生とキャリアを自分の手でコントロールすることは、真の自由と幸福感を手に入れる鍵となります。他人の期待や視線を気にしすぎると、自分の本当にやりたいことや目指すべき方向が見えにくくなることがあります。 今の会社や職場にしがみつくのではなく、客観的に自分のキャリアを評価し、2枚目の名刺(複業)を持つようにしましょう。

異なる分野や業界での経験や知識を積むことでネットワークが広がり、新しいチャンスや可能性に目を向けられるようになります。2枚目の名刺を持つことで、会社を早期退職できますし、退職後も仕事に困らなくなります。


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