なぜ、スーパーの入り口に野菜売り場があるのか?勘違いが人を動かす 教養としての行動経済学入門の書評

bunch of vegetables

勘違いが人を動かす 教養としての行動経済学入門
エヴァ・ファン・デン・ブルック, ティム・デン・ハイヤー
ダイヤモンド社

勘違いが人を動かす 教養としての行動経済学入門の要約

経済行動学は、マーケティングで重要な役割を果たしています。特にスーパーマーケットや小売店では、この学問を使って売上を伸ばす戦略が採られています。例えば、レジの近くに、お客さんがつい買ってしまうような商品を置くことで、消費者の「衝動買い」を促すことができます。

なぜ、スーパーの入り口に野菜売り場があるのか?

建築家は、建物内の動線を入念に設計する。私たちが普段何気なく辿っているスーパーマーケットの買い物ルートやオンラインショップの経路にも、マーケティングの視点が徹底的に活用されている。 人を進むべきルートに誘導したい場合、はっきりとわかる矢印や道標が用いられることもある。(エヴァ・ファン・デン・ブルック, ティム・デン・ハイヤー)

私たちは日常生活の中でマーケターとの騙し合いを演じています。店側は顧客の財布を開かせるために、さまざまなトリックを私たちに仕掛けてきます。

・スーパーではなぜ最初に野菜売り場があり、その後でお菓子売り場を通るようになっているのでしょうか?
スーパーの入り口付近に生鮮食品のコーナーが配置されているのは、綿密なマーケティング戦略と顧客行動心理学の応用によるものです。この戦略は、店が儲かるように設計された買い物ルートを作成することを目的としています。

▪️新鮮な第一印象
生鮮食品は色鮮やかで、顧客に新鮮で質の高い商品の印象を与えます。この第一印象は店全体のイメージを形成し、顧客のショッピング体験に肯定的なスタートをもたらします。

▪️健康的な選択の促進
生鮮食品を先に目にすることで、顧客は健康的な商品を最初にカゴに入れる傾向があります。これにより、「健康的な選択をした」という自己満足感が生まれ、後の買い物で高カロリーまたは不健康な商品を選ぶ際の罪悪感を軽減します。これは「目標達成の代行」と呼ばれる現象です。

▪️購買行動の誘導
生鮮食品を入り口付近に配置することで、顧客は店内を一通り回る必要があり、これにより他の商品にも目を通す機会が増えます。その結果、計画外の購入が促進されることがあります。

▪️環境の活用
入り口付近は自然光が入りやすく、生鮮食品をより魅力的に見せる効果があります。

これらの要因は、スーパーの売上を増加させるだけでなく、顧客に快適で満足のいくショッピング体験を提供することを目的としています。このような戦略は、顧客の無意識の行動に影響を与え、最終的にはスーパーの利益向上に貢献しています。

なぜIKEAの出口付近では、安いソフ トクリームが売られているのか?

・なぜIKEAの出口付近では、安いソフ トクリームが売られているのでしょうか?
IKEAでの安いソフトクリームの販売は、効果的なマーケティング戦略と消費者心理学の応用の絶好の例です。この戦略の背後にはいくつかの重要な理由があります。

▪️ポジティブな最後の印象
IKEAのショッピング体験は、大規模な店舗と長い通路で知られています。訪問の終わりに安価なソフトクリームを提供することで、顧客にポジティブな最終印象を残します。この「ピーク・エンドの法則」によると、人々は体験のピーク(最も強い感情)と最後(終了時の感情)をもとに全体を評価する傾向があります。

▪️顧客満足の向上
安いソフトクリームは、顧客が長い買い物の後にリラックスできる瞬間を提供し、全体的な顧客満足度を高める効果があります。

▪️インパルス買いの促進
出口付近での安いソフトクリームの販売は、インパルス買いを促進します。小さな追加支出は、顧客が既に大きな購入を行った後であれば特に容易に感じられるため、この戦略は特に効果的です。

▪️ブランドイメージの強化
低価格での提供はIKEAのコストリーダーシップと価値提供のブランドイメージを強化します。これは、顧客に対してIKEAが常に価値を提供するというメッセージを伝えます。

▪️店内滞在時間の延長
顧客が店を出る前に何かを食べることで、店内での滞在時間が自然と延長され、これが追加購入につながる可能性があります。

▪️口コミ効果
安いソフトクリームは顧客にとって魅力的な話題となり、口コミやソーシャルメディアを通じてIKEAの宣伝に貢献します。

これらの要素を通じて、IKEAは顧客体験を高めるとともに、ブランドイメージを強化し、最終的には売上げ増加につなげています。

チェックアウト・マグネットとは?

マクドナルドの商品ラインナップの変化と、スーパーマーケットのレジ付近の設計に関する戦略は、両方とも消費者行動心理学に基づいています。

・マクドナルドの戦略
マクドナルドは、2000年代以降、健康志向が高まる消費者ニーズに対応し、サラダや天然水などの健康的な商品を導入しました。この戦略は、消費者が「健康的な選択」をすることで得られる満足感を利用しています。この「目標達成の代行」と呼ばれる現象により、顧客は健康的な商品を選んだ後、脂っこいファストフードメニューを選ぶ際に罪悪感を感じにくくなります。

結果として、健康的な商品の導入は、従来のファストフードメニューの売り上げを伸ばす効果ももたらしています。

・スーパーマーケットのレジ付近の戦略
スーパーマーケットは、顧客がレジに近づくにつれて足早になる傾向を理解しています。この現象は「チェックアウト・マグネット」と呼ばれており、顧客が商品を素早く選ぶことで衝動買いが促進される可能性があります。このため、レジ付近には通常、インパルス買いを促すような小物やお菓子などが配置されています。

レジ横での割高なチョコレートを衝動買いしてしまう現象は、自我消耗(ego depletion)という心理学的理論と深く関連しています。この理論によると、人々は一連の誘惑に耐え続けることで意志力を消耗し、最終的に非合理的な選択をする傾向があります。

たとえば、スーパーマーケットでの買い物中、多くの人は健康的で経済的な選択をしようと意識します。これには、添加物を避ける、割安な大容量パックを選ぶ、不必要な商品の購入を控える、特定の食品への誘惑に抵抗するなどが含まれます。

しかし、このような繰り返しの自制により、人々の意志力は徐々に弱まります。 買い物の最終段階において、特にレジ横などで、衝動買いを促す商品が配置されている場合、消費者は自我消耗により意志力が低下している状態にあります。

そのため、我慢ができずにレジ横の割高なチョコレートなどの衝動買いをしてしまうことがよくあります。この状況は、前頭葉のエネルギー枯渇と関連していると考えられており、一時的な意志力の低下により、通常なら避けるような選択をしてしまうのです。

スーパーマーケットや小売業者が売上を最大化するために、経済行動学を活用しています。レジ付近に衝動買いを促す商品を配置することで、消費者の自我消耗を利用し、追加の売上を生み出すことが可能になるのです。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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