イノベーションは日々の仕事のなかに――価値ある変化のしかけ方(パディ・ミラー, トーマス・ウェデル=ウェデルスボルグ)の書評

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イノベーションは日々の仕事のなかに――価値ある変化のしかけ方
パディ・ミラー, トーマス・ウェデル=ウェデルスボルグ
英治出版

イノベーションは日々の仕事のなかにの要約

リーダーは、「フォーカス」「つながる」「ひねる」「選ぶ」「ひそかに進める」の5つの行動と、追加行動としての「あきらめない」という「5つの行動+1」のフレームワークを部下に実践させましょう。このイノベーション・エコシステムを採用することで、組織文化を一新し、イノベーションを前進させることができます。

リーダーにとってのイノベーションとは何か?

[イノベーション] 昨日までとは違う行動によって、成果を生むこと
[イノベーションの設計者] 他者がイノベーションを起こすのを支援する人(パディ・ミラー, トーマス・ウェデル=ウェデルスボルグ)

イノベーションは、従来の考えを超えた新たな行動から成果を生み出すプロセスです。このプロセスにおいて、リーダーは直接イノベーションを実施するよりも、むしろ部下が日々の仕事の中で新しいアプローチを試みやすい環境を整えることが重要です。

このため、リーダーには「イノベーションの設計者」という役割が求められます。この役割には、チームメンバーが新しいアイデアを考え、実現するためのサポートを提供することが含まれます。

イノベーションを推進するためには、リーダーが戦略的な目標を明確にし、これをチームと共有することが不可欠です。明確な方向性を示すことで、チーム全体が目標に向かって団結し、イノベーションへの取り組みを促進することができます。

以下の3つの重要な概念が、イノベーションを促すリーダーシップには不可欠だと著者らは指摘します。 
①イノベーションのリーダーとしての役割は、自らがイノベーターになることとは異なります。多くのリーダーは、自分自身が直接イノベーションを生み出そうとしますが、リーダーの真の任務は、イノベーションを起こそうとする部下を支援することにあります。部下をイノベーターとして育て、彼らが革新的な成果を出せるよう後押しすることが、リーダーの役割です。

②イノベーションは日常業務の一部として取り組むべきものです。多くの企業がイノベーションを特別なイベントやブレーンストーム合宿でのみ追求しようとしますが、真のイノベーションは日々の業務の中で生まれます。リーダーは、部下が毎日創造的な取り組みを継続できるようサポートする必要があります。

③最も重要なのは、イノベーションを実現するための支援の仕方です。リーダーは部下を変えるのではなく、部下がイノベーターとして活躍できる環境を整えるべきです。職場の環境と人間関係をデザインし、日常的にイノベーションが生まれやすい状況を作り出すことが、リーダーの主要な任務となります。

このように、リーダーを「イノベーションの設計者」と位置づける理由も、そこにあります。リーダーは、部下が創造性を発揮しやすい職場を作り、日々のイノベーションを促進することで、組織全体の成長を支援する役割を担っています。

その上で、部下に動いてもらう環境を整備することがリーダーには求められます。著者らは「5つの行動+1」というフレームワークで環境を整えられると述べています。

イノベーションを起こす「5つの行動+1」

著者らが紹介する「5つの行動+1」では、イノベーションを促進するための具体的な行動パターンが紹介されています。以下がその要約です。
①フォーカス

イノベーションの設計者には、「本当に重要なことにフォーカスできるよう、部下を導く」ことが求められるのである。

日常の業務の中でイノベーションを促進するには、リーダーが部下に明確な制約を設定し、彼らが真に解決すべき課題に注力できるようサポートすることが効果的です。この方法を通じて、リーダーは部下に「フォーカス」する行動を促し、彼らの創造性を会社の目標に沿った方向へと導くことができます。

単なる思いつきではなく、制約の中で育まれたアイデアは、組織のニーズに合致し、より実現可能で価値あるものになります。リーダーはこのプロセスを通じて、部下が重要な問題解決に向けて集中し、実用的なイノベーションを生み出す手助けをすべきです。

②つながる。外の世界との接続
影響力のあるアイデアを生み出すためには、多様な人々や異なる環境との交流が不可欠です。新しい視点を受け入れ、外部の世界とのつながりを深めることが、新たな発見へとつながります。リーダーには、部下がこれら未知の領域と接続できるようサポートする責任があります。外部との交流を促進し、部下が異なる文化やアイデアに触れる機会を提供することで、チーム全体の創造力とイノベーションの力を高めることができます。

③ひねる。アイデアの改良

イノベーションの設計者は、彼らが絶えずアイデアを試行したり見直したりするのをサポートしなければならない。そうして彼らに定期的にフィードバックを与えて、迅速に学習、試行する文化を広める必要がある。 アイデアを洗練させるには、反復的に試行し、フィードバックを活用して改善を続ける必要があります。

④選ぶ。アイデアの選択
すべてのアイデアは、考案者にとって価値のある宝物です。しかしながら、実際には多くのアイデアが現実の基準に達しないことも事実です。このため、組織はアイデアを慎重に選別し、実際に投資する価値のあるものとそうでないものを区別しなければなりません。価値のあるアイデアを見極めるには、客観的な基準を設定し、厳しい評価を行うことが求められます。

⑤ひそかに進める。秘密裏に進行
イノベーションを設計するリーダーには、部下がイノベーションを追求しやすいような社内政治環境を構築し、障害を乗り越えるための道を開く役割があります。社内の障壁を乗り越えるには、熟練した交渉術と政治的な巧みさが求められます。適切な時期に、適切な方法で提案を進め、広範な支持を獲得することが、この過程の鍵となります。

+1. あきらめない。

イノベーションというパズルの最後の1ピースは、「モチベーション」である。部下のモチベーションを上げ、彼らの好奇心や社内の報賞制度を利用して、逆境に遭ってもあきらめずにイノベーションを追求することを促さなければならない。なぜなら、創造性は選択するものだからだ。イノベーションの設計者はイノベーション追求の手法を絶えず改良して、部下が5つの行動を「あきらめずに継続」できるよう努めなければならないのである。

イノベーションを追求するモチベーションを維持するには、失敗から学び、持続的に努力を続ける姿勢が必要です。

リーダーシップにおけるキーポイントは、「5つの行動+1」というフレームワークの実践です。このアプローチを組織全体に取り入れることで、イノベーションを促進し、組織文化を刷新するイノベーション・エコシステムが形成されます。

このフレームワークを導入することで、リーダーは部下に対し、より創造的で生産的な働き方を促し、組織全体のイノベーション能力を高めることができます。

本書では、このフレームワークを実践することで成功を収めた多くの例とともに、それを支える先人の理論が紹介されています。リーダーは、イノベーションに成功した巨人の肩に乗り、これらの行動を日々の業務に組み込むことで、組織内の変革と成長を促進できるようになります。

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