Google vs Microsoft 生成AIをめぐる攻防 (山本康正)の書評

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Google vs Microsoft 生成AIをめぐる攻防
山本康正
日経BP

Google vs Microsoft 生成AIをめぐる攻防 (山本康正)の要約

生成AIの登場により、私たちの世界は急速に変化しています。この波に乗り遅れないことが、日本企業にとって今、最も重要な課題となっています。テクノロジーを恐れず、変化に適応することで、日本企業は新たな成功への道を切り開くことができるでしょう。今こそ、リーダーは勇気を持って一歩を踏み出す時なのです。

生成AI時代にアルゴリズムが重要な理由

ビジネスの鍵を握るのは最終的にはアルゴリズムです。アルゴリズムを洗練させるためにデータ活用が重要になるという順序です。(山本康正)

テクノロジーの進化は、私たちの生活やビジネスのあり方を根本から変えつつあります。特にAI技術の発展は、企業間の競争を超えて、社会全体に大きな影響を与えています。

AIにおけるGoogleとMicrosoftの攻防は、単なる企業戦略の域を超え、私たちの日常生活や働き方に変革をもたらす可能性を秘めています。さらに、新興企業の台頭により、AI技術の応用範囲が拡大し、新たな市場が創出されつつあります。 この変革の中心にあるのが、OpenAIが開発したChatGPTです。その自然な対話能力と幅広い知識は、多くのユーザーを魅了し、AIの可能性に対する認識を一変させました。

しかし、この革命の真の主役は、企業の名前などではなく、その根幹を成すアルゴリズムにあります。かつてGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)と呼ばれたビッグテック企業群に代わり、より洗練された効率的なアルゴリズムを開発した新たな企業群が台頭してきました。

GOMA(Google、OpenAI、Microsoft、Anthropic)と呼ばれるこれらの企業は、AIの未来を形作る重要なプレイヤーとして注目を集めています。

私も各社のAIを使い倒し、その特徴や長所を実感しています。最近では、新興のAnthropicが開発したClaudeの使用頻度が増えています。Claudeは、高度な理解力と柔軟な対応力を持ち、複雑なタスクにも適切に対処できるAIとして評価を得ています。

AIの発展は、私たちの生活や仕事のあり方を大きく変えつつあります。GOMАを中心とした企業群の競争は、より高度で有用なAIの創出につながり、社会全体にポジティブなインパクトをもたらす可能性を秘めています。今後も、アルゴリズムの進化とAI技術の発展に注目が集まることでしょう。

アメリカではこのアルゴリズムを巡る熾烈な競争が繰り広げられていますが、日本はその競争の入り口に立っているに過ぎません。日本企業は、アルゴリズム競争の前提条件であるデジタル化でつまずいているのが現状です。この遅れを取り戻すためには、デジタル化の加速と同時に、アルゴリズム開発に向けた戦略的な投資が不可欠です。

アルゴリズムの世界で成功を収めるためには、オープンイノベーションへのシフトが鍵となります。GOMA各社の間でトップ人材が流動的に行き来している様子は、この傾向を如実に物語っているとDXのスペシャリスト・投資家の山本康正氏は指摘します。(著者の関連記事はこちらから

実際、企業の垣根を越えた知識と技術の交流が、イノベーションを加速させています。 イーロン・マスクがツイッター(X)に注目したのも、このアルゴリズム革命を見据えてのことだと言います。リアルタイムで大量の新鮮な情報が流れるプラットフォームは、AIの学習と進化にとって理想的な環境です。

マスクは、最新のデータを継続的に入手することが、AI駆動型ビジネスの可能性を広げる鍵だと理解していたのです。 しかし、ビジネスの差別化要因は変化しつつあります。もはやデータだけでは、競争優位性を維持するMoatにはなりにくくなっています。

代わりに、高性能なアルゴリズムを実現できる半導体を含めた計算環境や、高度なモデルを構築できる人材が、ビジネスの成否を左右する重要な要素となっています。 この新たな競争環境において、日本企業も積極的に変革を進める必要があります。デジタル化の遅れを取り戻すだけでなく、アルゴリズム開発に注力し、グローバルな人材の獲得と育成に力を入れることが求められます。

また、オープンイノベーションの理念を取り入れ、国内外の企業や研究機関との協力関係を築くことも重要です。 AI時代の到来は、ビジネスのあり方を根本から変えつつあります。

この変革の波に乗り遅れないためには、企業はデータ、アルゴリズム、人材という3つの要素に戦略的に投資し、継続的なイノベーションを追求する必要があります。日本企業にとって、この変革期は大きな挑戦であると同時に、グローバル市場で存在感を高める絶好の機会でもあります。AI技術を活用した新たなビジネスモデルの創出に向けて、今こそ果敢に挑戦する時なのです。

GoogleとMicrosoftのAIにおける熾烈な戦い

AIの急速な進化が私たちの生活や社会に多大な影響を及ぼす中、GoogleとMicrosoftという二大テクノロジー企業の争いが熾烈になっています。

Googleののスンダー・ピチャイCEOは、OpenAIが開発したChatGPTを「検索サービスの脅威になる可能性がある」と捉え、即座に対策を指示したと報じられています。 この素早い対応は、テクノロジー企業のトップに求められる重要な資質を示しています。

急速に変化する技術環境において、新たな革新がもたらす影響を迅速に評価し、適切な戦略を練る能力が不可欠なのです。AIの未来を形作る上で重要な視点を提供しています。

Googleは、AI技術の民主化と実用化に重点を置いています。同社の目標は、AIをより多くの人々が日常的に利用できるようにすることです。この理念に基づき、GメールやGoogle WorkSpaceといった広く普及したサービスにAI機能を統合し、ユーザーの生産性向上を図っています。

特筆すべきは、Googleが開発した大規模言語モデル「Palm2」の多様性です。「Gecko」「Otter」「Bison」「Unicorn」という4つの異なるサイズを用意することで、様々な用途や環境に対応できるようにしています。 中でも最も軽量な「Gecko」は、モバイル端末やオフライン環境でも動作する点が大きな強みとなっています。これは、主にオンライン利用を前提としているChatGPTとは一線を画す特徴です。

さらに、BardからGeminiへの名称変更後も、「nano」「advanced」「Ultra」といった新たなモデルをリリースし、AIの適用範囲を拡大し続けています。

Googleの戦略は、オンラインとオフラインの両方で使えるAIというメリットを前面に押し出しています。特に、Android端末のソフトウェアに生成AIを組み込むことで、企業向け(BtoB)と消費者向け(BtoC)の両方のマーケットを視野に入れた展開を図っています。これにより、AIの利用シーンを大幅に拡大し、市場の成長を加速させることを目指しているのです。

一方、Microsoftは既存の強みを活かしたアプローチを取っています。Office製品群などの広く普及したソフトウェアにAI機能を統合することで、製品の差別化を図っています。かつては衰退の兆しが見られたMicrosoftですが、AI時代への適応を迅速に行い、現在では時価総額ランキングで3兆ドルを超え、AppleやNVIDIAと覇権を争うまでに復活しました。

この驚異的な復活は、CEOのサティア・ナデラの先見性に富んだリーダーシップと戦略的な判断によるところが大きいと評価されています。

Microsoftの特徴的な戦略として、オープンな協力関係の構築が挙げられます。同社は他の企業、研究機関、さらには政府機関との連携を積極的に推進し、AI技術の開発と応用において幅広い協力体制を築いています。このアプローチにより、AIの進化がより広範な影響力を持つことが可能となり、技術の発展と社会の進化が調和しながら前進することを目指しています。

GoogleとMicrosoftのアプローチは、それぞれ異なる視点からAIの未来を形作ろうとしていますが、両社に共通しているのは、AIが単なる技術革新を超えて社会全体を変革する力を持つことを深く認識している点です。Googleは技術の民主化と実用化を通じて、AIの恩恵を広く社会に浸透させようとしています。

生成AI時代に重要なのは半導体。その中心にいるのがNvidia。

テクノロジー業界に新たな巨人が誕生しました。かつてはゲーマーのための高性能グラフィックスカードメーカーとして知られていたNvidiaが、今や人工知能(AI)革命の中心的存在となり、その時価総額は驚異的な成長を遂げています。Nvidiaは世界で最も価値のある企業として、AppleやMicrosoftの次に3兆ドルクラブの仲間入りを果たしました。

この急成長の背景には、生成AI技術の爆発的な普及があります。ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)の登場により、AIの可能性が一般にも広く認知されるようになりました。これらの先進的なAIモデルを支えているのが、Nvidiaの高性能GPUなのです。

同社のチップは、膨大なデータを高速で処理する能力を持ち、AIの学習と推論に不可欠な存在となっています。Nvidiaの成功は、半導体産業に新たな勢力図をもたらしました。従来の半導体大手であるIntelやAMD、そして製造を担うTSMCなどとの競争が激化する中、Nvidiaは独自のポジションを確立したのです。

大規模言語モデルの学習には膨大な計算能力が必要とされ、そのニーズに応えるのがNvidiaのチップになります。同時に、エネルギー効率の向上と環境への配慮も重要な課題となっており、より省電力で高性能なチップの開発が求められています。

Nvidiaの戦略は、ハードウェアだけにとどまらない。CUDAやTensorRTといったソフトウェアエコシステムの構築により、開発者にとって使いやすい環境を提供しています。さらに、自動運転技術やメタバースなど、新たな市場への進出も積極的に行っています。

Nvidiaの目覚ましい成功は、AI業界全体に大きな影響を与え、新たな競争の時代を切り開いています。2024年に入り、この分野での競争は一層激しさを増しており、大手企業や著名な起業家たちが次々と新たな挑戦を表明しています。 特に注目を集めているのが、ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏による大胆な動きです。

2024年2月、孫氏は1000億ドル規模の半導体ベンチャーの立ち上げを発表しました。「イザナギ」というコードネームで呼ばれるこのプロジェクトは、Nvidiaに真っ向から挑戦する姿勢を鮮明にしています。ソフトバンクグループはすでに英国の半導体設計会社Armを傘下に収めており、ソフトウェアとハードウェアの両面から総合的な開発を進める体制を整えています。この動きは、AI関連の半導体市場における競争をさらに加速させると予想されています。

一方、AI開発の最前線を走るオープンAIも、半導体分野への本格参入を視野に入れた動きを見せています。2024年2月上旬には、アラブ首長国連邦をはじめとする複数の投資家との交渉が報じられ、AI開発に不可欠な半導体製造のために約5兆ドルという巨額の資金調達を目指していることが明らかになりました。オープンAIの2024年2月時点での推定時価総額が約12兆円であることを考えると、この資金調達の規模は驚異的なものと言えます。

しかし、Nvidiaの時価総額が3兆ドルに達していることを踏まえると、AI半導体市場で真に競争力を持つためには、このような大規模の投資が必要不可欠であるという現実も浮き彫りになっています。オープンAIの大胆な投資は、AI技術の進化とそれを支える半導体技術の重要性を如実に示しています。

日本の経営者が今すぐにやるべきこと!

テクノロジーの進化が加速する現代ビジネス環境において、日本企業の経営者たちは新たな課題に直面しています。それは、急速に変化するテクノロジーの潮流を的確に捉え、迅速に対応する能力の必要性です。

近年、ビジネスにおける競争優位性の源泉が大きく変化しています。かつてはハードウェアやデータの所有が重要視されていましたが、現在では効率的なアルゴリズムの重要性が増しています。この傾向は、検索エンジン市場でグーグルが後発ながら優れたアルゴリズムを武器に、先行していたヤフーを追い抜いた事例を著者は紹介します。

このような環境下で、企業は従来以上にスピーディーにビジネスモデルを再構築する必要があります。そのためには、経営幹部自らが最先端技術、特に生成AIの驚異的な進化を体感し、理解することが不可欠です。 新しいテクノロジーやトレンドに対しては、冷静かつ的確な将来予測が求められます。特にAIやクラウドといった核心的技術の進化を追跡することで、ビジネスの未来図を描けるようになります。

しかし、日本企業がこれらの新技術の導入に遅れをとれば、先行する国や企業との差は急速に広がってしまいます。 Googleのスンダー・ピチャイCEOがChatGPTを「検索サービスの脅威」と認識し、即座に対策を指示したように、経営者には素早い判断と行動が求められます。

テクノロジーの過剰な期待に惑わされることなく、その本質を見極める力が必要です。 これからのビジネスパーソンにとって、テクノロジービジネスの理解は必須のスキルとなります。しかし、これは外部の専門家に任せきりにしても得られません。経営者自身が主体的に考え、全体像を把握する必要があると著者は指摘します。

メディアや政府からの情報に依存し、受動的な姿勢を取ることは、もはや時代遅れの危険な戦略と言わざるを得ません。テクノロジー革新の震源地が日本国外にシフトしている今、グローバルな視点で最新動向を捉える必要があります。

ラスベガスで毎年開催される「CES」は、その顕著な例です。この展示会に足を運べば、日本企業が国際舞台でいかに後塵を拝しているかが一目瞭然となります。私もCESにできるだけ参加していますが、各国のベンチャー・大企業のスピーディーな開発姿勢を目の当たりにすることで、大胆な変化が経営者にとって必須であること実感しています。

競争の激しい時代には、受け身の姿勢では競争に勝ち残ることはできません。世界の最先端を行く企業は、常に新しいトレンドを自ら作り出し、市場を先導しています。日本企業も、自ら先を読み、積極的に行動を起こす姿勢へと転換しなければ、グローバル市場で生き残ることは極めて難しくなるでしょう。

イノベーションを重視し、世界の変化に迅速に対応できる企業文化を育てることが、日本企業の将来の成功には不可欠です。経営者には、従来の慣習にとらわれず、新しい発想と行動力を持って企業を導くことが求められています。

ビジネスの前提条件が刻々と変化する現代において必要なことは、絶え間なく変化する環境を想像し、それに適応したサービスを自ら創出する能力です。「テクノロジービジネス音痴」という烙印から脱却し、自社の強みを活かしつつ、最新のテクノロジーを取り入れた独自の経営ビジョンを描くことが不可欠となります。

この変革には、経営陣のみならず、組織全体の意識改革が欠かせません。テクノロジーへの理解を深め、その可能性を最大限に引き出すための教育と投資が求められます。同時に、失敗を恐れず、迅速な意思決定と実行を可能にする組織文化の醸成も重要です。

グローバル競争が激化する中、日本企業が世界のテクノロジー革新の最前線で活躍するためには、従来の成功体験にとらわれることなく、常に先を見据えた柔軟な思考と行動が不可欠となります。テクノロジーの波に乗り遅れることは、ビジネスの機会を逃すだけでなく、企業の存続すら危うくする可能性があります。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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