トヨタで学んだハイブリッド仕事術(森琢也)の書評

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トヨタで学んだハイブリッド仕事術
森琢也
青春出版社

トヨタで学んだハイブリッド仕事術(森琢也)の要約

インプットを½にし、アウトプットを2倍にさせるハイブリッド仕事術は、個人と組織の生産性を劇的に向上させます。時間と労力を50%削減しながら成果を2倍に増やせば、相乗効果で生産性は4倍になります。この手法を取り入れることで、効率的な業務遂行と高い成果を創出できるようになります。

生産性を高めるハイブリッド仕事術とは?

時間や手間の投入(インプット)を½、成果(アウトプット)を2倍にできれば、ハイブリッド効果で生産性は4倍になります。(森琢也)

現代のビジネス環境において、生産性の向上は個人と組織の成功に不可欠です。しかし、単に長時間労働や過度な努力に頼るのではなく、より賢明なアプローチが求められています。

トヨタグループのデンソー出身のコンサルタントの森琢也氏は、「スマートインプット」と「ベストアウトプット」の組み合わせ=ハイブリッド仕事術によって、理論上4倍もの生産性向上が可能になると述べています。

①スマートインプット
このステップの目的は、ムダな時間や手間を徹底的に削減し、より少ないリソースで必要な成果を出すことです。ここでのポイントは、日々の仕事に潜むムダを徹底的に排除することです。

森氏は、すべての業務を「正味作業」「付随作業」「ムダ作業」の3つに分類することを提案しています。正味作業は直接的に価値を生み出す業務、付随作業はそれを支える業務、ムダ作業は不要あるいは非効率な業務を指します。

業務の見直し・仕分けを行った後、特にムダ作業の削減に着手します。過去の仕事を振り返り、本当に必要だったかを検証することで、多くのムダが浮き彫りになります。さらに、正味作業や付随作業にも隠れたムダがないか、常に疑問を持って見直すことが重要です。

私もクライアントの業務フローを見直し、「その仕事本当に必要なの?」と言う質問をして、ムダな作業を極力排除しています。

ムダ時間の削減では、トヨタ流の「マジメ×手抜き」の考え方が中心的な役割を果たします。この手法は、効率性を追求しつつ、品質や安全性を確保するという、一見矛盾する目標を同時に達成することを可能にします。 「マジメ×手抜き」のコア部分は、日常業務の中で「面倒だな」と感じる瞬間を見逃さず、それを積極的に効率化の対象とすることです。

「手抜き思考」では、日常業務の中で「面倒だな」と感じる瞬間を見逃さず、それを積極的に効率化の対象とします。例えば、繰り返し作業が多い仕事や、複雑なプロセスを要する業務などが、効率化の良い候補となります。

一方、「マジメ思考」は、効率化によって生じる可能性のあるリスクを事前に想定し、対策を講じる役割を果たします。これは、トヨタの「間違えたくても間違えられない仕組みづくり」の思想に基づいています。単に手を抜くだけでなく、それによって生じる可能性のある問題を予測し、システムやプロセスでそれを防ぐという考え方です。

この「手抜き思考」と「マジメ思考」の絶妙なバランスこそが、本質的な仕事を可能にする鍵となります。効率化を追求しつつ、品質や安全性を確保することで、真に価値のある成果を生み出すことができるのです。 「マジメ×手抜き」の実践には、自己の仕事スタイルを客観的に分析し、改善点を見出す勇気と努力が必要です。

例えば、効率化によって生まれた時間を、より創造的な業務や戦略的思考に充てることができます。また、無駄な残業を減らすことで、個人の生活の質を向上させることも可能になります。これは、長期的には個人の成長とキャリア発展にも大きく貢献してくれます。

さらに、この手法は個人レベルにとどまらず、チームや組織全体の生産性向上にも応用可能です。例えば、会議の進め方や情報共有の方法を見直すことで、組織全体の効率を飛躍的に高めることができます。全員がこの「マジメ×手抜き」の考え方を共有することで、組織文化そのものを変革する力にもなり得るのです。

重要なのは、この改善プロセスが一度きりのものではないということです。ビジネス環境や技術は常に変化しているため、定期的に自分の仕事のプロセスを見直し、新たな効率化の余地がないか確認することがポイントになります。

この継続的な改善の姿勢こそが、トヨタのカイゼン文化の本質であり、個人と組織の持続的な成長を支える基盤となります。 「マジメ×手抜き」の仕事術は、効率と品質の両立を可能にする画期的なアプローチです。

「スマートインプット」のもう一つの重要な要素は、「探し物時間をゼロにする捨てる技術」です。捨てる基準を明確にし、不要なものを捨て、必要なものをすぐに取り出せる環境を整えることで、大幅な時間節約が可能になります。これは物理的な整理整頓だけでなく、デジタル環境での情報管理にも適用できる考え方です。例えば、効率的なファイル命名規則やフォルダ構造の構築、検索機能の活用などが挙げられます。

さらに、「スマートインプット」には集中力を高めるためのテクニックも含まれます。様々なルーティンや集中力を高めるテクニックを活用することで、限られた時間内でより多くの成果を上げることができます。著者はポモドーロ・テクニックやズーニンの法則、ERCSのフレームワークなど様々なメソッドを組み合わせることで、パフォーマンスが高まると述べています。

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②スマートアウトプット
ビジネスにおいて直面する問題の多くは、表面的な現象の裏に隠れた本質的な課題が存在します。その本質を見抜き、効果的な解決策を見出すために、「引き算思考」が使えます。まず理想のゴールをイメージし、現状とのギャップを明らかにし、それを引き算し、問題を可視化します。

多くの場合、私たちは問題に直面すると「何かを足す」ことで解決しようとしますが、この思考法はその逆を行きます。現状の問題を明確にし、不要な要素や手順を特定し、それらを取り除いていくことで、真に必要な解決策が浮かび上がってくるのです。

引き算思考と相性が良いのが「なぜ×5回」という手法です。これは問題の根本原因を突き止めるための強力なツールで、表面的な問題だけでなく、その背後にある本質的な課題を明らかにするのに役立ちます。直面している問題について「なぜ」と問いかけ、その答えに対してさらに「なぜ」と問い、これを5回程度繰り返します。

「5回」は目安であり、本質に辿り着くまで続けることが重要です。例えば、「売上が減少している」という問題に対して、「なぜ売上が減少しているのか?」と問いかけ、その答えにさらに「なぜ」を重ねていくことで、表面的な「売上減少」という問題から、根本的な「長期的製品戦略の欠如」といった本質的な課題(真因)にたどり着くことができるのです。

「なぜ×5回」を引き算思考と組み合わせることで、問題解決のアプローチはさらに強力になります。引き算思考で不要な要素を取り除き、問題の輪郭をクリアにした上で、「なぜ×5回」で根本原因に迫っていくことで、より効果的な解決策を見出すことができます。

しかし、複雑化する現代のビジネス環境においては、従来の枠組みや専門分野だけでは対応しきれない課題が増えています。そこで注目されているのが「越境思考(クロスボーダー・シンキング)」です。越境思考は、異なる分野や領域の知識やアイデアを組み合わせて、新しい解決策を生み出すアプローチです。

既存の枠にとらわれず、広い視野で問題に取り組むことが特徴です。 フランス・ヨハンソンは、「大部分の人にとって、イノベーションの最良のチャンスは交差点にある。そこでは単にすばらしいアイデアの組み合わせが見つかるだけでなく、より多くの組み合わせが見つかるのだ」と述べています。

この言葉は、越境思考の本質を見事に表現しています。異なる分野や領域が交差する点に立つことで、これまでにない発想や解決策が生まれる可能性が高まるのです。 越境思考を実践するには、まず自分の専門外の分野にも積極的に関心を持ち、知識を広げることが重要です。

異業種の人々との交流を増やし、様々な視点や経験を吸収しましょう。そして、ある問題に直面したときに、「他の業界ならこの問題をどう解決するだろうか」と考えてみるのです。これにより、自分の専門分野では思いつかなかった解決策が浮かぶかもしれません。

組織で越境思考を活用するには、多様性を重視した人材採用と育成が効果的です。異なるバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用し、部署を越えた交流を促進することで、組織内に様々な「交差点」を作り出すことができます。また、異分野コラボレーションの機会を設け、外部の異なる専門性を持つ組織や個人とのプロジェクトを積極的に行うことも、新たなアイデアを生み出す土壌となります。

その際、集合天才という考え方を導入することで、よりよい解決策を見つけられるようになります。集合天才とは、多様な専門性や経験を持つ人々が協力し合うことで、個人の能力を超えた画期的なアイデアや解決策を生み出せるという考え方です。異なる背景を持つ人々が協働することで、それぞれの強みや知識が掛け合わさり、予想もしなかったような革新的なアイデアが生まれる可能性が高まるのです。

さらに、失敗を恐れない文化を醸成することも重要です。越境思考から生まれるアイデアは、時として斬新すぎて即座に理解されないこともあります。そのようなアイデアを受け入れ、試行錯誤する余地を与える組織風土が、イノベーションの源泉となるのです。

集合天才の力を最大限に引き出すためには、多様な意見や斬新なアイデアを歓迎し、建設的な議論を促進する環境作りが不可欠です。

インプットを半減しアウトプットを倍増させるハイブリッド仕事術は、個人と組織の生産性を飛躍的に高めます。時間と労力を50%削減しながら成果を2倍に増やせば、相乗効果で生産性は4倍になります。組織全体でこの手法を導入すれば、業務プロセスの最適化、チーム間の連携強化、イノベーションの促進につながり、競争力が大幅に向上します。

ビジネスの現場で直面する課題はますます複雑化していますが、ハイブリッド仕事術を身につけることで、新たな打開策を見出すことができます。よいアウトプットを生み出す能力は、私たちのビジネス人生を大きく変える可能性を秘めています。日々の実践を通じて、これらのスキルを磨いていきましょう。

私も様々なフレームワークやテクノロジーを組み合わせて、生産性を高めてきたので、著者の働き方に共感を覚えました。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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