スタートアップが反逆者を目指すべき理由。グーグルはなぜ成長できたのか?

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ブリッツスケーリング 苦難を乗り越え、圧倒的な成果を出す武器を共有しよう
著者: リード・ホフマン&クリス・イェ 
出版社:日経BP

本書の要約

スタートアップは反逆者になるべきです。事業アイデアがが反逆的であり、かつ正しいならば、スケーリングを達成する上で極めて有利なスタート地点を確保したことになります。アマゾンやグーグルは反逆者になり、稼いだ利益を投資に回すことで、飛躍的な成長を遂げたのです。

スタートアップが反逆者になるべき理由

反逆者であることは、巨大なテクノロジー企業を構築する上で決定的な要素となる。(リード・ホフマン&クリス・イェ)

ブリッツスケーリング 苦難を乗り越え、圧倒的な成果を出す武器を共有しよう書評を続けます。リード・ホフマン&クリス・イェは、スタートアップは反逆者であるべきだといいます。

ディストリビューションやネットワーク効果など成長のカギとなる要素は、決定的なスケーリングを最初に達成した企業に、とてつもなく大きい報酬を与えます。事業アイデアがが反逆的であり、かつ正しいならば、スケーリングを達成する上で極めて有利なスタート地点を確保したことになります。

誰もが正しいと認めるような事業を追求していたとしたら、いくらその会社が魅力的に見えても、ライバルとの差別化で苦労します。逆に常識を無視、軽視している方向を追求しているなら、その会社はビジネスモデルを革新し、研ぎ澄ますチャンスに恵まれると著者は指摘します。

消費者はクレジットカードでオンライン・ショッピングなんてしたがるわけがないと人が思っているときに、アマゾンはオンラン通販をスタートさせました。小さなオンライン書店が投資を繰り返すうちにオンラインの巨大企業になり、多くの小売を淘汰しました(Death By amazon)。検索はもはや成熟したテクノロジーで、改良の余地はほとんどないと思われているときに、グーグルは検索エンジンビジネスを立ち上げたのです。そしてアドワーズを生み出し、広告で得た莫大な利益を次の投資に回すことで、飛躍的な成長を遂げました。

ほとんどのすばらしいアイデアは、最初はバカげた企てに見える。反逆者であるというのは、愚か者が反対しているということではない。賢い人々が反対していることを意味する。

ビジネスモデルのイノベーションを起こすには、当然ながら何か新しいことを試さねばなりません。ベンチャー投資家はその目の前のスタートアップの反逆性を理解し、投資を決めなければならないのです。今日はグーグルをケーススタディにし、初期のグーグルの反逆性を明らかにしていきます。

グーグルの反逆性とは何か?

■市場規模
グーグルがターゲットとする市場の規模は当初、おそろしく過小に見積もられていました。グーグルの前には巨人のヤフーが存在していました。しかし、多くの投資家はグーグルのビジネスモデルのイノベーションを見落としていました。アドワーズ広告(記事との関連性に基づいて表示され、セルフサービスで出稿できる広告システム)は検索の収益性を従来とは比較にならないレベルに向上できのです。

インターネットが成長し、コンテンツ量も指数関数的に増加するにつれて情報検索の難しさも増大しました。こうして検索システムが死活的な重要性を帯びるようになったのです。つまりインターネットの爆発的な成長が全く新しい大規模な市場を生んだのです。その後グーグルは、強力なビジネスモデルの力を利用してグーグルマップ、ユーチューブなどの有望なサービスをいち早く買収することでマーケットをさらに急拡大しました。

■ディストリビューション
グーグルの成功要因としてまずテクノロジーが挙げられることが多いのですが、実はグーグルはさまざまなディストリビューションの手法を利用して成長してきました。グーグルは「単なる検索エンジン」から「決定的な検索エンジン」になる過程で、グーグルは既存のネットワークとパートナーを上手に活用しました。

ファイアフオックスと提携してデフォルトの検索エンジンとなり、スマートフォンのスタートアップ、アンドロイドを買収し、さらに独自のクローム・ブラウザを開発し、ビジネスの陣地を拡大していったのです。優良企業との提携やM&Aグーグルのディストリビューションの優位性をさらに拡大していきました。

■粗利益
グーグルは驚くほど高収益の会社で、なんと2016年には61パーセントという利益率を記録しています。
初期のインターネットを支配していたヤフーやライコスは、マスコミ時代の広告モデルを踏襲していました。これに対してグーグルのアドワーズは、広告主自身がオンラインからセルフサービスで広告を出稿できるようにしました。また広告料金については、オーバーチュアが先鞭をつけたオークション方式を採用し、そこに改良を加え、単なる価格競争ではなく、記事への適合度や広告の質を考慮できるようにしました。

広告料金の支払いについても何回表示されたかではなく、購入に結びつくクリック数をベースとする成果主義を取り入れました。この「購入意思」をベースとするモデルは、表示回数ベースに比べてはるかに高いクリックあたりの利益を確保できたため、グーグルに莫大な粗利益をもたらしました。

グーグルはアドワーズの高い粗利益から得た経済力を利用して、ほかのライバルが二の足を踏むような大胆な企業買収や新事業開拓に乗り出せたのです。アンドロイドとクロームはそれぞれ既存の支配的プレイヤー(つまりアップルのiOSデバイス、マイクロソフトとファイアフォックスのウェブブラウザ)に対する挑戦でした。自動運転テクノロジーのウェイモをはじめ、過激ともいえるリスクの高い実験を含む数々のXプロジェクトも、アドワーズの粗利益なしには不可能でした。多くの新規プロジェクトは失敗する可能性が多々ありますが、たとえ失敗が続いても、グーグルには十分な粗利益があるので、いくつかのプロジェクトが成功するまでチャレンジを続けられます。

■ネットワーク効果
モバイルのカーナビアプリ、ウェイズはネットワーク効果を上手に活用しています。ウェイズはユーザーから取得した位置情報を利用して、正確な交通状況を把握できます。ドライバーはウェイズのアプリ内から事故、取り締まり、故障車などの情報を簡単に報告できます。収集された情報はウェイズの全ユーザーに公開されるのです。ウェイズの利用者が増えるほど道路情報は正確になっていきます。ユーザーが増えるたびに既存の全ユーザーにとってウェイズの価値が向上するという典型的なネットワーク効果が得られるのです。

モバイルOSのアンドロイドは間接的なネットワーク効果を生み出します。ユーザーが増えると、デベロッパーがアンドロイド上でアプリを開発するインセンティブが増えます。アプリが増えればアンドロイドプラットフォームの価値が向上し、さらに多くの人々がアンドロイドデバイスを利用するようになるのです。

ユーチューブは、二面的ネットワーク効果の典型です。ユーチューブにはビデオを見るユーザーと動画をつくるクリエイターが存在します。コンテンツが多いほどそれを見にくる人も増えます。視聴ユーザーが増えれば、クリエイターのインセンティブも高まります。

グーグル・ドライブのワープロ、表計算などのアプリは、ネットワーク効果と同時に標準化と互換性の力を示します。ユーザーがグーグル・ドキュメントやグーグル・スプレッドシートといったアプリでコンテンツを作成すると、読んだり、共同作業したりするユーザーは全員がグーグル・ドキュメントから移行しにくくなります。

■プロダクト・マーケットフィット
コア事業の検索とアドワーズ広告の分野で、グーグルはこの上なく効果的なプロダクト・マーケットフィットを達成できました。グーグルはまず、企業のデータセンターに設置する企業向け検索デバイスを販売しようとしました。この製品は企業のサーバーをスキャンしてインデックスを作成し、高速で検索できるというものでした。次にグーグルはダブルクリック社が配信する広告を表示して広告料を得るビジネスモデルを試しましたが、これらはいずれも成功しませんでした。グーグルが後にダブルクリック社を買収したのち、グーグルはオーバーチュア社の広告モデルを採用し、いくつかの改良を加えてすばらしいプロダクト・マーケットフィットにたどり着いたのです。

グーグルの検索能力は圧倒的に優れていたので、検索に連動するアドワーズ広告はライバルよりはるかに高い収益を得られました。グーグルはスモールビジネスでも手軽に広告を出稿できるオンライン・セルフサービスのしくみを開発し、広告料金を決定するオークションのしくみにも改良を加えました。ライバルが追いつこうと努力する間にも、莫大な利益を開発に投資し、検索の精度改善を続けました。

もしアドワーズ広告のシステムを確立する前にグーグルの資金が尽きていたら、検索ビジネスはプロダクト・マーケットフィットを発見する前に死に絶えていたかもしれなかったのです。グーグルのプロダクト・マーケットフィットは多くの失敗にもめげないボトムアップによる革新の強固な哲学を反映しています。

グーグルは多くの失敗のリスクをカバーできる高い粗利益率に基づく財務力と、赤字プロダクトを廃止する断固たる経営判断の両方があるのが強みになっています。たとえばグーグルがユーチューブを買収したときには、ユーチューブに高いプロダクト・マーケットフィットがあることを見てとると、巨額の資金を投じて社内で開発したビデオ・サービスを惜しげもなく廃止しています。プロダクト・マーケットフィットをライバルに先駆けていち早く発見し、それを成長のための投資に使えるかどうかです。

■オペレーションの拡張性
グーグルはオペレーションの拡張に極めて優れています。たとえばグーグルはデータセンターなど自社のインフラ、開発ツールの整備に巨額の費用を投じてきました。グーグルは急成長を続けながら、常に最先端で最も効率の良いインフラをもち、高い効率を維持できたのです。

グーグルはまた、人的資源のスケールアップでも成功しました。グーグルは、新事業にいきなり大量の人員を投入せず、比較的小規模なチームでスタートさせます。その後、プロダクトが成功すればチームを拡大して運営と維持、改良に当たらせます。

グーグルは反逆的なビジネスモデルで得た利益を成長のための投資に使い、次々に新たなビジネスを確立していきました。フェイスブックやアマゾンも自社の莫大な利益を投資に回すことで、飛躍的に成長していったのです。

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