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奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ
著者:リカルド・セムラー
出版社:総合法令
本書の要約
ブラジルのセムコ社は「1週間毎日が週末発想」経営によって成長しました。社員のコントロールを一切やめ、幸せな企業を目指すことで、急激に業績を伸ばすだけでなく、社員の離職率がほぼゼロになっています。主体的に自由に働く社員が質の高い仕事をすることで、結果を出せるようになったのです。
セムコの1週間毎日が週末発想経営とは何か?
1週間毎日が週末発想。Seven-Day Weekend. (リカルド・セムラー)
ブラジルの超優良企業のセムコ社をご存知でしょうか?この会社のCEOのリカルド・セムラーは、社員のコントロールを一切やめ、幸せな企業を目指すことで、急激に業績を伸ばします。辞職率も実質ゼロになるなど、社員を幸福にする奇跡の経営で、ブラジル社会に大きな影響を及ぼしています。
テクノロジーが普及することで、私たちは土日の大切な時間を仕事に侵食されるようになりました。プライベートを犠牲にしていては、よいアイデアが生まれるわけがりません。そこでセムラーは貴重な遊びの時間やプライベートの時間を平日の仕事の前後に持ち込むようにしたのです。仕事を心から楽しみ、幸せと自由なものに変えることで、自分の働き方だけでなく、人生をよりよいものにできます。
「1週間毎日が週末発想」で経営を行うためには、仕事や社員をコントロールすることをやめなくてはいけません。この経営哲学はコロナ禍でテレワークを余儀なくされた日本の会社の経営者には、とても参考になると思います。
社員は、自分の興味と直観に基づいて、仕事やプロジェクトを選択します。われわれは、社員に会社の目標を達成することを試みる前に、自分のやりがいと満足感をもとめるよう言ってあります。それから、社員に対して、新しいアイデアや新しいビジネスチャンスを見つけるために、ときには一日もしくは一週間外出することを奨励しています。デモクラシー、オープンコミュニケーション、そして職場での活発な質問と意見の主張を奨励することが、わが社の哲学です。
驚くべきことに、セムコは通常の会社の当たり前を排除してしまったのです。
・ 組織階層がなく、公式の組織図が存在しない。
・ ビジネスプランもなければ企業戦略、短期計画、長期計画といったものもない。
・ 会社のゴールやミッションステートメント(企業理念)、長期予算がない。
・ 決まったCEOが不在ということもよくある。
・ 副社長やCIO,COOがいない。
・ 標準作業を定めていなければ業務フローもない。
・ 人事部がない。
・ キャリアプラン、職務記述書、雇用契約がない。
・ レポートや経費の承認をする人は誰もいない。
・ 作業員を監視・監督していない。
セムラーはコントロールをやめることを原則とし、それを実行することで、同社を強くしていったのです。職場を楽しくすることで、社員がそこで働きたいと思うようになり、結果を出すようになります。当然、自由でやりがいのある職場を去りたくありませんから、離職率も下がります。
同社には優秀な社員が集まるようになり、競争力が高まりました。高度な技術を要する分野に新規参入し、質の高い企業になることで、参入障壁を作り出し、オンリーワンの存在になれたのです。クライアントに不可欠な存在になることで、アメリカの大企業を顧客にしていったのです。価格が高い同社の製品で新規顧客を作ることは難しいことですが、一旦顧客になるとクライアントは同社のファンになり、離脱しません。そのクライアントに同社の他部門の商品も売ることで、シナジー効果をあげ、売り上げを伸ばしているのです。
直感・幸運・失敗・セレンディピティーが会社を強くする!
「1週間毎日が週末発想」を理解するにあたって重要なことは、時間の使い方の見直しです。わたし達は、仕事、余暇、のんびりした時間について、それぞれ確保できるのです。それら3つをバランスよく共存させることによって、幸せを感じ、目的意識を持つことができるようになるのです。
日曜日に行う家族との大切な時間や日課を平日もそのまま続ければ、人生の質をより高められます。同社は社員を信頼し、1980年代半ばにいち早くフレックス制と仮設オフィス制を採用します。勤務時間や働く場所を会社に指示されるのではなく、自分で決めるようにしたのです。今回のコロナ禍でようやく始まったテレワークを同社は今から30年以上前にスタートしていたのです。
働き方のルールを変えることで、セムコ社は社員の力を引き出すことに成功しました。自宅から近い場所で働いたり、必要なときだけオフィスに来たり、不規則な勤務体系によって、社員の人生は豊かになったのです。日曜に働く代わりに平日に休みをとるといったことを自由に決めることで、やりたいことができるようになり、会社と従業員の間に信頼関係を築きました。
今の状態が、心からウキウキすることがなく、生活のバランスに欠けているのであれば、これまでの馬車馬のように働く5日間と無気力な休息のための2日間で構成された生活パターンを、充実した「1週間毎日が週末発想」のパターンに移行するのです。
社員が自由に活動することで、社員の能力を最大限に引き出せるようになります。仕事とプライベートを充実させることで、自分の眠っている才能が見つかり、人間の幅が広がります。また、「1週間毎日が週末発想」をベースにした行動(働く前にスポーツ、空いている平日の昼間に映画鑑賞)をとることで、ストレスも軽減できます。
「ちょっとだけリタイヤ・プログラム」という制度を利用すれば、若い体力のあるうちに、様々なことにチャレンジできます。引退後に楽しむはずだった釣りやガーデニングを先取りし、人生をエンジョイできるようになったのです。給与が少し下がっても自由を手に入れたい社員はこの制度を利用し、自分の人生を充実させています。社員は先取りした時間を引退後に買い戻すことができます。
組織はリスクを受入れ、変革を行うべきですが、そのためにはコントロールをやめ、民主的な組織運営を行うことです。
○スタッフに上司を選ぶ権利を与え、自由に考え、行動できるような環境を与えること。
○創造性と能力を伸ばし自信を持てるように、部門間の異動を促進すること。
この2つを実践し、社内の人材の交流を活性化し、人の動きを流動化することで、部門の壁を打ち破れます。このことにより、既得権への固執がなくなり、職の保証に安心し、外部環境の変化への対応力がつき、リスクをとることへの抵抗がなくなるのです。
セムコ社ではこの「リスク」と「変革」を社員に求めることで、会社を成長させることに成功します。変革によって将来性のない事業が切り捨てられたり、新規事業が既存事業に取って変わられることもありますが、この姿勢を貫くことで、社員はリスクを怖がらなくなり、会社を強くしているのです。
セムラーは「直感」「幸運」「失敗」「セレンディピティー」の4つのコンセプトを大事にしています。コントロールという壁を打ち破り、この4つにフォーカスすることで、エクセレントカンパニーになれるのです。自由に働く環境によって、社員は積極的に動くようになります。その結果、この4つのコンセプトが機能し、社員の知恵が高まり、会社は成長していくとセルラーは指摘します。
社員を信頼することから、「1週間毎日が週末発想」経営は始まります。コロナ禍で在宅勤務が当たり前になる中、経営者やリーダーは社員の力を引き出す必要があります。セムコ社の成功事例を実践することで、社員との関係を変えることができ、この不確実な時代を乗り越えられるようになります。少し古い本ですが、本書には様々なヒントが書かれています。ぜひご一読ください。
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