Z世代マーケティング 世界を激変させるニューノーマル (ジェイソン・ドーシー, デニス・ヴィラ ) の書評

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Z世代マーケティング 世界を激変させるニューノーマル
ジェイソン・ドーシー,デニス・ヴィラ
ハーパーコリンズ・ジャパン

本書の要約

Z世代の層は厚く、多様性に富んだデジタルネーティブが、もう間もなく労働力の大きな部分を占めはじめます。消費の面ではすでに、トレンドセッターとして最重要の世代となっており、あらゆるビジネスに影響力を持とうとしています。本書の調査やケーススタディを活用することで、今後も企業はZ世代とともに成長できるのです。

Z世代とは何か?

Z世代とともに迎える未来は刺激に満ちているということだ。(ジェイソン・ドーシー,デニス・ヴィラ)

Z世代が今後、世の中を牽引することは間違いありません。Z世代がもたらす新たな世界観や価値観が、今後20年の消費やビジネスを根こそぎ変えると言われています。

生まれたときからiPhoneなどのデジタルデバイスに触れ、SNSを使いこなす世代へのマーケティングにおいては今までの常識は通用しなくなります。Z世代はYouTubeやインスタグラムから学びを得たり、やりたいことを発見しています。

彼らのこのライフスタイルや特性を理解しなければ、時代に取り残されてしまいます。上の世代は自分や他人の個性を大切にするところや、SNSを武器にするZ世代に距離を感じていますが、この距離を埋めなければ、ビジネスのチャンスが遠のいてしまいます。

実材、従業員を雇って活躍させる方法から、新たなマーケティング戦略などZ世代の常識は、私たちのものとは異なりますが、未来を予測すれば、Z世代の思考や行動が主流になっていくことは否定できません。

統計によるとこのZ世代は、世界人口のおよそ1/3を占めています。少子高齢化が進んだ日本におけるZ世代の人口は総人口の13.9%に過ぎませんが、消費者、トレンドセッター、労働力という観点から考えれば、今後の主役になることは間違いありません。

■Z世代の主な特徴
元々はアメリカの世代分類「GenerationZ(ジェネレーション・ゼット)」という言葉から派生し、「Z世代」という言葉が日本でも定着しました。
・1996~2012年生まれ
・幼いころからスマホ、Google、SNSを使う
・9・11を知らない/覚えていない
・コロナ禍で学業や就職に影響を受けている
・リーマンショック後の大不況を経験した親をもつ
・上の世代から受け継ぐ資産は20~30兆ドル規模

私は大学の客員教授・非常勤講師をしていますが、このZ世代とコミュニケーションすることで、著者たちが紹介する彼らの生活実態を日々体験しています。当然、年齢が離れているので、この世代とのギャップを感じることはありますが、彼らにはたくさんの良いところがあるのも事実です。

リアルでのコミュニケーションよりデジタルを重視しがちで、何を考えているかがわからない時もありますが、対話を重ねるうちに、彼らの素晴らしさに気づけました。特に、感性や発想力、創造性は私たちの世代にないものがあり、彼らから刺激を受けています。彼らをきっちりと交流し、理解することで、彼らの才能を引き出せるようになります。

著者たちは、次世代の最重要顧客「Z世代」の心をつかめる者だけが、これからのビジネスを制することになると指摘します。Z世代を深く知るほど、その才能を引き出す方法が見えてきます。さらには彼らの先見性を手本にして誰もが潜在力をフルに発揮することにもつながります。

私がアドバイザーや社外取締役をしている企業では、Z世代の学生起業家の力を借りながら、マーケティングや採用戦略のサポートを受けています。上の世代の知見や体験をZ世代と掛け合わせることで、課題解決のスピードがアップします。

また、彼らと議論を重ねるうちに、今まで気づいていなかった新たな課題を定義できるようになります。この新たな課題発見が、次のビジネスを軌道に乗せるエンジンになるのです。

Z世代が今後の数十年から次の世紀、さらにその先の未来にまで決定的な影響をおよぼすのはまちがいない。彼らの潜在力、希望、夢、不安、アイデア、レジリエンスがどうなるかは、今のリーダーがZ世代のスキルとマインドをどう開発するかにかかっている。

Z世代も上の世代を頼りにしていことは間違いありません。授業の中で私たちの知見や体験を伝えることで、関係を強化できることに気づきました。上の世代がZ世代の未来を必要としているように、Z世代のほうも上の世代から得られるものがあると気づいてもらうことが、リーダーの仕事になりつつあります。

Z世代の力を引き出す方法

私たちの世代からZ世代への片想いではなく、Z世代のほうも私たちの世代を求めてもらうには、まず私たちの世代が今すぐZ世代に歩み寄ることだ。

従来の一般的なマーケティングや人材採用、マネジメントの手法は、Z世代相手には通用しません。しかし、Z世代のやり方を理解し、積極的にコミュニケーションを行えば、彼らを味方にできます。彼らと互いに手を取り合えば、世界を変える新しいアイデアとポテンシャルを引き出し、Z時代の新しい経済を構築することができます。

Z世代は変化を止めることがありません。時間が経てば経つほど、消費者として購買力を伸ばし、労働者として勢力を増していきます。Z世代との関係構築の行動を早く開始すれば、成果も早く表れます。逆に、Z世代への適応を先延ばしにするほど、関係作りは難しくなります。著者たちはZ世代に歩み寄るなら、今しかないと断言します。

●Z世代の消費者や労働者とつながりを強化する。
①Z世代の目に世界がどう映っているか考える

Z世代の望みは、世の中にプラスの影響を与えようと努力している企業やリーダーを後押しすることだと覚えておこう。自社のDNAに気高い主義主張が組み込まれていなくても大丈夫だ。Z世代が知りたいのは企業が有意義な活動をしていることであって、その舞台は地域コミュニティ、職場、リーダーの日常でも構わない。世の中とZ世代の役に立とうとする姿勢が大切だ。

②自社の従業員または顧客であるZ世代から体験を聞く

③Z世代がいるところにリーチする
伝統的なマスメディアを使っても彼らとの会話は成立しません。YouTubeやTikTok、インスタグラムなどのZ世代が好むデジタル・プラットフォームでニッチなインフルエンサーを探し、コラボレーションして自社の製品・サービス、ブランドのクチコミを広める方法を考えるべきです。彼らの力を借り、Z世代の顧客とのクリエイティブな関係作りを強化できます。

●Z世代の消費者と擁護者(アドボケイト)を獲得するなら
①有意義な価値とエンゲージメントを優先する

②ブランドやチームの人間性でZ世代とつながる

③Z世代の学習意欲と動画志向を利用する
化粧品ブランドなら、自社製品を使ったスキンケア講座をYouTubeに投稿します。スポーツ用品メーカーなら、YouTubeチャンネルを開設し、水泳のコツを学べる定番チャンネルの座を目指すべきです。

●Z世代の従業員の才能を引き出すなら
①社員紹介制度を活用する

②つながりを構築および維持しやすくする

モバイル端末からの応募に最適化し、途中まで記入した応募フォームを保存できるようにするとよい。保存したまま一定期間が過ぎたらリマインダーを送る。応募フォームへのリンクを貼るとともに、応募者のことを詳しく知りたいと興味を示すようにしよう。それが相手に伝われば、応募者のほうも企業への興味が湧いてくるはずだ。人手不足の中では重要なポイントであり、求職者を呼び込む効果は実証されている。

③勤務初日から能力開発プログラムを提供する
学生アルバイトであれフルタイムの正社員であれ、Z世代の応募と定着を促進するには、従業員の能力開発を重視する姿勢を見せることが効果的です。従業員の能力開発にコミットする企業であることを求人情報ページや採用プロセス、オンボーディング期間を通じてはっきりと示せば、従業員も企業へのコミットメントを高めてくれます。

④継続的でオンデマンドな研修を行う
ルーティン業務の研修でも高度な業務の研修でも、期間は短く、内容は興味深く、形式はインタラクティブにするのが理想的です。トレーニング動画やQ&A動画といった、必要に応じて学べるオンデマンドの研修リソースを提供し、能力を補強すると効果があります。

Z世代は一般的なイメージよりも年齢層が高く、今年26歳になる年代までが含まれます。Z世代の層は厚く、多様性に富んだデジタルネーティブが、もう間もなく労働力の大きな部分を占めはじめます。消費の面ではすでに、トレンドセッターとして最重要の世代となっており、あらゆるビジネスに影響力を持とうとしています。本書の調査やケーススタディを活用することで、今後も企業はZ世代とともに成長できるのです。


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