百冊で耕す〈自由に、なる〉ための読書術
近藤康太郎
CCCメディアハウス
本書の要約
著者は「本は百冊あればいい」と言い、自分にとっての重要な本を選び出すことが大切だと述べています。自分にとって価値のある本を選び、本棚の中身を入れ替え制にすることで、人生をより豊かにできます。読書を習慣化し、本とともに人生を歩むことで、幸せな時間を過ごせるようになります。
読書とは人それぞれの体験談である。
読書なんて人それぞれ。勝手に楽しめばいい。その通りだ。だから本書は「わたしはこうやって読んできた、こうして読書に救われた」という、単なる体験談に過ぎない。(近藤康太郎)
「朝日新聞」の編集委員・評論家の近藤康太郎氏が提唱する読書術が話題となっています。著者は、「読書とは、人を愛するレッスン」と述べ、本を読むだけでなく、本を生かす方法を伝え、「百冊読書家」になるための11のテーマを解説しています。
彼は、「本は百冊あればいい」と述べ、自分にとってのカノン(正典)百冊を徹底的にカルティベートすることを提唱しています。ただし、そのためには、一万冊ほどの本から自分にとって価値のある本を選び出す必要があると説いています。本とともに人生を歩みながら、本棚の中身を入れ替え制にして、最終的には百冊に絞っていくのです。
本書では、自分自身で百冊を選ぶための方法論を提供し、各章は、読書法の二律背反を取り上げ、「速読/遅読」など、アナログレコードのシングル盤のように「A面」「B面」の構成をとっています。
速読する本と、じっくり精読するべき本を分ける。これが、私の考えだ。
精読する本を選び出すために、まずは猛スピードでスキニングしていくことが大切です。著者は、このスキニングの段階を「速読」と位置付け、精読に繋げるための重要なステップであると考えています。スキニングによって、本の概要や内容をつかみ、精読するべき本を選び出すのです。
著者は、速読や積ん読、音読、黙読、ノートを取りながらの読書、風呂に入りながらの読書など、あらゆる読書法が、自分で百冊を選ぶための技術であると述べています。そして、最終的には自分の頭の中に百冊の精髄が入っていることが理想だと言います。
お気に入りの書店を見つけ、そこを、一週間に一回などと決めて、定点観測していた。特設コーナーはもちろんのこと、すべての書棚を、さっと見つめる。本の配置が変わったらすぐ気づく。それくらいに通い詰める。
OAZO丸善は、ビジネス書や旅行関連書籍が充実しているので、私にとってのビジネス書や旅行ガイドの情報収集の場となっています。また、美術関連の書籍も豊富なため、アートに興味がある人にもおすすめの書店です。
書店ごとに品揃えや雰囲気が異なるため、複数の書店を定点観測の場所にすることがおすすめです。そのため、様々な書店で新たな書籍との出会いをデザインすることができます。
また、本を手に取り、めくることでその本の雰囲気や内容を感じることができます。この方法で、自分が求める本を見つけることができるだけでなく、意外な書籍との出会いも生まれます。これはアマゾンでは得られない体験になります。
新聞の書評欄は、時間とお金と手間をかけて作られていると著者は語ります。それだけに、信頼できる情報源として利用することができます。書評欄には様々な分野の書籍が取り上げられ、著者の専門性や鋭い目利きによって評価されています。
これらの書評を武器にすることで、自分自身が読みたい本を見つけたり、新しい発見が生まれます。 書評欄を活用することで、自分自身が求める情報や知識を得ることができるだけでなく、各分野の専門書、小説、歴史書、詩集など、自分が興味を持つ分野以外の書籍も見つけることができます。
また、書評欄には注目の新刊や話題の書籍が掲載されることが多く、新しい本との出会いの機会としても活用できます。私は日経の書評欄を参考にしていますが、小説などは他の新聞や雑誌の書評欄も参考にしています。自分に合った新聞や雑誌の書評欄を選び、書籍選びの幅を広げることが大切です。
当然、本には当たりもあれば、外れもあります。それを避けるために、私は多くの本を同時並行読みしています。
同時並行読みが人生を豊かにする理由
同時並行読みをすすめる理由は、速読のためというのもあるが、多ジャンルの本をまんべんなく読むため、という意味が強い。のちに書くが、①海外文学②日本文学③社会科学か自然科学、それに④詩集の4ジャンルくらいは、偏ることなく読んでいきたい、とわたしは考えている。
同時並行読みとは、同時に複数の本を読むことです。私も日々、この同時並行読みを実践しながら、自分のための1冊を探しています。著者は詩集も平行読みに取り入れていますが、私も声にトライしようと思います。また、同時並行読みによって以下のメリットが得られると私は考えています。
①フォーカス力が養われる
一つの本に集中すると、読むことが苦痛に感じることもありますが、複数の本を読むことで、読書がより楽しくなるというメリットもあります。
②複数の視点を得られる
同時並行読みをすることで、複数の視点を得ることができます。複数の本を読むことで、異なる視点から同じテーマを考えることで、情報と情報がつながり、より深い理解や新しい気づきを得ることができます。
③学びが増える
複数の本を読むことで、より多くの情報を得ることができます。また、同じような内容でも、複数の本を読むことで、異なるアプローチや説明方法を知ることができます。これによって、より深い理解や学びを得ることができます。
④ストレス軽減になる
読む本を選ぶ自由度が高くなり、自分が読みたい本をいつでも読むことができます。また、読む本を切り替えることもできるため、興味がなくなった本を手放すことができます。これによって、読書に対するストレスが軽減され、本当に読みたい本を楽しめるようになります。
⑤多角的な思考ができる
複数のテーマの書籍を読むことで、自分の思考を多角的にすることができます。また、異なるテーマを同時に考えることで、新しいアイデアや発想が生まれることがあります。そのため、同時並行読みをすることは、創造性を高めるためにも有効です。
⑥難解な古典を読むことで、自分を鍛えられる。
古典は、人々に愛され、尊敬される文学作品であり、時代や文化の枠を超え、人間の本質について考えさせ、知恵や教訓を与えてくれます。しかし、その中には理解が難しく、読み解くのに多くの労力が必要な作品もあります。難解な古典を読むことは、知的な挑戦を与え、精神力を鍛える機会を与えてくれます。
古典には、高度な言語や概念、文化的背景など、多くの知識が含まれており、それらを理解するためには深い洞察力や論理的思考力が必要となります。これにより、古典を読むことは、知性を刺激し、自己成長を促進し、意志力を強化することができます。
著者は「個々の読書体験が、ふとしたことでつながる。〈分かる〉とは、そういうことだ」と述べ、多読の効用は、本がつながる瞬間にあると述べています。つまり、多くの本を読むことで、その中に共通点や繋がりが見つかり、新たな気づきや発見が生まれるということです。「ユーレカ!(わかること)」、これこそが多読の真の価値なのです。
読書とは人を愛するレッスン
本を読む。その、もっともすぐれた徳は、孤独でいることに耐性ができることだ。読書は、一人でするものだから。ひとりでいられる能力。人を求めない強さ。世界でもっとも難しい〈強さ〉を手に入れる。読書とは、人を愛するレッスンだ。
「本を読むこと」は、私たちに多くの利益をもたらします。その中でも、もっともすぐれた徳は、「孤独でいることに耐性ができること」だと著者は指摘します。
読書は、一人で行うことが多いため、自己中心的な考え方や思いやりのない態度を持つ人間にならないようにするためのトレーニングとも言えます。また、読書を通じて、自分自身と向き合う時間を持つことができ、自分自身を知り、自分を愛することができるようになります。つまり、読書によって、自己肯定感を高め、自信を持って生きられるようになるのです。
読書によって、自分自身の考え方や信念を確立し、他人の意見に惑わされずに自分の意見を持ち続けることができるようになります。
そして、最も重要なことは、「読書とは、人を愛するレッスンだ」ということです。読書を通じて、様々な人々の生き方や考え方を知ることができます。自分とは違う立場や視点を理解し、他者を認めることができるようになります。著者との対話を通じて、相手を理解し、共感する力を育め、幸せになれるのです。
世の中の常識とされていること、あたりまえと受け入れられている前提を、疑ってかかる。文学の役割とは、極言すれば、そこだ。つまり、考える人間は学校教育にとって邪魔なのだ。国家や資本が必要としているのは考えない労働者、考えない消費者である。
本を読む価値とは何か、という問いに対して、私たちは自己の思考力を磨くことが答えとしてあげられます。しかし、現代社会においては、資本主義の構造によって考えない労働者や消費者が求められ、学校教育においても考えることは邪魔者扱いされています。こうした状況下で、本を読むことがなぜ重要か、考えてみる必要があります。 文学は、世の中の常識や前提を疑い、考えることが役割とされています。
しかし、現代社会ではそのような思考力を求められず、国語教育から古典文学が減らされるなど、教育の場でもその役割が軽視されがちです。それでも、古典を通して自分自身の思考力を磨くことができるため、現代社会においてますます重要な価値を持つものとなっています。
また、本を読むことで、自分自身の考えや価値観を深め、他者との議論を通じてよりよい社会を作り上げることができる可能性もあります。
同時並行読みをすることで、フォーカス力が養われ、複数の視点を得ることができ、学びが増え、ストレス軽減になり、多角的な思考ができるようになります。先に理想の本棚を作ってしまう。百冊なら百冊。総数制限を自分で決める。そこに、読みたいと思っている本を並べていく。リストに沿った本を、先に買いそろえてしまうのだって、ありだろう。十年、二十年後の、未来の自分への投資。積ん読、ここにきわまれり。 本棚が、あまりに立派な積ん読本ばかりになる。すると、こんどは自分がその本棚に引っ張られる。
将来の自分に向けた投資として、理想の本棚を作り、積読に励むことは有益です。その結果、自分が理想とする本棚ができるため、自然とその本たちに引き寄せられます。積読によって自己成長を促すことができます。
本書は、多様な本を読み、明日の糧とすることで、良い人生を送りたいと願う人におすすめです。著者が引用した文章を読んでいるうちに、改めて古典に触れたいと思いました。
巻末の著者が選んだ「百冊選書」から、チャレンジすべき本や再読したい本を見つけました。また、久しぶりにサマセット・モームの作品に触れたくなり、早速短編集の「幸福」を読み始めました。
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