とっぱらう――自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」(ジェイク・ナップ, ジョン・ゼラツキー)の書評

person holding hourglass

とっぱらう――自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」
ジェイク・ナップ, ジョン・ゼラツキー
ダイヤモンド社

とっぱらう――自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」(ジェイク・ナップ, ジョン・ゼラツキー)の要約

『とっぱらう』は、AIやスマホの進化により多忙化した現代人に向け、時間の主導権を取り戻す具体的な手法を提案する書籍です。「ハイライト」「レーザー」「チャージ」「チューニング」の4ステップで、注意散漫と過剰な生産性志向から脱却し、自分にとって本当に大切なことに集中できるよう導きます。87の実践戦術が紹介されており、少しの習慣の変化が生活全体の質を高めることを示しています。

メイクタイムで自分の時間を取り戻そう!

メイクタイムを実践するうちに、1日ごとに自分の人生を思い通りに生きられるようになっていく。(ジェイク・ナップ, ジョン・ゼラツキー)

朝、目覚めた瞬間にスマートフォンを手に取る。通知を確認し、メールに目を通し、SNSやニュースを次々と追いかけていく──。私たちは、目を開いたその瞬間から、容赦ない「情報の洪水」にさらされているのです。 今は、まさに情報が爆発的に増え続ける時代。

AI、アプリ、クラウド……かつては夢だったツールが、今や当たり前のように手のひらに収まっています。けれど、その便利さと引き換えに、私たちの「注意力」や「思考の深さ」は、少しずつ削られていってはいないでしょうか。

午前中は次々と届く通知に反応するうちに過ぎ去り、午後は会議とタスクに忙殺される。そして夜、ようやく一息ついたときに浮かぶ問い──「今日は、何を成し遂げたのだろう?」 「やるべきこと」に一日を支配され、「本当にやりたいこと」は、いつも後回し。

その違和感に気づきながらも、なかなか立ち止まれずにいる。 気がつけば、私たちはテクノロジーに使われているのか、それとも使いこなしているのか、わからなくなっているのかもしれません。

そんな悩みを抱える多くの人にこそ、ジェイク・ナップジョン・ゼラツキーによるとっぱらう――自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」を手に取っていただきたいと思います。本書は、2019年に出版された時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」の新装版にあたります。(ジェイク・ナップジョン・ゼラツキーの関連記事

私は今回、数年ぶりに本書を再読しましたが、その中には初読時とは異なる視点から、多くの新たな気づきを得られました。自分自身の変化や経験を通して、今だからこそ刺さる内容が数多くあったのです。

2人の著者が提示するのは、ただの時間管理術ではありません。現代人が直面する「多忙中毒」と「無限の泉」という2つの罠から抜け出すための、意識と行動の再構築です。

多忙中毒とは、予定が詰まり、生産性を追求することが社会的正義とされる風潮を指します。一方、無限の泉は、終わりなきSNSや動画、ニュースといった情報コンテンツによって、私たちの注意が常に奪われる構造を意味します。

これらは、私たちが無意識に従ってしまっている「デフォルトの生活設計」そのものなのです。 この現状に対抗するために、本書は「ハイライト」「レーザー」「チャージ」「チューニング」という4つのステップで構成されたシンプルながらも強力なメイクタイムのフレームワークを提案しています。

ハイライトを決めると、毎日に焦点ができる。ある研究によると、人が1日をどう感じるかは、自分の身に起こる「できごと」によって決まるのではない。人は「何に注意を向けるか」によって、自分の現実をつくりあげているのだ。

「ハイライト」では、その日最も大切にしたい活動を一つだけ選びます。これは、直感に基づいて選ぶことが推奨され、緊急性・満足感・喜びといった基準で判断します。60〜90分という時間の単位で設定することで、集中と達成感が得られやすくなるのです。

「レーザー」では、気を散らす要因を物理的・デジタル的にあえて排除し、意識の集中状態を作り出します。通知を切る、作業環境を整える、スマホを遠ざけるといった、即実行可能な戦術が多数紹介されています。

「チャージ」は、集中力を支えるための身体的・精神的エネルギーの補充です。睡眠、運動、食事、瞑想、感謝、人とのつながりなど、多面的にエネルギーを高める手段が示されています。

「チューニング」では、毎日の終わりに短い振り返りを行い、何が有効だったか、どこを改善すべきかを記録します。この継続的な微調整によって、自分にとって本当に有効な習慣だけが残っていくのです。

メイクタイムをまずは実践してみよう!

メイクタイムを実践することで、大事なことをやる余裕が生まれる。いったんやり始めると、どんどんやりたくなる。

実際にメイクタイムを実践することで、「本当に大切なこと」に取り組む余裕が生まれます。いったんやり始めると、どんどん取り組みたくなる感覚が湧き上がってくるでしょう。

毎日「ハイライト」を選ぶことによって、自分の優先事項が明確になり、「レーザーモード」で集中力を高めていくうちに、新たな関心や能力が芽生えるかもしれません。そして、その道がどこに通じているのか、自信を持って確かめられるようになるでしょう。

本書には、「エネルギーをくれる人と話す」「仮眠をとる」「ヘッドホンをしない」など、87の具体的な戦術が紹介されています。しかし、これらをすべてを一度に実践する必要はありません。自分にフィットするものからスタートすればよいのです。

著者たちは、まず次の4つの戦術から始めることをすすめています。
・ハイライト ハイライトを予定に入れる(戦術08)  
1日の構成を計画的に考え、反応的な行動を断ち切るシンプルな方法です。

・レーザー 「散漫クリプトナイト」を遮断する(戦術24)  
無限の泉から距離を置くことで、自分自身の変化を観察してみましょう。

・チャージ 歩き回る(戦術62)  
毎日数分歩くだけでも、心身のエネルギーが回復します。

・チューニング 夜の振り返りを3日間続ける  
これを一生続ける必要はありませんが、まずは3日間試してみることで気づきが得られます。

メイクタイムには「小さな変化が大きな成果を生む」という隠れた大前提があります。少しだけ環境を整え、集中のためのエネルギーを整え、注目すべき対象を明確にする——それだけで、うんざりした一日が素晴らしいものへと変わるのです。

そして、時間を生み出すために払った努力は、「うれしかった」「ありがたかった」という感謝の気持ちによって報われることになります。この感謝の積み重ねが、明日もまた戦術を実践しようというモチベーションにつながっていくのです。

私自身もまた、情報の波に飲み込まれないように、日々「意図」を持って過ごすことを心がけています。たとえば、最重要事項に集中する。テレビは見ない。感謝日記をつける。そんな小さな習慣を積み重ねることで、日々の選択が明確になり、「何に時間を使うか」という問いに対して、軸を持って答えられるようになってきました。

車移動が多い生活の中で、私は「歩く」という時間を意識的に取り入れるようにしています。朝に散歩の時間を設けたり、週末には自然の中で風を感じながら歩き回るようにしています。

そうした静かなひとときは、まさに「自分との対話の時間」です。思考が整理され、新しいアイデアがふと浮かぶのは、そうした余白の中にこそあるのです。 気づけば、こうした日々の選択が、自分自身の内面とつながる道となっていました。何気ない一日が、「意図を持って選んだ一日」へと変わっていく──その実感こそが、充実感の源なのだと思います。

本書が提示する数々の実践は、決して大きな努力を求めるものではありません。けれど、その一つひとつが、未来の自分を確かに変えていきます。 目の前のタスクに追われるのではなく、自分の価値観に沿って時間を設計する。そんな暮らし方を選ぶ勇気を、今日から少しずつ取り戻してみてはいかがでしょうか。

最強Appleフレームワーク


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

Ewilジャパン取締役COO
Quants株式会社社外取締役
株式会社INFRECT取締役
Mamasan&Company 株式会社社外取締役
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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