専門家と「なんでも屋」のどちらをあなたは選ぶ?

マルコム・グラッドウェルが1万時間ルールにからめて挙げた事例は、ホッケーやチェスのように、どれも厳格でほぼ不変のルールに基づいてゲームが行なわれている。だから、練習をたくさんすれば、ゲームのノウハウを知るのが上手になる。しかし、安定したルールがない分野ではルールがころころ変わる。そんな状況で何千時間も練習したところで、あまり意味がない。変化が絶えない分野で専門家になるのは難しい。(スコット・ソネンシェイン)

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1万時間の法則には限界がある?

スコット・ソネンシェインストレッチ 少ないリソースで思わぬ成果を出す方法の中で、マルコム・グラッドウェルの1万時間のルールを検証しています。 この有名な話には効果が出る分野があり、すべてのカテゴリーで結果を出せるわけではないというのです。特に安定したルールがない分野では、練習以外の要素が必要になります。

プリンストン大学のブルック・マクナマラと、ミシガン州立大学のデビッド・ハンブリック、ライス大学のフレッド・オズワルドの3人は、練習時間とパフォーマンスの関係を評価した実証研究をことごとくチェックしました。1万1135人の被験者が関わる88の研究を特定した結果、チェスやスクラブルなど、ルールがめったに変わらないゲームの場合は、たしかに練習によってパフォーマンスが上がることがわかりました。しかし、練習の重要性は思ったほど高くありませんでした。

練習がパフォーマンスに占める割合は26%で、音楽とスポーツの場合はその割合がさらに減り、それぞれ21%、18%でした。 ルールにあまり縛られず変化が激しい分野では、もっと驚くべき結果が出ました。教育の場合(成績を上げようと努力する大学生をイメージしてほしい)、練習がパフォーマンスに占める割合はわずか4%だったのです。保険販売員、コンピュータプログラマー、パイロットなどの職業では(スポーッや音楽は含まない)、なんと1%に満たなかったのです。

なぜ、一部の分野では練習を徹底してもパフォーマンスが上がらないのでしょうか?それを知るため、マクナマラらは88の研究を「予測可能性」に基づいて、次のようにグルーピングし直しました。ランニングなど予測可能性が高い(練習によってパフォーマンスが上がると予測しやすい)分野、フェンシングなど予測可能性が中程度の分野、そして航空機の緊急事態など予測可能性が低い分野に分けたのです。すると、予測可能性が高い場合はパフォーマンスの24%を練習で予測できますが、中程度の場合は12%、予測可能性が低い場合は4%にしかならないということが判明したのです。予測可能性が低いビジネスでは、練習をいくら積んでも結果を残せません。専門家の力には限界があるのです。

専門家が最良の答えを提供しないというのは日常的に起こりうることだ。心理学者のフィル・テトロックは、20年かけて現代の重要な政治的課題ー民主主義 や資本主義への移行、経済成長、国家間の武力行使、核拡散をめぐる予測について調査した。そのために、テレビや新聞によく登場する専門家や、これらの問題について政府や企業に助言する専門家の予測を追跡したところ、衝撃的な事実が判明した。なんと、専門家の的中確率は一般人と同レベルだったのである。つまり、専門家としての職歴や地位はほとんど意味をなしていなかった。

複雑な課題を解決できるのは専門家ではないとしたら、誰が課題を解決できるのでしょうか?予測精度が高い人には、ある特徴がありました。彼らは小さなことがらをたくさん知っていて、複眼的に結論を導いていました。優れたパフォーマンスを発揮したのは、多くの知識を持った博識の人間だったのです。

複雑な課題に向き合うときは、ひとつのことを掘り下げる専門家より、幅広い知識を持っているほうが有利です。専門家のリソースは狭く、辺境になりやすいのです。

「多様な意見」はなぜ正しいのかの著者のスコット・ペイジは、「民主主義から科学者のグループまでのあらゆる場面で、ランダムなチームがドリームチームに勝る」と述べています。

ランダムなチームには、たいてい専門家とアウトサイダーの両方がいる。チームのパフォーマンスを決める最も重要な要素は、リソースの多様性だ。リソースが多様なら、先入観にとらわれないオープンな議論ができ、さまざまな視点を採り入れた解決策に到達できる。一見頼りなさそうでも、アウトサイダーは専門家とは違う時間の使い方によって、幅広いスキルを獲得している。

良い結果を出したければ、専門家とアウトサイダーの両方を用意するとよいでしょう。狭いアイデアしか生み出せないチームを作るよりも、多様なリソースを組み合わせた方が、課題を解決できる可能性が高まります。

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複雑な領域なら、専門家より「なんでも屋」が有利?

ストーリー・マスグレイヴは高校中退というハンディを乗り切り、多くの学びからとてつもないチャンスを得ます。マスグレイブは海軍に入隊し、航空部隊の電気技師や航空乗務員として働いていました。彼にはコックピットに座りたいという夢があり、それを実現するために、シラキュース大学に入学します。同大学で、数学と統計学、UCLAでMBA、マリエッタ大学で化学を学び、さらにコロンビア大学で医学の博士号。ケンタッキー大学で生理学、整理物理学の修士号などを取りながら、パイロットのライセンスも取得します。1967年、マスグレイブが32歳のときに彼はNASAに就職し、NASA史上もっとも複雑な任務のハッブル修理を担当します。 彼の幅広い能力がNASAの課題を解決したのです。多様な経験を積めば、リソースについてより広い視野で考えることができ、問題に取り組むアプローチも広がります。 マスグレイブのような「なんでも屋」は、いまや希少種となってしまいました。しかし、ついこのあいだまではこの「なんでも屋」が社会的に高く評価されていました。

■レオナルド・ダ・ヴィンチ(画家・建築家・音楽家、数学者、エンジニア、発明家、解剖学者)
■ベンジャミン・フランクリン(著述家画家、政治理論家、郵便局長、科学者、外交官)
■メアリー・サマヴィル(天文学者・数学者、地質学者)
■ポール・ロブソン(歌手、フットボール選手、法律家、社会活動家・20ヵ国語を操る俳優)。

高い専門性が求められる現在では、人々はどんどん狭い範囲で知識を先鋭化させています。世の中が複雑になっている今こそ、「なんでも屋」を見直すべきです。専門家では解決できない課題が山積みの現代には、様々なノウハウを組み合わせる必要があるのです。

自分一人で解決できない場合は外に踏み出す必要があります。その際、デザイン企業のIDEOの4つのステップを使いましょう。
1、周りの世界を探索し、アイデアのデータベースを築く
2、リソースを常に念頭におき、使えるようにしておく
3、類推する
4、アイデアを頻繁にテストする
自分の経験を深めると同時に人脈に多様性を持たせるのです。自分の周囲に多様な経験を持つ人を配置し、そのリソースを組み合わせることで、成果を出せるようになります。

私は専門性を追い求めることを否定しません。1万時間のルールで専門家を目指すのもありだと思います。ただ、様々な経験を積んだり、知識を吸収することで、人生の可能性は広がります。この考え方を覚えておくと学ぶことが楽しくなります。

まとめ

専門家が評価される一方、ジェネラリストは価値がないと思われています。それは、本当なのでしょうか?逆に、世の中が複雑になっている今こそ、「なんでも屋」を見直すべきです。専門家では解決できない課題が山積みの現代には、様々なノウハウを組み合わせることも必要なのです。

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