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GAFA next stage ガーファ ネクストステージ―四騎士+Xの次なる支配戦略
スコット・ギャロウェイ
東洋経済新報社
本書の要約
企業は、既存製品による提供価値の向上、新たなサービスの開発、コスト削減、参入障壁の強化など、さまざまな領域でDX化を推進しなければ、GAFAMやこれから生まれるベンチャーに事業を破壊されてしまうのです。リーダーはGAFAMの餌食にならないために、ディスラプタビリティ・インデックスを参考にしながら、事業の見直しを早急に行うべきです。
ディスラプタビリティ・インデックス(崩壊指標)とは何か?
ある業界にディスラプションが迫っているかどうかは、いくつかの指標を見るとわかる。それをディスラプタビリティ・インデックス(崩壊指標)と呼ぶことにしたい。 (スコット・ギャロウェイ)
スコット・ギャロウェイのGAFA next stage ガーファ ネクストステージ―四騎士+Xの次なる支配戦略の中にディスラプタビリティ・インデックス(崩壊指標)という考え方が紹介されていました。今日はこれからGAFAMの餌食になりそうな業界について考えてみたいと思います。
アクセンチュアの2018年の調査によると、世界中で多くの大企業が、業界の垣根を超えた創造的破壊をすでに経験していることが分かりました。 アクセンチュアは、日本を含む82カ国で年商1億ドル以上の企業3,629社(日本企業は367社)を対象に、「現在直面している創造的破壊の度合い」と「将来的な創造的破壊がもたらす影響力」の2点を分析しました。
その結果、63%の企業が「すでに大規模な創造的破壊に直面している」と回答し、44%が「創造的破壊の兆候を強く感じている」と回答しました。多くの企業がGAFAMやベンチャーの破壊活動に悩んでいることがわかります。
著者のスコット・ギャロウェイは以下の4つのディスラプタビリティ・インデックスを紹介しています。
インデックス1:付加価値に比してどれだけ価格が伸びたか
変化の重要な兆しは、イノベーションが起きておらず、付加価値はほとんど増えていないのに、価格だけが大幅に上昇することです。これはアンアーンド・マージン(未収の利ざや)とも呼ばれているものです。
(例1)高等教育や大学の講義
大学の授業のスタイルはほとんど昔から変わっていません。教育の質が上がっていないにも関わらず、アメリカの大学の授業料は高騰を続け、40年間で1400%上昇しました。コロナ禍でオンライン授業が進んでいますが、大学の授業料は一向に下がりません。このペインを取り除くことをGAFAMが虎視眈々と狙っています。彼らは大学とタイアップし、オンライン授業をサポートすることで、大学教育に変革をもたらそうとしています。
(例2)医療業界
高度な技術、薬物療法、装置などの医療求術は進化していますが、平均余命や乳児死亡率はそれほど向上していません。コストは爆発的に増加しているにも関わらず、顧客体験は向上していません。家族保障の保険料はこの5年で22%増、10年では54%増と、賃金上昇率やインフレ率を大幅に超えています。アマゾンはこの分野への参入を本格し、医療業界を破壊しようとしています。(参考 アマゾンが病院に参入する)
インデックス2:ブランドへの依存度
ブランド時代からプロダクト時代への移行で、20世紀を代表する多くの大企業が持っていた競争上の優位がすり減っていくと著者は未来を予測します。多くの企業は基本的に同じような方法で大量生産された平凡な製品を販売しています。売れ行きや価格を左右するのはブランド力になります。グーグルとフェイスブック、ディズニーの時価総額に比べ、バイアコムやWPPの時価総額ははるかに小さくなっていることを見れば、ブランドへの依存が危険なことがわかります。
インデックス3:消費者の不満の蓄積
消費者と敵対的な関係にある業界もGAFAMに狙われています。例えば、保険会社と規制が医療ニーズと治療を結びつけるうえで、顧客の障害になっています。本来、この業界での主役は、患者と医師/病院の2つになるはずです。
One medical、ズーム+Care、処方薬宅配のCapsuIeなど創造的破壊を目指す医療クリニックでは、特に患者に患者の顧客体験を高めようとしています。当然、この領域でのアマゾンの存在感が大きくなるはずです。
インデックス4:「偽のイノベーション」の存在
既存企業は、自分たちのコア・ビジネスを脅かす可能性があるために製品やサービスの質と価値を向上させる技術革新を拒むことがあります。チケットを窓口で購入するより、オンラインで申し込むほうが面倒な映画館や教育資源そのものではなく設備をぜいたくに見せるためにカネをつぎ込む大学などがこれに当たります。
どうすればGAFAMの餌食にならずにすむのか?
パンデミックがディスラプションを加速する企業は生き残りを図るために、信じられないほどの俊敏さで事業をあらゆる方向に拡張している。テイクアウトを片手間でしかやっていなかったレストランでは、それを最優先のビジネスにして、メニュー、レイアウト、営業時間などを変更している。シームレス、ポストメイツなどの配送サービスがそうしたニーズに応え、顧客関係まで管理するようになった。
企業は、創造的破壊の段階に応じた戦略をスピーディに実行する必要があります。
■長期安定期にいる企業
既存事業を守るのではなく、改革することを優先すべきです。中核事業でコストの最適化を追求しながら、主要な製品・サービスの提供価値を高めなければなりません。例えば、価格を下げるだけでなく、品質を向上させるとなど顧客体験を高めることを考えましょう。
■不安定期にいる企業
今後イノベーションを生み出していけるように、既存事業の生産性を高める必要があります。これによって、競合企業を含めて業界全体が競争力を高めることができます。例えば、固定資産への依存度を減らし、十分に活用されていない資産の収益化を図ることを考えましょう。ベンチャーが参入できないよう資産の再配分を行うのです。
■混乱期の企業
大胆かつ的確に現状を変える以外に生き残る術がありません。伝統的な企業は、中核事業を根本から変えつつ、新規事業の拡大を図る必要があります。
■発展期の企業
絶え間なくイノベーションを取り込む必要があります。例えば、中核事業に関して再活性化を図り、イノベーションを適用できる状態を作ることで、そこから生まれた製品・サービスで既存顧客のシェア拡大を図ったり、隣接する市場や未開拓市場に積極的に進出をはかるようにしましょう。
アクセンチュア・デジタルのグループ・チーフ・エグゼクティブであるマイク・サトクリフは次のように述べています。
企業が単に創造的破壊の波を乗り越えるだけでなく、そこから成功を収めるためには、中核事業の変革と成長を図ると同時に、新規事業の創出と拡大が必要です。このためには、デジタルの活用が欠かせません。(マイク・サトクリフ)
業界のデジタル活用度合いが低ければ、その分、将来的に創造的破壊の影響を受けやすくなります。企業は、既存製品による提供価値の向上、新たなサービスの開発、コスト削減、参入障壁の強化など、さまざまな領域でDX化を推進しなければ、GAFAMやこれから生まれるベンチャーに事業を破壊されてしまうのです。リーダーはGAFAMの餌食にならないために、ディスラプタビリティ・インデックスを参考にしながら、事業の見直しを早急に行うべきです。
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