それでは伝わらない! ビジネスコミュニケーション新常識 デジタルグローバルな作法は若者に学べ(西原勇介)の書評

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それでは伝わらない! ビジネスコミュニケーション新常識 デジタルグローバルな作法は若者に学べ
西原勇介
日経BP

本書の要約

「ストレート」「共感」「フラット」という次世代ビジネスコミュニケーションを身に付ければ、あなたの世界は格段に広がり、デジタルグローバルな時代でも必要とされ続ける「新しい世代のキャリアパーソン」に生まれ変われるのです。若者とコラボすることで、ビジネスの可能性を広げましょう。

若者世代のコミュニケーションの3つのキーワード

若者が身につけているコミュニケーションスキルは、デジタルグローバルなビジネスシーンと相性が良いことが分かったのです。(西原勇介)

大学で教えるようになってから、若者世代と接する時間が増えていますが、彼らのコミュニケーションスキルは私たちとは別物です。敬語を使わずにダイレクトにメッセージを書くなど、「丁寧・気配り」や「その場の空気感」を重視していた私たち世代のコミュニケーションとは異なるやり方が、Z世代の当たり前になっています。

例えば、彼らは電話でのコミュニケーションを嫌がりますが、それはテキストでの記録ができないからだと言います。後で揉めないように彼らはテキストで記録を残すようにしています。

グローバルコミュニケーションのプロフェッショナルの著者は、若者世代のビジネスコミュニケーションの新常識は、ストレート、共感、フラットの3つのキーワードだと指摘します。

1、共感
若者は自分が「好き」「わくわく」「かわいい」「楽しい」といった共感夕ーゲットを感知して体験し、共有します。若者はハッシュシュタグで検索(タグる)したり、友達の投稿に共感しながら、新たな製品やサービスを見つけます。

2、ストレート
SNSでのコミュニケーションでは、まどろっこしい言い方では、相手には伝わりづらいため、はっきりと明瞭に伝える必要があります。当然、相手からの返信もストレートであることを望み、それが当たり前だと若者は捉えています。

若者たちは、Twitterが定める140文字という様式にのっとった上で、上手にコミュニケーションを行います。一番伝わる表現をする手段を自然と身に付け、それぞれのコミュニケーションツールの制約の中で、表現を最適化するスキルを磨いているのです。

3、フラット
若者は、会ったことのないSNS限定の友達と「絆」を深めるコミュニケーションスキルを磨いています。このスキルを磨くことによって、人間関係を「フラット」に捉えることが当たり前になっています。

オンラインの中の人とのつながりというのは、その人がどんな社会的な地位にいるとか、どんな容姿をしているとかと関係がありません。そんなこととは関係なく、人と人がつながっているのです。そうした人とのつながりを重ねていくと、人間関係そのものをフラットに捉えられるようになります。

世界の時価総額トップ10企業の共通点

実にトップ10のうち、6社がソフトウエアをベースとする「体験創造型」企業です。アップルやアマゾン、マイクロソフトなどの企業では、共感型のコミュニケーションスキルが求められています。  

「体験創造」において最も重要な要素は、「UI(ユーザーインターフェース)」です。ユーザーが製品・サービスを利用することで、その人のライフスタイルに大きく影響を与えます。UIを通じて、それらの企業はユーザーとコミュニケーションを行なっています。

実際、体験創造型企業の多くは「人間工学」に基づいてインターフェースをデザインしています。アップル社では「ヒューマン(人間)・インターフェース(交流)・デザイン」と名付けられたチームが、絶えず顧客体験をアップしています。

iPhoneは人々のライフスタイル、コミュニケーションの在り方を革新しました。テスラ社は、車内で過ごす時間に新たなコミュニケーション体験を生み出しています。

世界から集まるデザイナーやエンジニアのチームによるモノづくりでは、絵で伝える(視覚)、音で伝える(聴覚)、モノで伝える(触覚)といった「共感」によってチーム内で共有し、体験価値を創造しているのです。 完成した製品のプレゼンテーションも「共感」が重視されています。

モノの作り手とユーザーが直結する新たなビジネスにおいては、モノや体験の価値・感動を、SNSでダイレクトに伝えることが当たり前になっています。個人から個人ヘダイレクトに「発信」し、 相手の「共感」を生み出すことが重要です。

スティーブ・ジョブズは共感型のプレゼンを重視し、ダイレクトに顧客にメッセージを伝えることで、コミュニケーションの形を変えてしまいました。ジョブズに共感したブロガーやインフルエンサーが記者と共に情報発信することで、iPhoneはヒット商品になっていったのです。

最近のグローバルプロジェクトでは、Slackなど様々なデジタルツールを使いこなす必要がありますが、その多くは、チャット、課題管理ツールなど、テキストベースが主体となっているため、口頭会話での微妙なニュアンスや表情表現は使えません。このような働き方が当たり前になる中、ストレートなコミュニケーションが望まれているのです。

グローバル化が進めば、異文化の人たちとのコミュニケーションが当たり前になります。その際、著者はトモダチ力が大事になると指摘します。 「大切な友達であれば必ず気を付けること」に気を配る力=トモダチ力を持つことで、若者や外国人とのコミュニケーションがうまくいくようになります。

トモダチ力のあるコミュニケーションとは、以下のようなスタイルになります。
●「どちらが偉い」と考えず、お互いを尊敬し合う
●堅苦しい言葉遣いをせず、できるだけ簡潔にストレートに伝える
●相手のミスや認識相違に対して責めたり声を荒らげたりしない
●お互いに共通の価値を見つける
●感謝してもらえることや、相手が喜んでくれることをする
●何かを依頼されたり聞かれたりしたら、速やかに反応する
●自分の意に沿わない意見も制止したりせず、まずはしっかりと意図を聞く
●家族や宗教のこと、大切にしていることを知る、認める

コミュニケーションの断絶は、私たちから共感と創造性を奪い取り、組織の力を弱めてしまいます。
・上司と部下
・キャリアパーソンと若者
・日本人と外国人
・自社と下請け先
など異なる属性のコミュニケーションが「断絶」すれば、体験や知識が共有されず、共感もされません。そこからは新しいアイデアも生まれずらくなり、イノベーションも起こりません。

世界中へ新しい体験価値を伝えるためにも「グローバルコミュニケーション」の力が不可欠です。そして、デジタルグローバル社会において、その伝え方にも新しい手法が求められます。

マイクロソフトやMETA(旧フェイスブック)がメタバース空間での新しい働き方を提案する中、今後、若者たちのコミュニケーションが当たり前になることが予測されます。

「ストレート」「共感」「フラット」という次世代ビジネスコミュニケーションを身に付ければ、あなたの世界は格段に広がり、デジタルグローバルな時代でも必要とされ続ける「新しい世代のキャリアパーソン」に生まれ変われるのです。

キャリアパーソンが持つ「理解力」「転換力」「説得力」を若者とのコミュニケーションで活用することで、結果が出せるチームが生まれます。キャリアパーソンと若者がタッグを組むことで、全く新しい体験価値に基づくビジネスモデル(製品)を生み出すことができるのです。



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