経営者は石田梅岩に学ぶのか? (森田健司)の書評

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なぜ名経営者は石田梅岩に学ぶのか?
森田健司
ディスカヴァー・トゥエンティワン

経営者は石田梅岩に学ぶのか? (森田健司)の要約

石田梅岩の思想は、「共同体の最大の利益をもたらすこと」を人生の目的として重視しています。彼は道徳力、倹約、最善を尽くすことを強調しています。個人の利益や欲望を超えて、共同体の幸福と社会全体の発展に貢献することを目指していました。

経営者が重視する石田梅岩の思想とは何か?

梅岩は明らかに経済学者であり、経営学者でもあったのです。(森田健司)

「勤勉」「正直」「時間に正確」といった美徳は、日本の近代化と高度経済成長の基盤とされています。これらの価値観は、江戸時代の思想家である石田梅岩によって体系化されたとされています。梅岩は、日本人の労働倫理と社会的な行動規範を築く上で大きな役割を果たしました。

梅岩の教えは、日本社会に深く浸透し、現代に至るまで影響を与えていると、社会思想史家である森田氏は指摘します。梅岩の学問は、現代の社会科学がしばしば依存する客観的なデータではなく、人間の本性を問うことから出発し、経済や経営を考察していました。

森田氏によれば、梅岩の学問は西洋のアダム・スミスやピーター・ドラッカーの思想と共通する面があります。梅岩は、「人はどう生きるべきか」という根本的な問いに対して思索を続け、その探求は人間の存在だけでなく、社会構造や職業の役割にも及んでいました。商人(番頭)としての経験を持つ彼は、商業や経済に関して直観的な理解を深め、思想家に転じてからはこれらを明確に説明することに注力しました。

石田梅岩の死後、彼の思想は弟子たちによって「石門心学」として全国に広められました。江戸の終わりまでに、北海道から九州に至るまで45カ国173の心学講舎に広がり、町人だけでなく武士や大名を含む多くの階級の人々が学び、彼の思想は現代にも受け継がれています。

このブームの背景には、当時の身分制度「士農工商」の下で、生産活動に携わらないとみなされ、差別されていた商人たちに対する石門心学の影響があります。石門心学は商人たちに仕事の「意味」を伝え、彼らの自信と誇りを育む役割を果たしました。

梅岩の「商人の利は武士の禄に同じ」という主張は、商人たちの地位向上に対する彼の強い信念を示しています。これにより、当時の社会における商人の位置づけに大きな変化がもたらされました。

彼の教えは日常の仕事に深い意味を与え、道徳的な向上、自信ある感情と行動、和やかな人間関係の構築を促しました。この道徳的向上は、仕事の成果にも好影響を及ぼし、真面目で周囲に気を使う人々が国の経済発展に貢献するようになったのです。梅岩の教えは、個人の成長だけでなく、社会全体の発展にも寄与しました。

共同体の利益を目指すことが重要な理由

商人で道を知らない者は、ただ貪ることだけをして家を滅ぼす。商人の道を知れば、欲心から離れ、仁心で努力するので、道に適って栄えることができるだろう。これが学問の徳というものである。(石田梅岩)

石田梅岩は、商業に関する正確な知識が不足している者が「自己の利益」の追求に走ることで、結果的に自身の店を潰してしまうと指摘しています。十分に勉強し、欲心を離れ、人を思いやることにより、商人は成長できるのです。

彼のこの洞察は、商業的成功だけでなく、商人の倫理的、社会的責任にも光を当てています。商業の理解が深ければ深いほど、商人は自分の利益だけでなく、より広い社会的な視野を持つことが重要であると梅岩は考えていました。

梅岩は、世の中の人々に共感を得る商行為を通じて財を成すことが、家族と子孫の繁栄につながると述べています。これを現代のビジネスに置き換えると、「社会からの共感と支持に基づくビジネスは、会社の成長と長期的な繁栄をもたらす」と解釈できます。

この考えは、単に利益を追求するだけでなく、顧客や社会のニーズに対して共感し、それに応えるビジネスモデルの重要性を強調しています。顧客体験を高めることが、商いの基本で、これにより顧客との長期的な関係を築けるようになります。

梅岩の思想では、「共同体に最大の利益をもたらすこと」を人生の目的として重視しています。彼の考えは、道徳力や倹約、最善を尽くすことを強調し、共同体の繁栄と発展に寄与することを目指しています。この観点からは、個人の利益や欲望だけでなく、共同体の幸福や社会全体の発展を考えることが、真の人生の目的を達成する上で重要な要素となります。

梅岩の考え方は、自己を超えた視点からの思考と行動を促します。特に、「消費」への欲望が際限なく刺激される現代社会において、その意義は大きくなります。過度に消費に偏ることが、個人の生活を破綻させる可能性を秘めていることを忘れてはいけません。消費と倹約のバランスを取ることが大切なのです。梅岩の教えを知ることで、現代人もより豊かに生きられるようになります。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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