マーケティング「つながる」思考術 「こんなはずじゃなかった」と決別するために知っておくべき売上に至るまでの「点と線と面」(池田紀行)の書評

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マーケティング「つながる」思考術 「こんなはずじゃなかった」と決別するために知っておくべき売上に至るまでの「点と線と面」
池田紀行
翔泳社

マーケティング「つながる」思考術 (池田紀行)の要約

売上はさまざまな要素が組み合わさって形成されるため、マーケティング戦略もそれに合わせて構造的に考える必要があります。戦略は単純な一直線の道のりではなく、多面的な構造を持つべきです。このように全体を見渡し、細部にも目を配ることで、短期的な成功と長期的なビジョンの両方を達成することができるのです。

マーケティングの良い戦略とは?

商品が売れるかどうかはマーケティングの力にかかっています。一方で、広告効果も、PR効果も、販促効果もマーケティング効果の一部でしかありません。この(最も重要な!)それぞれの施策で「できること」と「できないこと」の定義や解釈が会社・組織・個人によって大きく異なることが、施策の成功と失敗の解釈の幅を(悪い意味で)拡大してしまい、マーケティングの現場のあちこちで責任の糾弾や落胆を生んでいる主要因なのです。(池田紀行)

著者の池田紀行氏は、売上を最大化するためには、単に施策を実施するだけではなく、それらを組み合わせて戦略的に活用する必要があると述べています。 本書では、マーケティング施策の課題と施策のミスマッチを解消する方法や、現在の課題に対して適切な施策を特定する手法が詳しく解説されています。

著者は、マーケティングには「万能薬」のような施策は存在せず、SNSやコンテンツマーケティングなどの各施策にはできることとできないことがあると指摘しています。そのため、自社のマーケティング戦略に合った施策を選択し、組み合わせることが重要だと述べています。

「筋の良い戦略」とは、売上目標を達成するために必要な手段やプロセスが論理的に組み立てられている状態を指します。具体的には、目標を設定し、現状を把握し、問題点を明確にし、課題を洗い出し、最適な施策を立案するという一連の流れがスムーズに進んでいることが求められます。 このような論理的な組み立てがなされていれば、「筋の良い戦略」と言えるのです。

一方で、「筋の悪い戦略」とは、目標や施策がバラバラで組み立てが不明瞭な状態を指します。例えば、目標があいまいであったり、現状の把握が不十分であったり、問題点や課題が明確にされていなかったりする場合です。このような状態では、効果的な施策を立案することが難しくなります。

マーケティングの世界では、さまざまな施策や手法が存在します。しかし、それらを単独で実行しても、なかなか成果を上げることはできません。なぜなら、施策は単なる「点」であり、売上に至るまでのルートは「線」であり、マーケティング戦略は「面」であるからです。

売上が「変数の構造物」によってつくられているのなら、必然的に戦略も「構造的」なものになります。戦略は、直線的ではなく構造的なのです。

戦略を構造化することで、マーケティングの精度は格段に正確になります。施策を実施し、売上までの経路を追跡・評価することで、どの施策が効果的であるかを明確に把握することができます。これにより、限られたリソースを最適化することができます。

さらに、マーケティングにおいては、さまざまな概念やフレームワークを、一つの統合された全体として捉え、関連づけることが重要です。それぞれの個別のアイデアが、大きな全体の中でどのように機能するかを理解することで、実際の業務において柔軟なカスタマイズや調整が可能になります。

例えば、特定の施策が売上に直結していない場合は、その施策を見直すか、他の施策にシフトすることができます。 施策と売上までのルート、そしてマーケティング戦略をつなげて考えることで、施策の効果を評価するだけでなく、より大局的な視点でマーケティングを展望することができます。

施策の成功や失敗に対する理解が深まり、次の施策の企画や改善につながります。マーケティングの世界は常に変化しているため、構造化を習慣化することで、結果を出せるようになるのです。

売上を上げるマーケティングとは?

商品カテゴリー、顧客の購買特性、商品力(製品パフォーマンス)、価格競争力、配荷力、投下できる広告宣伝費、ブランド力、顧客基盤、マーケットシェア(市場ポジション)、競合状況、経済状況などによって、「自社が抱えるマーケティング課題」は他社の課題とはまったく違います。それにもかかわらず、借りてきた概念やフレームをそのまま自社に当てはめて戦略をつくってしまう。そんなやり方で「自社にフィットした戦略」がつくれるはずがありません。

他者のケースを真似するだけでは、成功するわけがありません。その事例の抽象度を高め、俯瞰し、構造化することで、初めてマーケティングの戦略立案が可能になります。

費用は「お金の投下を始めた瞬間から効果が出始め、お金の投下を終えた瞬間に効果が(ほぼ)ゼロになるもの」で、投資は「お金の投下を始めてもすぐに効果は出ないが、お金の投下をやめても効果が一定期間残るもの」です。

マーケティング活動において、費用と投資は異なる効果を持っています。費用とは、例えばチラシやリスティング広告のように、すぐに効果が現れますが、広告をやめた瞬間に効果がほぼゼロになるものです。

一方、投資とは、テレビのブランディングCMや大規模なイベントなどのように、すぐに投下したお金に見合ったリターン(売上)が得られるわけではありませんが、中期的に売上を上げる可能性を向上させるものです。

つまり、費用は即効性がありますが、効果が一時的であるのに対して、投資は効果が持続し、将来的な成果を期待できます。

現在のマーケティング課題に応じて、全体から俯瞰し、費用的施策と投資的施策の最適なバランスを組み立てることが重要です。費用的施策を通じて即効性のある効果を得る一方で、投資的施策を通じて将来的な成果を期待することが求められます。短期的な結果ばかりを求めていると未来の売上を作れなくなります。

効果の持続性や成果の期待値を考慮し、費用と投資の使い方を適切に組み合わせることで、効果的なマーケティング戦略を立てることができるでしょう。

マーケティング戦略を「売上につながるまでの時間軸」に基づいて分類すると、「短期間での収益を目指す施策」と「長期的な収益成長を目指す施策」の2つに大別できます。短期間での収益を目指す施策は、即時の購買意欲がある顧客をターゲットにして費用対効果(ROMC)を指標にした販促活動を指します。

これに対して、長期的な収益成長を目指す施策は、潜在顧客に焦点を当て、ブランドの認知度や好感度を高めることで将来の購買につなげる投資的な活動であり、投資対効果(ROMI)を基準に評価されます。

例えば、掃除機が壊れたときにすぐに購入を検討する人に対しては、GoogleやYahoo!のリスティング広告などを用いた直接的な販促活動が有効です。これは短期的な「収穫」に該当します。

一方で、まだ購買ニーズが明確でない潜在顧客に対しては、ブランディングを通じて、将来的に自社の製品を選んでもらえるような土台作りを行うことが重要です。これは長期的な「種まき」に相当し、将来の収益を見越した投資となります。

マーケティングの成功は、短期的な目標と長期的なビジョンを適切に統合した戦略によって達成されます。これには、直面している即時の課題と将来予想される課題への対策を巧みに組み合わせ、それぞれの成果を測るためのKPIとKGIを設定することが含まれます。

マーケティング活動を最適化し、売上を増やすためには、「全体最適」と「部分最適」の考え方を効果的に取り入れることが重要です。全体最適とは、企業全体の目標に沿って各部門の活動を調和させ、長期的な成功を目指すアプローチです。

これに対し、部分最適は特定のプロジェクトや短期目標に集中することを指しますが、これらの取り組みも大局を見失わずに、全体の戦略に合致していなければなりません。 ただし、各々のKPIのみに集中してしまうと、全体のKGIを損なう可能性があります。部分最適を達成できてもマーケティングのKGIが達成できなければ、売上や利益はアップしないのです。

したがって、短期的な成果と長期的な目標のバランスを見極めることが、企業を持続可能な成長へと導く鍵となります。売上はさまざまな要素が組み合わさって形成されるため、マーケティング戦略もそれに合わせて構造的に考える必要があります。戦略は単純な一直線の道のりではなく、多面的な構造を持つべきです。このように全体を見渡し、細部にも目を配ることで、短期的な成功と長期的なビジョンの両方を達成することができるのです。

このアプローチにより、即時の成果を追求するだけでなく、持続可能な成長を目指すことができます。短期的な施策が直面する課題の解決に貢献し、長期的な施策が企業の将来にわたる競争力の基盤を築くことになります。このプロセスを通じて、企業は変化する市場環境に柔軟に対応し、継続的に成果を出すことが可能になります。


 

 

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