なぜ働く?誰と働く?いつまで働く? 限られた人生で後悔ない仕事をするための20の心得
有山徹
アスコム
限られた人生で後悔ない仕事をするための20の心得(有山徹)の要約
今この瞬間が人生で最も若い時です。キャリアは「言語化」と「価値化」と「行動」で築くものだと著者は指摘します。これまでのキャリア資本を振り返り、増やすべき資本を考え、小さな一歩を踏み出しましょう。失敗を恐れず、行動を続けるうちに、偶然の力によって、やがてチャンスが運ばれてきます。
キャリアは永遠のβ版!
何をするかよりも、「何のため」「誰と」「いつまで」働くかが大事になっていくと思います。この解像度が高ければ、何が仕事であろうと心理的成功は得られるからです。(有山徹)
多様な働き方やキャリアの在り方が求められる時代、私たちがどのように生き、どのように働くかを再定義する必要が出てきています。その中で、一般社団法人プロティアン・キャリア協会 代表理事有山徹氏が提案するプロティアン・キャリアという考え方は、まさに現代における新しいキャリアの在り方を示しています。
プロティアン・キャリアとは、変幻自在の神プロテウスに由来するように、時代の変化や環境の変動に応じて柔軟に適応しながら、自らの価値観と目標に基づいてキャリアを築いていくというものです。この考え方は、伝統的な「キャリアパス」に囚われず、組織の中での昇進や社会的な地位という外的な成功に依存するのではなく、むしろ個人の内面的な満足感や成長を追求することに重点を置いています。
この理論を最初に提唱したのは心理学者ダグラス・ホールであり、彼は個人の主体性と柔軟性をキャリア形成の中心に据えることの重要性を強調しました。それは単なるキャリア戦略の話ではなく、変化の激しい社会において自分自身をどう保ち、どう育てていくかという、生き方そのものに関わる問いでもあります。
つまり、プロティアン・キャリアは、個人が自らの人生を積極的に形作る力を得るための手段といえるのです。 従来のキャリア観では、多くの人が一つの企業に長く勤め上げることで安定と成功を得ることを目指してきました。
しかし、現代では環境の急激な変化により、そのような前提は揺らいでいます。人々が安定を追い求める中で、むしろ安定そのものが希薄になりつつある時代には、固定されたキャリアパスに囚われてしまうことがリスクとなる場合もあります。
こうした状況において、プロティアン・キャリアの理念は、自らの価値観やライフスタイルに合わせて柔軟に進路を変え、必要なときには新たなスキルを学び直すことで、人生を主体的に切り開いていく姿勢を後押ししています。 自己の成長を追求するプロティアン・キャリアの考え方は、個人にとっての自己実現や幸福感の向上につながります。
「言語化」と「価値化」と「行動」という3つのポイントから、解像度を高めることでキャリアを変えられると著者は指摘します。
言葉にして表現すること(言語化)は、自分を深く知るための第一歩です。多くの人は、日々の忙しさの中で自分の本当の思いや価値観を見失いがちです。しかし、それを整理し、言葉にすることで、自分が何を大切にし、何に喜びを感じるのかが明確になります。動機を言語化することで、自分のポリシーやこだわりが見えてくるのです。
「何のために働いているのか」「自分にとっての成功とは何か」といった問いに真剣に向き合い、それを言葉にし、書き出すことで、自分の内面がより鮮明に見えてきます。私は毎朝日記を書いていますが、自分との時間を持つことで、やりたいことがわかるようになりました。このプロセスを通じて、ただ生計を立てるために働くのではなく、人生における働き方の意味を再定義できるようになります。
さらに、自分の過去に新たな価値を見出すことも重要です。多くの人が、過去の失敗や思い出したくない経験を否定的に捉えがちですが、それらの経験は現在の自分を形作る大切なピースです。どんな経験も、視点を変えれば新たな価値を見つけることができます。
自分がこれまでどのような選択をし、何を学んできたのかを丁寧に振り返ることで、そこに新しい可能性や強みを見つけることができるのです。それは、自分のスキルや経験を他者と共有し、価値を提供するための土台ともなります。
自分の持っている知識やスキルが活かせる関係性を横展開していくことを、プロティアン理論では「変化適応力(アダプタビリティ)と呼んでいます。
今までに人生の中で培った知識やスキルを、私たちはどれだけ活かしきれているでしょうか?自分では「こんなこと誰でもできる」「これくらい大したことない」と感じることでも、他人から見ると大きな価値を持つ場合があります。
プロティアン理論の「変化適応力(アダプタビリティ)」は、この隠れた価値を見出し、新しい関係性や場面で活用する能力です。 自分では無価値に思えるものでも、他者との関係性の中で予想外の価値として評価されることがあります。大切なのは、自分のスキルや経験を言語化し、それらを新しい文脈に当てはめてみることです。
これにより、同じ職種や業界に限定されることなく、横展開するチャンスが広がります。自己の枠を超え、別の視点から見つめ直すことで、これまでに気づかなかった可能性が姿を現すのです。
著者はキャリアは「永遠のβ版」だと言いますが、実際、キャリアはその時々で常に変化し続けます。履歴書に並ぶ箇条書きの経歴ではなく、自分が主人公の変化のストーリーを紡いでみることで、自分の思わぬ価値に気づけます。過去の出来事や経験を一つの物語として語ることで、その背後にある意味が浮かび上がります。あなたの人生に意味を与えるのは、他の誰でもない、あなた自身なのです。
こうして自分の経験を物語として捉え、言語化していく中で、自分にしかない価値や目的が見えてきます。それが「個人パーパス」です。このパーパスは、単なる目標やキャッチフレーズではなく、自分の生き方やキャリアの指針となるものです。 言語化と価値化を繰り返すうちに、次第に自分の中に「心理的成功」が育まれていきます。
心理的成功とは、外部の評価や地位ではなく、内面から湧き上がる満足感や充実感のことです。これを手に入れるためには、他人との競争に焦点を当てるのではなく、自分の持つ力を新しい文脈で活かす姿勢が求められます。 あなたのキャリアは、完成することのないストーリーだと考え、自分との対話を重ねましょう。
そのストーリーをどう紡ぎ、どの方向に展開していくのかを決めるのは、他の誰でもない、あなた自身です。変化を受け入れ、新たな挑戦に踏み出すことで、これまで想像もできなかった未来が広がっていきます。
キャリアにおいて行動が重要な理由
今がいちばん若いからこそ、今行動を起こしましょう。
キャリアというのは、あなたが積み立ててきた「キャリア資本」 によって変わっていきます。 今あなたにどれだけの資本があるか棚卸しして、 これから貯めていきたい資本を考えてみてください。
どれほど明確な目標や価値観を持っていても、それを行動に移さなければ現実は何一つ変わりません。多くの人がその最初の一歩を踏み出すことに躊躇します。未知の領域に足を踏み入れることへの不安や、失敗することへの恐れが、行動を阻む壁となるからです。しかし、重要なのはその壁を一気に乗り越えることではなく、小さな行動を積み重ねていくことです。
どんなに小さな一歩でも、それが次のステップを後押しし、やがては大きな変化を引き寄せる力になります。 新しい挑戦を始めるとき、いきなり大きな目標を達成する必要はありません。
こうした小さな行動が、自分の中に眠る新たな可能性を目覚めさせ、次の行動へとつながっていきます。特に行動の中で出会う人々は、自分の視野を広げ、さらなる成長の糧となることが多いものです。人とのつながりは、自分の価値観や目標に共鳴する仲間を見つけるための大切なきっかけとなります。
私はこの書評ブログを14年間毎日書き続けることで、様々なフィードバックを得たり、新たな出会いをデザインしてきました。自分の知識を高めるだけでなく、書評家というブランドも手に入れることができました。
行動は、他者との関係性を深めるための鍵でもあります。仕事上の付き合いに留まらず、趣味や興味のあるコミュニティに参加することで、新しい視点やアイデアを得る機会が増えていきます。そうした関係は、時にキャリアの転機となる出会いをもたらすことがあります。自分ひとりでは考えつかなかった選択肢や道筋が、他者との関わりを通じて見えてくるのです。
また、行動を重ねる中で大切にしたいのは、そのプロセスに意味を見出すことです。現代社会は結果を重視する傾向が強く、成功や達成という目に見える結果ばかりが評価されがちです。しかし、プロティアン・キャリア理論が強調するのは、試行錯誤の中で得られる経験や学びの価値です。成功の陰には数多くの挑戦と失敗があることを忘れてはなりません。その過程で得られる知識やスキルこそが、次のステージに進むための資本となるのです。
このブログでもおなじみのジョン・D・クランボルツ教授の「計画的偶発性理論」では、キャリアのターニングポイントの多くが偶然によるものだと語られています。しかし、その偶然の機会をつかむためには、まず自らが動き出さなければなりません。行動量が増えれば増えるほど、偶然のチャンスが訪れる確率も高まります。
待っているだけでは、どんなに素晴らしい機会も通り過ぎてしまいます。行動することで、ようやくそれに気づき、つかみ取ることができるのです。
行動の積み重ねは、自分の「キャリア資本」を豊かにします。プロティアン・キャリアでは、キャリア形成の基盤として「ビジネス資本」「社会関係資本」「経済資本」の3つが挙げられます。これらはそれぞれ、行動を通じて蓄積されていくものです。
日々の仕事で培ったスキルや経験はビジネス資本となり、人との出会いやつながりは社会関係資本となります。経済資本もまた、安定したキャリアを築くための重要な要素です。小さな行動の積み重ねによって、これらの資本が少しずつ増えていくのです。
未来を見据えたとき、今この瞬間が人生で最も若い時です。だからこそ、今こそ行動を起こすときです。キャリアは固定されたものではなく、あなた自身が積み重ねていく「キャリア資本」によって変わっていきます。これまでにどれだけの資本を積み上げてきたのかを振り返り、これからさらにどのような資本を増やしていきたいのかを考えてみましょう。
時代が急速に変化する中で、私たちは自分自身をも変化させ続ける必要があります。AIの進化によって情報を集めたり分析したりするスピードが飛躍的に向上していますが、その情報を活かして行動するのは人間にしかできません。AIがどれほど進化しても、人間の持つ「行動する力」はテクノロジーには代替不可能なものです。
心理的成功を手にしている人たちがやっているのは、「なぜ働く?誰と働く?いつまで働く?」という問いを自らに向け続けることと、小さな行動です。
未来に備え、今できる行動を一つひとつ積み重ねていくことで、あなた自身のキャリアと人生は豊かに広がっていくのです。
人生における成功を、単に目に見える成果や地位で測るのではなく、自分の内面から湧き上がる充実感や達成感によって評価する「心理的成功」。これを手にしている人々には、ある共通した特徴があります。それは、「なぜ働くのか」「誰と働くのか」「いつまで働くのか」という問いを絶えず自分に問い続ける姿勢です。そしてもう一つ、彼らはその問いの答えを実現するために、日々小さな行動を積み重ねています。
生き方を変えるのに、年齢は関係ありません。何歳からでも、新しい挑戦を始めることができます。私も17年前の44歳のときに断酒し、インプットとアウトプットを増やすことによって、自分のキャリア資本を高めてきたので、著者のアドバイスに共感を覚えます。
これまでの経験や失敗さえも、無駄になることはありません。人生のすべての出来事は、キャリアという大きなプロセスの一部であり、そこから学びや成長が得られるのです。重要なのは、過去の出来事をどう解釈し、それをこれからの行動にどう活かすかです。
多くの人が変化の中で感じるのは不安です。「この先どうなるかわからない」「失敗したらどうしよう」と立ち止まることが少なくありません。しかし、心理的成功を手にしている人々は、そうした未知の状況においても、決して足を止めません。
「どうなるかわからないからこそ行動する」「変化の流れに身を任せ、その中で自分ができることを見つける」という姿勢が、彼らの原動力です。社会の変化は避けられませんが、その変化に飲み込まれるのではなく、むしろ変化を味方につける。その流れに乗じて、新しい可能性を引き出していくのです。
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