歩く マジで人生が変わる習慣 (池田光史)の書評

man walking beside van near concrete house

歩く マジで人生が変わる習慣
池田光史
ニューズピックス

歩く マジで人生が変わる習慣 (池田光史)の要約

人間の身体は長時間歩くことを前提に進化しましたが、現代社会では座る時間が増え、運動不足が健康やメンタルに悪影響を及ぼしています。テクノロジーの発展を考える上で「身体性」は欠かせない要素です。特に歩くことは脳の活性化や幸福度向上に直結し、狩猟採集時代から続く本能的な行動でもあります。意識的に歩く習慣を取り入れることで、より健やかで充実した生活が実現できるようになります。

歩くことで生産性が上がる理由

人間の幸せは、動物として快調かどうかにかかっている。その生きた心地というものは本来、身体感覚と密接に関わっている。(池田光史)

人間の体は、進化の過程で動くことを前提として作られており、歩くことや身体を使うことが健康や幸福に直結しています。にもかかわらず、社会システムがますます座りがちで身体を使わない方向へと進んでいることで、私たちは慢性的な疲労やストレスを抱え、心身のバランスを崩しつつあります。

脳を鍛えるには運動しかない!の著者のハーバード大学の医学准教授ジョン・J・レイティは、人間の身体は狩猟採集時代からほとんど変わっておらず、特に歩くことを前提とした設計が受け継がれていると指摘しています。人間の脳は歩くことで活性化し、海馬のニューロンが新しく生まれることがわかっています。これは、現代の科学が明らかにした驚くべき事実です。

かつては、脳の神経細胞は大人になってからは増えないと考えられていました。しかし、東京大学の久恒辰博教授によれば、週3回、15分以上のウォーキングを行うことで、アルツハイマー病の発症リスクを35〜40%低下させることができるといいます。つまり、脳の健康は加齢とともに衰えるものではなく、適切な刺激を与え続けることで維持し、さらには向上させることができるのです。

これは、単なる健康維持の話にとどまらず、私たちの働き方やライフスタイルそのものを見直すきっかけにもなります。 ビジネスの場面においても、歩くことの価値は注目されています。

米ハーバード・ビジネス・レビューが2015年に発表した記事では、ウォーキングミーティングを実践することで、創造性が向上し、仕事のエンゲージメントも高まるという研究結果が紹介されました。実際に、ウォーキングミーティングを取り入れた人は、そうでない人に比べてクリエイティブな仕事ができると感じる割合が5.25%高く、職場へのエンゲージメントも8.5%向上するというデータもあります。

こうした背景から、メタ(旧フェイスブック)は、新本社の屋上にトレイルを設置しました。デスクワークが中心となる環境において、歩くことが創造的な思考を促し、自由な発想を生むことを意識した施策であると考えられます。オフィスの中に緑地を増やしたり、移動を促す設計にすることで、単なる仕事の効率化だけではなく、働く人の身体的な健康や精神的なリフレッシュにもつながるのです。

また、現代人の脳は常に覚醒状態にあり、過度なストレスを抱えているという指摘もあります。千葉大学の宮崎良文教授は、現代人は「そもそも働きすぎている」と述べており、自然に触れることが本来の人間のリズムを取り戻す鍵になるといいます。

私たちは普段、「いかに効率よく働くか」ということばかりを考えがちですが、実際には脳を適度に休ませ、リラックスさせることのほうが重要なのかもしれません。効率を追求し続けた結果、私たちは疲労を溜め込み、パフォーマンスが低下する悪循環に陥っています。歩くことや自然に触れることは、単なるリフレッシュではなく、脳を最適な状態に保つための手段でもあるのです。

歩くことで幸福度が高まる?

人類学の視点から見れば、人間がただ歩くだけで簡単に痩せたら困るのである。なぜなら人間は食べるために長距離を歩いていたのであり、歩くだけでそう簡単にエネルギーを消費しないように進化してきたからだ。そう、健康やフィットネスのためではなく、ただただ生き延びるために歩いていただけだ。

「歩けば痩せる」という一般的なイメージについても、最近の研究では意外な事実が示されています。ダートマス大学の人類学者ジェレミー・デシルヴァは、「歩くだけでは簡単に痩せない」と断言しています。実際に、464人の女性を対象とした実験では、毎日140分(約8㎞)歩いたグループの体重は半年後に2.5㎏しか減らず、210分歩いたグループではさらに減少幅が小さかったという結果が出ています。その理由は、運動量が増えると食事の摂取量も増え、エネルギーバランスが調整されるからです。

人間は長距離を歩くことに適応して進化してきたため、歩くだけで急激にエネルギーを消費する仕組みにはなっていません。しかし、だからといって歩くことに意味がないわけではありません。むしろ、歩くことにはダイエット以上に重要な効果があるのです。

私たちの身体は本来、長時間歩くことを前提に進化してきました。それにもかかわらず、社会はますます座りがちになり、デスクワークやオンライン中心の生活が増えています。その結果、身体を動かす機会が減り、慢性的な運動不足が健康に悪影響を及ぼすようになりました。

肥満や生活習慣病のリスクが高まるだけでなく、ストレスや不安感の増加、集中力の低下など、心身にさまざまな悪影響をもたらします。これからの時代、単に経済成長やテクノロジーの進化を追い求めるのではなく、人間本来の身体性を取り戻すことが求められています。働き方や生活習慣を見直し、身体を動かすことを意識的に取り入れることで、より健康的で充実した生活が送れるようになるでしょう。

人間の脳や体は、長い歴史の中で自然とともに生き、動くことでバランスを保ってきました。しかし、現代社会は効率や利便性を追求するあまり、私たちが体を動かす機会をどんどん減らしてしまいました。 これからの時代、テクノロジーや経済の発展を考える上で、「身体をどう使うか」という視点を無視することはできません。

健康で充実した毎日を送るためには、適度に体を動かし、自然に触れることが欠かせません。特に歩くことは、心身の健康にとってとても大切です。日常生活の中で意識的に歩く習慣を取り入れることで、幸福度を高めることができます。 実際、狩猟採集時代の人類は、生きるために歩き回ることで脳を発達させ、充実感を得ていました。

つまり、人間はもともと「歩くことで幸せを感じる」生き物なのです。私たちも日常の中で歩く時間を増やせば、より健やかで心地よい生活を送ることができるでしょう。

私自身も、毎日1万歩を歩くことを目標にしています。歩くことで頭がすっきりし、脳が活性化され、新しいアイデアが次々と浮かぶようになりました。さらに、自然の中を歩くことでストレスが和らぎ、気持ちが前向きになり、以前よりも幸福を感じる時間が増えました。歩くことは、単なる運動ではなく、心と体のバランスを整え、充実した毎日を送るための大切な習慣だと実感しています。

最強Appleフレームワーク


Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました