アマゾン化する未来 ベゾノミクスが世界を埋め尽くす
著者：ブライアン・デュメイン
出版社：ダイヤモンド社
本書の要約
ジェフ・ベゾスがアマゾンのCEOを退任しますが、彼はチームSとシャドー制度を早いタイミングから作り、後継者を育てていました。今回CEOになるアンディ・ジャシーはテクノロジーに関わったことがないにも関わらず、AWSを開発・運営し、アマゾンの利益の多くを生み出しています。
ジェフ・ベゾスがアマゾンのCEOを辞めた理由
私は今でもオフィスでタップダンスをしながら仕事をしていますが、この役割の交代はエキサイティングなものです。多くのお客様がアマゾンのサービスを利用しており、100万人以上の従業員が生活のためにアマゾンで働いています。アマゾンのCEOになるということは、大きな責任があり、消耗するものです。そのような責任を負っていると、他のことに注意を向けるのは難しい。（ジェフ・ベゾス）
遂にジェフ・ベゾスが、アマゾンのCEOを退任することを決めました。2021年の第3四半期にCEOを辞め、アンディ・ジャシーにその座を譲ることにしたのです。ジャシーは1997年にアマゾンに入社した古参で、現在は”Amazon Web Services”でCEOを務めています。
ベゾスは、近年はアマゾンの日常業務のほとんどから身を引き、ジャシー氏を含め代理を務める2人の幹部に権限を委譲していました。ベゾスはこの数年、アマゾンの戦略と自分が所有する宇宙旅行会社のブルー・オリジンに時間を費やしていたのです。
しかし、新型コロナウイルスのパンデミックによって、ベゾスはこの1年アマゾンでの業務に戻っていました。新型コロナウイルスで増加した大量のオーダーを捌くために、物流や労務問題などの課題を次々に解決していったのです。
その結果、アマゾンの業績はコロナ禍に関わらず、急成長します。アマゾンが2日に発表した第4四半期の決算では、売上高は過去最高となる1256億ドルを記録し、純利益は72億ドルと前年同期比2倍以上となりました。株価も堅調で、史上最高値を更新しています。この業績が絶頂期なタイミングで、アンディ・ジャシーが経営の舵取りを担うことを決めたのです。
ベゾスは引き続き、アマゾンの取締役会に残り、会長として様々な業務に当たると言います。
私は会長として、アマゾンの重要な取り組みに参加し続けますが、Day 1ファンド、ベゾス・アース・ファンド、ブルー・オリジン、ワシントン・ポスト、その他の仕事に集中するために必要な時間とエネルギーも得ることができます。これ以上の活力はありません。これは引退ではありません。私は、これらの組織がもたらすことができる影響力に情熱を注ぎます。
アマゾンの様々な課題は次期CEOのアンディ・ジャシーが担当し、ベゾスはより戦略的なことに時間を使うことで、アマゾンやロケット事業などを拡大させようとしています。世の中にインパクトを与える発明を今後も続けるために、ベゾスはアマゾンのCEOを退任したのです。
後任のCEOのアンディ・ジャシーとは誰か？
アマゾンの立ち上げ当初、ベゾスは数名の幹部を厳選して指導するようにしていたが、成果は思うように上がらなかった。指導を受けた人物の中には、会社を辞めてしまう者もいたのである。ベゾスの最初のシャドーになったのは、アンディ・ジャシーだった。彼はハーバード大学でMBAを取得していたが、何の技術的バックグラウンドも持っていなかった。（ブライアン・デュメイン）
アマゾン化する未来 ベゾノミクスが世界を埋め尽くす
シャドー制度を紹介しています。ベゾスの周りには、彼が「Ｓチーム」と呼ぶ18人の優秀な幹部がいます。彼らは長い間アマゾンで働いているリーダーで、ベゾスの考え方や価値観を理解しています。この幹部たちの離職率は低くベゾスに忠誠を誓っていると言います。
今回、CEOになるアンディ・ジャシーも2003年から04年にかけてベゾスのシャドーを務めていました。彼はテクノロジーのバックグラウンドを持たないにも関わらず、世界最大のクラウドサービス事業であるAWSの立ち上げに貢献し、現在はその運営を担当しています。アマゾンの利益の多くをこのAWSが生み出していることを考えれば、ジャシーの貢献度がわかるはずです。ベゾスはSチームとシャドー制によって周到な準備を行い、ジャシーを後継者に指名しました。
ジェフ・ベゾスは社員への書簡の中で、次期CEOに対して全幅の信頼を寄せていると述べています。
この第3四半期に私がアマゾンの会長に就任し、アンディ・ジャシーがCEOに就任すると発表できることをうれしく思います。会長としては、新製品と初期段階にある取り組みにエネルギーを注ぐつもりです。 アンディは社内でよく知られており、私とほぼ同じくらいアマゾンにいます。 彼は卓越したリーダーになるでしょう。私は彼に全幅の信頼を寄せています。
テクノロジーに関わることはアマゾンの文化になり、技術顧問プログラムを通じて優秀な幹部を輩出してきました。2020年現在ベゾスのシャドーを務めているのは、中国出身の女性ソフトウエア開発者のウェイ・ガオです。世界全体のEコマース事業を統括し、アマゾンで2番目の権力者と言われるジェフ・ウィルクも中国系のユンイェン・ワンという女性のシャドーを採用しています。
アマゾンはダイバシティ経営いう意味でも、新たな取り組みをしています。男性が圧倒的に強いテクノロジー業界を女性さどーの力で、アマゾンは変えていこうとしているのです。
長年、ベゾスの側で経営を学び、1からAWSを立ち上げ、成功させたアンディ・ジャシー。彼が今後もアマゾンの文化を維持し、発明を続けることができれば、アマゾンは安泰なはずです。
ジェフ・ベゾスの言葉はこちらの書簡全文から引用しています。
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