「顧客愛」というパーパス<NPS3.0>
フレッド・ライクヘルド、ダーシー・ダーネル、モーリーン・バーンズ
プレジデント社
本書の要約
パーパスに従って勝利するリーダーは、優れたチームメンバーを引き寄せ、刺激し、顧客の日々を明るくする行為を通じて、人生の目的を見つけられるよう支援します。チームが、顧客の生活を豊かにして感謝されて報酬を得ることができれば、パーパスにけん引された弾み車が持続可能な成長と経済的な繁栄を加速させてくれます。
顧客資本主義の時代
顧客を最も愛する企業が株主にも最高のリターンを提供しているという、説得力ある証拠を見出せるだろう。顧客を幸せにすることで、投資家も幸せにできる。ところが、逆の戦略は間違いなく失敗する。なぜなら、企業が投資家の利益を最優先にすると、顧客をないがしろにする行為を頻繁に行うようになるからだ。(フレッド・ライクヘルド)
現代は、顧客資本主義の時代に入ったと著者は指摘します。ネットプロモーター経営システムの考案者であり、 ベイン・アンド・カンパニーのロイヤリティ事業の創設者のフレッド・ライクヘルドは、顧客愛に基づいて成長を遂げる企業が実践するアクションを「NPS3.0」と定義します。
「最高の成長エンジンの燃料は顧客ロイヤルティである」という考えに基づくリーダーがいる企業が、顧客からの支持を得て成長します。
チームが顧客を正しく扱うことができなければ、企業はやがて失速します。顧客だけでなく、リーダーが仲間を大切に思う気持ちもつ会社の成長は加速します。自分たちの問題を解決し、しかめ面を笑顔に変えることができるチームを顧客は応援します。 強い企業はチームメンバーが顧客を大切に扱い、顧客からも愛されることで成長を勝ち取っているのです。
顧客は、自分が大事にされていると感じれば再び来店し、家族や仲間を連れてきてくれるます。NPS(ネット・プロモーター・スコア:推奨者の正味比率)が最も高い(つまり、顧客から最も愛されている)企業から人はモノやサービスを購入します。(NPSの関連記事はこちらから)
以前、 NPSの導入支援をしている会社のアドバイザーをしていましたが、このスコアが高い会社は従業員がイキイキと働き、売上のアップに貢献していまいた。NPSは売上や利益にもプラスの影響を及ぼします。
以下の会社のリーダーたちは、他のすべてのステークホルダーの利益よりも、顧客の利益を第一に考えるよう社員たちを刺激してきました。このようなNPSを意識した経営が、類い稀な優良企業を生み出します。
・Apple
・Amazon
・T-Mobile
・Enterprise Rent-A-Car
・Costco Wholesale Corporation
・Warby Parker
・Peloton
・Chewy
NPSをモニタリングすることで、各社の成長や衰退も予測できます。Amazonはあらゆる分野で競合他社とのNPS比較を定期的に行っています。しかも常に新規参入企業を比較対象に含めることで、自社をディスラプトするベンチャーやスタートアップをチェックしています。
しかし、このところAmazonのNPSスコアは年々下がっています。この流れを見るとAmazonの売上は今後ダウントレンドになる可能性があると著者は指摘します。
ビジネスが長期的に繁栄し、あらゆるステークホルダーに利益を与えるパーパスだ。そして、それはたった一つしかない。「顧客の生活を豊かにすること」。これだ。
NPSを使うことで、企業は顧客のパーパスに対する達成度合いを測定できます。NPSが高い会社は顧客第一というパーパスを実現しているのです。
働きがいのある会社とは給与や福利厚生が充実しているだけでなく、従業員が顧客のために素晴らしいことを実現し、意義や目的のある人生を歩むことのできる会社です。意義あるパーパスを実現するために、真剣に働く人をより多く集めることで、企業は成長できるようになります。
しかし、残念ながら、自社の主なパーパスを顧客の生活を豊かにすることと考えているビジネスリーダーは、わずか10%しかいません。逆にNPSを意識した経営を行うこと、残り90%のリーダーになることで、競合への優位性を発揮できます。
顧客は自分の生活が本当に豊かになったと実感したときには、自分の愛する人たちにもその経験をしてほしいと考え、あなたの会社を友人や家族に推奨するということだ。この一事だけでも、あなたが自分のネット・プロモーターとしてのパーパスを達成したかどうかを明らかにするのに役立つだろう。
著者は顧客資本主義を実践している企業、つまり顧客の利益を第一に考える企業が、持続的な偉大さを達成する可能性が最も高いと考えています。顧客に「自分は愛されている」と感じさせる企業が競合他社を凌駕し、大きく成長していることを見れば、NPSを高める意義がわかるはずです。
ネット・プロモーターマニフェスト宣言が会社を強くする理由
NPS3.0を構成する基本的な考え方と中核的な要素である「ネット・プロモーター(顧客資本主義)宣言〔マニフェスト〕」を紹介します。
■ネット・プロモーター(顧客資本主義)宣言
人々が充実した、素晴らしい生活を送れれば、世の中は良くなる。偉大な企業はその支援を行う存在であり、偉大なリーダーはそうしたコミュニティを構築し、維持する。すなわち、単に満足のいくサービスを提供するだけでなく、創造性にあふれた、思いやりのある、心のこもったサービスを通じて顧客に喜びを与え、顧客の生活を豊 かにするサービスを提供する。その結果として、チームメンバー自身も意義と目的のある生活を送れるよう、彼らの背中を押す。偉大なコミュニティを形作るのは人間関係であり、その基礎となるのは「自分の愛する人にしてもらいたいように他の人にしてあげなさい」、もっと純粋な言い方をすれば「己の如く、汝の隣人を愛せよ」という原則である。この黄金律は、人間関係における最高水準の基準を確立する。企業がコミュニティのメンバー全員が従うべき方針や手順、文化、規則を作成し、黄金律に則った正しい行動を取れるようになると、ロイヤルティという言葉に値する人間関係の基盤ができあがる。企業が愛のある対応で顧客をもてなすことで、顧客ロイヤルティが向上する。それは、顧客が再び来店したり、友人たちを連れてきたり、より良い関係を築こうと 貴重なフィードバックを提供したりといった行為に現れる。こうして、愛がロイヤルティを生み、それが持続的で利益ある成長の原動力となって、会社、チーム、チームメンバー一人ひとりに栄光への道を照らし出す。黄金律の基準を最も忠実に順守するコミュニティは、このシステムによって経済的繁栄を享受するのである。したがって、偉大さを目指すすべての組織の第一のミッションは、顧客の生活を持続的に豊かにすることを第一のパーパスとし、メンバー全員が黄金律に従って扱われる(そして、黄金律を守る責任を負う)コミュニティの構築であるべきだ。リーダーは、このミッションを果たすために次のことをしなければならない。
●第一のパーパスを受け入れる
リーダーは、顧客の生活を豊かにすることが組織にとって最も重要、すなわち第一のパーパスであることを明確にすべきです。
●愛をもって導く
リーダーの第一の任務は部下を大切にすることです。チームを鼓舞して顧客第一主義を徹底させ、そのために十分な時間、教育、資源を割り当て、チームの成功を実現させなければなりません。
●チームを鼓舞する
チームメンバーは、顧客の生活を豊かにするというミッションにやりがいを感じ、黄金律に反する方針や行動を根絶しなければなりません。
●NPSを適切に算出するための環境を整える
●絶え間ない学びを育む
●プロモーター獲得成長の経済性を定量化する
●「感動」を定期的に再定義する
リーダーと各チームは、「自分が愛されている」と顧客一人ひとりに感じてもらうためには、どれだけの進歩とイノベーションが必要かを謙虚に認識しなければなりません。リーダーは、期待を超えた製品や体験で顧客に喜びを与えるための新たな方法を常に考案する努力を怠たらないようにします。どのメンバーも顧客が再び来店して友人を紹介してくれるほどの体験をつくり出すやる気と責任を感じるべきです。
パーパスに従って勝利するリーダーは、優れたチームメンバーを引き寄せ、刺激し、顧客の日々を明るくする行為を通じて、人生の目的を見つけられるよう支援する。従業員と彼らのチームが、顧客の生活を豊かにして感謝されて報酬を得ることができれば、パーパスにけん引された弾み車が持続可能な成長と経済的な繁栄を加速させるのである。
顧客の生活を豊かにするために、驚異的な製品、サービス、体験を提供し、従業員の生活に意義と目的を与えることをリーダーは目指しましょう。リーダーが、顧客の生活を豊かにする立場に従業員を置くことを会社の第一のパーパスとするとき、従業員は会社の志とチームの志を一致させ、組織を成長させてくれます。
NPSを正しく設計して導入すれば、NPSは組織の「ネット・パーパス・スコア」になり、自社のパーパスの達成に向けた進捗度合いを測ることができるのです。本書のIntuitや Apple Amazonなどのケーススタディを学ぶことで、NPS3.0の素晴らしさを実感できます。
コメント