2080年への未来地図(川口伸明)の書評

 

person kneeling inside building

2080年への未来地図
川口伸明
技術評論社

2080年への未来地図(川口伸明)の要約

2080年の未来では、デジタル技術の進化と超長寿化によって、人々は従来のライフサイクルにとらわれず、自己啓発や新たな興味を追求することができるようになります。その結果、個々の人生の充実度が高まり、社会全体の文化的・知的な豊かさが増すことが期待されます。

2080年のメタバースとは?

メタバースは、リアルワールドと連携することに本質的価値があると思います。特に、メタバースと生成AIの連携で「言葉で表現できるものは形になる」未来が到来すると言えるでしょう。(川口伸明)

川口伸明氏は、AIとテクノロジーの進化が私たちの社会にもたらす変革について深く考察し、その可能性と課題を明らかにしています。この本は、未来に向けた希望や不安を共有し、共に考えるための重要な資料であり、読者にとって未来を見据えた行動を促す重要な一冊となるでしょう。私たちは、この未来地図を参考に、より良い未来を築くための具体的なステップを見出し、行動することが求められています。

現代のロボティクスと人工知能の進化により、私たちは新たな時代の扉を開きつつあります。その中でも特に注目されているのが、仮想現実(VR)を活用したロボット脳の訓練技術です。これは、人型の視覚運動能力を持つ工作ロボット脳を深層学習によって訓練し、ロボットに高速で視覚・運動タスクを習得させることを可能にします。

現実空間でロボットが実践的な学習を行うには、準備や教材の入れ替えに膨大な時間とコストがかかります。しかし、VR環境を利用することで、これらの制約を大幅に軽減し、加速学習が可能となります。具体的には、人間が何年もかけて習得する技術や知識を、ロボットが数日から数週間で学ぶことができるのです。

映画『マトリックス』に登場するネオが、シミュレーターの中で数時間かけてカンフーを習得したように、VRを通じてロボットも高速で複雑なタスクを学びます。この技術を「ネオドロイド」と呼び、仮想現実での学習と現実への導入という二段階の学習プロセスがその本質です。 

ネオドロイドの学習プロセスは大きく二つの段階に分けられます。まずは仮想現実での学習段階です。 Baby段階 最初の「baby」段階では、ロボットは環境支援学習を行います。この段階では基本的な視覚運動スキルや環境認識能力を養います。ロボットは仮想現実内で簡単なタスクを繰り返し学習し、基礎的な能力を身につけます。

次に進むのは「school」段階です。この段階では、より複雑なタスクを教えるために、人間が仮想現実に入り、直接ロボットに教示します。例えば、工場での組み立て作業や、医療現場での手術支援といった高度な作業をロボットが習得します。仮想現実内でのシミュレーションにより、現実では困難な状況やリスクの高い作業も安全に練習することが可能です。

実世界での適用 「school」段階が完了した後、ロボット脳は仮想から現実世界に移行します。ここで、仮想現実で学んだ視覚運動スキルを実際のタスクに適用します。このプロセスにより、ロボットは実世界での作業効率を飛躍的に向上させることができます。 

ネオドロイドの技術は、製造業、医療、サービス業など多岐にわたる分野での応用が期待されています。工場ではロボットが短期間で新しい生産ラインに適応し、医療現場では高度な手術支援ロボットが迅速に訓練を受け、実践に投入される日が近づいています。 このような技術の進展は、単にロボットの性能向上だけでなく、人間とロボットの協働を深化させ、新たな価値創出の可能性を広げるものです。私たちの生活や仕事のスタイルがどのように変わるのか、今後の展開に目が離せません。

現代のテクノロジーは日々進化を遂げ、私たちの生活を劇的に変えつつあります。特に注目されるのが、仮想世界(VR)、ミラーワールド(デジタルツイン、3Dホログラムなど)、拡張現実(AR、MR、テレイグジスタンスなど)、そしてライフロギング(ライフヒストリーの記録・報告)という四つの技術領域です。これらの技術は、私たちの生活や経済活動、エンターテインメント、医療サービスなど多岐にわたる分野に大きな影響を与える可能性があります。 

メタバース上でのショッピングやエンターテインメントはもちろん、医療サービスや行政サービス、さらに事業開発投資や研究開発投資など、さまざまな経済活動が活発化する可能性があります。メタバースは、現実世界と仮想世界の垣根を取り払い、新たなビジネスチャンスを創出する場となるでしょう。

こうした経済活動の中で注目されているのが、ステーブルコイン(Stable Coin)です。ステーブルコインは、円やドルなどの法定通貨や金、プラチナなどのコモディティと連動(ペッグ)して価値が安定するように設計されたデジタル通貨です。この安定性により、メタバース内での取引や決済がより安全かつ効率的に行えるようになります。

ミック・ジャガーのようなアーティストも、技術の進歩に興味津々です。彼は、「今なら死後ビジネスができるだろう? 死後ツアーだってできる」と語り、自身やメンバーが旅立った後でも音楽活動を続けられる手段として肯定的な意見を述べています。優れた音楽の演奏は映像や録音のディスクとして残りますが、没入的な環境でライブ体験ができれば、観客はより深い感動を味わうことができます。

乗用車の未来像もまた、驚くべき変化を遂げるでしょう。自動運転車椅子をベースとしたパーソナルモビリティが家具や家の一部として日常的に使用され、移動する際には家の一部が動くというコンセプトが現実のものとなるかもしれません。さらに、無人運転でピザ窯などが自動でホームパーティにやってきて、終了後には自動で帰るという「人の移動から機能・サービスの移動へ」という考え方も広がるでしょう。 

行政サービスも、テクノロジーの進化により大きく変わる可能性があります。現在、一部の行政サービスはコンビニで提供されていますが、将来的にはチャット機能を持った行政サービスカーが限界集落や独居高齢者宅を巡回することも考えられます。こうしたサービスは、見守りの一環として大きな役割を果たすでしょう。 また、大規模なトラック輸送においては、夜間の隊列走行が検討されていますが、大型トラックもAIエージェント化することで安全性の向上が見込まれます。

空飛ぶタクシーなども技術的な実現は2030年代には可能とされていますが、交通法規の整備が鍵となるでしょう。 実際、中国の深圳の動画を見ると、空飛ぶ自動車が実証段階にあることがわかります。

環境サステナビリティとネイチャーポジティブ 現代社会では「地球沸騰化」という言葉が聞かれるようになり、環境のサステナビリティを実現するための取り組みが求められています。

カーボンニュートラルの次の目標として、生態系を守り、生物多様性を豊かにする「ネイチャーポジティブ」という概念が掲げられています。 脱炭素を進める枠組みとしてのTCFDに次いで、生物多様性を守るためのTNFDや、欧州ではCSR(企業の社会的責任)指令が定められ、法整備も進みつつあります。経済活動を行ううえで、脱炭素や生態系の保護保全は当たり前の要件となりつつあるのです。

未来の各国の勢力地図

ゴールドマン・サックスの予測によると、2075年の世界経済は大きな変動を迎えます。以下は、2075年の予想されるGDPランキングです。

1、中国
2、インド
3、米国
4、インドネシア
5、ナイジェリア
6、パキスタン
7、エジプト
8、ブラジル
9、ドイツ
10、英国
メキシコは11位、日本は12位となり、その後はロシア、フィリピン、フランスが続きます。このランキングは、現在の主要経済国の地位に大きな変化をもたらしますが、それにはいくつかの背景があります。

まず、重要なポイントは世界的な人口増加の鈍化と、グローバリゼーションの減速です。これにより、生産性の伸びが鈍化し、世界経済は低迷すると予想されています。具体的には、成長予測は2024年から2029年まで平均2.8%とされていますが、それ以降は人口動態の変化に伴い低下する見込みです。

・アフリカ勢の台頭
ゴールドマン・サックスの予測では、2075年の世界5位にナイジェリア、7位にエジプトがランクインしています。これはアフリカの経済力が今後大きく成長することを示唆しています。実際、2080年以降にはアフリカ諸国のさらなる伸びが期待されており、これが世界経済に大きな影響を与える可能性があります。

・世界人口の減少と経済成長の限界
しかし、2080年以降は世界人口が減少に転じ、地球全体が「人口オーナス(demographic onus)」期に入るとされています。これは、生産年齢人口の割合が減少し、経済成長に大きな制約をもたらす状況です。生産年齢人口の割合はGDPに強く連動するため、現在の経済システムのままでは持続的な成長を続けることは難しいと考えられます。

デジタル時代の進展に伴い、私たちの生活は急速に変化しています。このような状況の中で、アダ・クラウは未来のデジタル社会に向けた包括的なビジョンを提案しています。彼女のビジョンは、デジタル主権、デジタルイノベーション、デジタルエンパワーメント、そしてデジタルコモンズという4つの柱から成り立っています。これらの柱を中心に、市民の権利を守り、社会全体の利益を追求するデジタル社会の実現を目指しています。

1. デジタル主権
デジタル主権は、市民のデータやプライバシーを守り、個々の市民がデータの所有権と利用権を持つことを重視する考え方です。今日、私たちの生活の多くはデジタルデータによって支えられています。ソーシャルメディア、オンラインショッピング、スマートデバイスの利用など、私たちの日常生活のあらゆる側面がデータ化されています。

しかし、これらのデータがどのように扱われているのか、多くの市民は十分に理解していないことが多いです。 アダ・クラウは、市民が自分のデータに対する完全なコントロールを持つことができる社会を目指しています。これには、データの収集、保存、利用の透明性を確保し、市民が自分のデータをどのように使うかを決定できる権利を持つことが含まれます。これにより、市民は安心してデジタルサービスを利用できるようになります。

2. デジタルイノベーション
デジタルイノベーションは、市民や社会的経済的な多様性を尊重し、公共の利益に貢献するようなイノベーションを促進することを目的としています。技術の進歩は、私たちの生活をより便利で豊かにする可能性を秘めていますが、その恩恵がすべての人々に行き渡るようにすることが重要です。

アダ・クラウは、多様性を尊重し、包括的なイノベーションを推進することを強調しています。これには、社会的に弱い立場にある人々への支援や、持続可能な技術の開発が含まれます。公共の利益に貢献するイノベーションは、単なる技術的な進歩だけでなく、社会全体の福祉向上を目指すものです。

3. デジタルエンパワーメント
デジタルエンパワーメントは、市民にデジタルスキルやリテラシーを提供し、デジタル社会に参加できる能力を高めることを目指しています。デジタル技術の進化は急速ですが、それに伴うスキルや知識の習得が追いついていない場合も多いです。 アダ・クラウは、市民がデジタル社会で活躍できるようにするための教育やトレーニングプログラムを推進しています。

これにより、すべての市民がデジタル技術を使いこなし、社会の一員として積極的に参加できるようになります。また、デジタルリテラシーの向上は、偽情報やサイバー犯罪から自分を守るためにも重要です。

4. デジタルコモンズ
デジタルコモンズは、市民が共有し、協働し、創造できるようなオープンで参加的なデジタル空間を作ることを目指しています。インターネットは情報と知識の宝庫ですが、その利用方法次第で大きな力を発揮します。 アダ・クラウは、オープンなプラットフォームやコミュニティの形成を支援しています。

市民は知識やリソースを共有し、新たなアイデアやプロジェクトを共同で進めることができます。このようなデジタルコモンズは、創造性を促進し、社会のイノベーションを加速させる原動力となります。 

デジタル化が進む中で、「余白時間」を取り戻すことの重要性も指摘しています。常にデジタルデバイスに接続されていると、私たちの時間は絶え間なく消費され、ストレスや過労の原因となります。余白時間は、自己反省や創造的な思考、リラクゼーションのための時間です。

今後はデジタルデトックスの必要性が高まり、個々の市民がバランスの取れた生活を送ることが欠かせなくなります。」これには、デジタルデバイスの使用時間を制限し、自然とのふれあいや、家族や友人との直接的なコミュニケーションを増やすことが含まれます。

このような未来を見据え、各国は生産性の向上や技術革新を通じて新たな成長エンジンを見つける必要があります。また、人口減少に伴う社会保障や医療、年金制度の再構築も重要な課題です。さらに、環境問題や資源の持続可能性も無視できない要素となるでしょう。

2075年の世界経済は、現在の延長線上にあるだけではなく、多くの変革と適応が求められる時代となるでしょう。各国がどのようにこの変化に対応し、新たな成長戦略を描くかが、未来の世界経済の行方を左右することになります。

私たちの生活と仕事において、時間の使い方はますます重要な要素となっています。一人一人のタイムパフォーマンスを改善することで、ワークライフバランスとウェルビーイングを創出し、最終的には社会全体のパフォーマンス向上に寄与するという理解が広がっています。

タイムパフォーマンスの改善とは、効率的かつ効果的に時間を活用することです。これにより、個々の生活の質が向上し、ストレスの軽減や幸福感の増加が期待されます。さらに、このような個々の改善が積み重なることで、組織や社会全体の生産性や創造性が高まり、より健全で持続可能な社会の実現につながります。

デジタルな超長寿化と深遠なテーマへの関心 デジタル技術の進化と超長寿化により、人間はより深遠なテーマや好奇心を追求するようになるかもしれません。長寿化が進む社会では、従来のライフサイクルにとらわれず、自己啓発や新たな興味の追求が可能となります。これにより、個々の人生の充実度が高まり、社会全体の文化的・知的な豊かさが増すことが期待されます。

人間にとって、時間は自分と周囲の環境をどう認識するか、つまり世界モデルを構築し、自己を定位するために必須の要素です。このプロセスに関与する脳内メカニズムについての理解も進んできました。特に、脳の海馬や扁桃体だけでなく、心拍も時間認識において重要な役割を果たします。

脳の創造性ネットワークと挑戦性ネットワークもまた、時間の認識と関連しています。これらのネットワークは、人類の進化において重要な役割を果たしてきた可能性があり、個々の挑戦心や創造性を高めることで、社会全体の進化と成長に貢献します。

物理的な時間もまた、一般相対性理論に従い、個々の物理的履歴により異なります。この多様な時間をいかに活用するかが、現代社会において問われています。個々の物理的・心理的な時間の違いを理解し、それに基づいて効率的に行動することで、より良い成果を得ることができます。 

現代社会では人類の未来のための意味と価値の創出が重要な課題となっています。タイムパフォーマンスの改善を通じて、個々の生活の質を高めるだけでなく、社会全体の持続可能な発展を追求することが求められています。

 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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