インパクト投資 社会を良くする資本主義を目指して (ロナルド・コーエン)の書評


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インパクト投資 社会を良くする資本主義を目指して
ロナルド・コーエン
日本経済新聞出版

 

本書の要約

世の中にはたくさんの問題が存在していますが、それを解決するためには投資が必要になります。そこから魅力的なリターンが生まれることで、優秀な人たちと資金を引き寄せられるようになります。ベンチャー・キャピタリストのロナルド・コーエンは、やがてすべての投資がインパクト投資になると指摘します。

インパクト投資とは何か?

Impact Investment(インパクト投資)経済的リターンとともに、社会的・環境的なプラスの成果を達成することを強く意図する投資インパクト投資は2つの点でESG投資に勝る。第一に、たんにマイナスのインパクトを回避するのみならず、プラスのインパクトを生み出す点。第二に、生み出したインパクトを測定する点。(ロナルド・コーエン)

ESGをテーマにしたファンドが増えていますが、最近ではインパクト投資も話題になっています。インパクト投資によって、人類の経済システムは生まれ変わり、社会・環境に誠実であろうとする企業への投資が促進されます。自社の利益を追求する企業よりも社会に貢献する会社が評価されるようになってきました。社会的、環境的にプラスになる会社や組織に投資を行うインパクト投資によって、私たちの社会はより豊かになっていくのです。

インパクト投資は連鎖反応を引き起こし、投資家、慈善家、起業家、ビジネス・リーダー、政府の重要な立場で働く者、社会部門に働く立場の人たちの行動を大きく変え、イノベーションを起こします。

若い起業家はインパクト目的の事業を新たに作り出し、消費者に役立つようにし、人々の生活を改善し、地球を守ろうとしている。IT革命と同様、この動きを引っ張っているのは、野心に燃える若い起業家だ。

世の中にはたくさんの問題が存在していますが、それを解決するためには投資が必要になります。そこから魅力的なリターンが生まれることで、優秀な人たちと資金を引き寄せられるようになります。社会イノベーターであり、ベンチャー・キャピタリストのロナルド・コーエンは、やがてすべての投資がインパクト投資になると指摘します。

インパクト投資は世の中に大きなインパクトを与えるだけでなく、生み出したインパクトを測定します。ここがESG投資とは異なるポイントになります。今日、もっとも知られるインパクト起業家は、イーロン・マスクですが、テスラの直近のインパクト報告書によると、同社は55万台を上回る電気自動車を販売しています。テスラのEVカーは100億マイル以上の距離を運転した計算になりますが、それは内燃エンジン搭載車と比較して、二酸化炭素排出量を400万トン以上減らした計算になります。通常1トンあたり300ドルの環境費用とされていますから、テスラは12億ドル分の環境破壊を回避したことになります。

マスクとテスラの事例は、空気の質を改善し、化石燃料への依存度を減らそうとする新世代の起業家を刺激しています。「二輪車のテスラ」と呼ばれるインドの電動スクーターメーカー、アザー・エナジーのようなスタートアップ企業から、何十億ドルもの資本に裏付けられた10社以上の中国の自動車開発会社まで、世界は化石燃料を燃焼させるエンジンを抑えて、電池によって移動する方向に移っています。テスラの小さな一歩が世界の起業家を動かし、インパクト投資を盛んにしたのです。

インパクト投資が世の中をよりよくする!

インパクトは成功を助ける。優れた人材は利益をあげるだけでなく、社会のためになる会社に魅力を感じるから、最高の人材を採用できる。最高のスタートアップ企業は、重要な課題を解決する企業だ。才能あふれるチームを引き付け、素晴らしいミッションの実現のために彼らを一丸にさせるからだ。そして、インパクト投資が勢いを増すと、投資家のほうから追いかけてくるようになる。

テクノロジーカンパニーはシリコンバレーやシアトルなどの都市から生まれますが、インパクト起業家は場所を選びません、取り組むべき社会・環境の大きな問題があれば、世界中のどこでもビジネスが生まれます。起業家のビジネスが素晴らしければ、生活者が反応し、やがて投資家がその動きをトレースします。生活者と投資家の行動が変化することで、一般企業も社会貢献を意識するようになります。

リスク・リターン・インパクトの最適化に努めて、起業家や企業は新たな商品とサービスを作り、私たちの生活と地球を改善しようとします。真のインパクト経済に移行することは、経済の仕組みを根本から変えることになり、生活者や企業だけでなく、政府も行動を変える必要があります。

民間企業はイノベーションで新たな解決策を作り出し、政府は大きな問題対処に新たな方法を活用しなければなりません。

私たちは資本主義を再構築して、すべての人がさらなる繁栄と社会進歩を享受するように、何十億もの人々に経済的機会が行き渡るようにし、不平等を減らし、将来の世代のために地球を守らなければならない。インパクト投資は、利益と同じくらい社会・環境インパクトの価値を大切にする世界を築くために、資本主義体制の再構築に必要な連鎖反応を引き起こす。そしてプラスのインパクトを作り出そうとしても、利益は犠牲にならないという確証を示す。それどころか、インパクトは収益率を高める一助となる。インパクトを強く意識する企業のほうが消費者に、有能な社員に、そして投資家にとってもっと魅力的だから、成功の確率がもっと高くなるということだ。

消費者、社員、起業家、投資家それぞれの立場で、プラスのインパクトを作り出そうとする気持ちはを持つことで、世の中をよりよくできます。ダメージを最小限にとどめるだけでなく、何かよいことをしようと努力する世界を生み出そうとする力が世の中にインパクトを与え、それを波及させていきます。インパクト起業家がしっかりと利益を得ることで、その動きが加速していきます。

利己的資本主義に別れを告げ、利益一辺倒の考えを崩し、社会に貢献しようとする起業家を応援しましょう。起業家、生活者、投資家、政府が変わることで、世の中を今よりよくできるのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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