瞬考 メカニズムを捉え、仮説を一瞬ではじき出す
山川隆義
かんき出版
本書の要約
新しいプラットフォームに初期に参入した企業は、後になって大きなメリットを得ることが可能です。初期参入者は市場を開拓し、経験を積むことができるため、規模の経済性やエクスペリエンス・カーブの恩恵を享受することができます。これにより、彼らはライバルよりも優位な立場を築くことができます。
未来から逆算し、新たなプラットフォームへ移行しよう!
直前のプラットフォームでの勝者が、次のプラットフォームで勝つことは非常に難しい。前のプラットフォームで成功していると、新たなプラットフォームへの移行に躊躇してしまうのだ。そうしているうちに、新たなプラットフォームにおける先行プレイヤーは、規模を拡大し、累積経験を増やし、規模の経済性とエクスペリエンス・カーブの恩恵を受けることとなる。そうなると、さらに差は拡大する。(山川隆義)
現代のビジネスは、技術の進歩によって大きく変化しています。新しい技術の登場によって、かつては主要な市場を支配していた企業が一気に転落することがあたり前の時代になりました。また、デジタル技術によって新たなプラットフォームが生まれ、それに対応するためには柔軟な思考力と長期的な視点が求められます。
さらに、近年ではAI技術の発展が進み、ビジネスにおいても大きな変化をもたらしています。例えば、生成AIのChat GPTの登場によって、グーグルの優位性が揺らぎ始め、Chat GPTに出資したマイクロソフトが再び脚光を浴びるようになっています。 このような状況の中で、現代の経営者に求められるのは、長期的な視点で戦略を立て、多様なシナリオを想定し、柔軟な対応力を身につけることです。
デジタル技術の発展によって、業界全体が大きく変化することが予想され、企業は積極的に新たな技術を取り入れることが求められます。ビジネスの成功には、時代のトレンドを読み解き、技術革新に対応する力が不可欠です。
直前のプラットフォームでの成功者が、次のプラットフォームで同じ成功を収めることは非常に難しいと言われています。成功を収めた企業や個人は、前のプラットフォームでの成功によって安定感や信頼を得ることができます。そのため、新たなプラットフォームへの移行には躊躇する傾向があります。
後追いで参入する場合、既に周回遅れ以上の差がある場合は、どれだけ投資しても簡単には追いつくことができないと言われています。遅れて参入すると、既存の競合他社やリーダー企業は既に市場の確立や顧客の獲得に成功しており、規模や経験の面で優位に立っています。
後発企業が追いつくためには、革新的なアプローチや差別化戦略を持つことが重要です。既存のプレーヤーとの直接的な競争ではなく、未来からバックキャステイングを行い、新たな需要や市場ニーズを見つけることで競争優位性を確保することが求められます。また、迅速な意思決定や柔軟な組織体制も成功の鍵となります。
新たなプラットフォームにおける早期参入者は、その後の成長において大きな利点を享受することができます。早期参入者は規模を拡大し、経験を積むことができるため、規模の経済性やエクスペリエンス・カーブの恩恵を得ることができます。これにより、彼らは競争相手に比べてさらに強力な立場を築くことができます。
したがって、プラットフォームの移行においては、成功した企業や個人が過去の成功にしがみつくのではなく、新たなプラットフォームへの早期参入を検討する必要があります。早期参入によって得られる競争上の利点や成長の機会は非常に大きいです。競争が進むにつれて差が拡大する可能性もあるため、リスクを取りながらも新たなプラットフォームへの挑戦を積極的に行うことが重要です。
エクスペリエンス・カーブの恩恵を享受する方法
エクスペリエンス・カーブは、製品やサービスの生産や提供を繰り返す中で得られる経験と学習に基づく効果を指します。企業が生産や提供を行ううちに、生産効率が向上し、コストが削減されるという理論です。 エクスペリエンス・カーブによる恩恵は、以下のような要素から生まれます。
・生産プロセスの最適化: 繰り返しの生産や提供を通じて、企業は効率的な生産プロセスを確立することができます。作業者や従業員は経験を積むことでスキルを向上させ、タスクをより効率的に実行できるようになります。これにより、時間やコストを節約することができます。
・供給ネットワークの強化: エクスペリエンス・カーブの進行により、企業はサプライチェーンや供給ネットワークをより効果的に構築することができます。生産や物流のプロセスを最適化し、コストを削減することで競争力を高めることができます。
・技術革新と学習: 継続的な生産や提供を通じて、企業は新たな技術やベストプラクティスを開発・導入する機会を得ることができます。経験に基づく学習と改善を重ねることで、製品やサービスの品質や効率が向上し、競争上の優位性を獲得できます。
エクスペリエンス・カーブの恩恵を享受することで、企業はより効率的で競争力のあるプロセスを確立し、コスト削減や品質向上などの利点を得ることができます。これにより、企業は新たなプラットフォームでの成長や規模の拡大において、より強力な立場を築くことができるでようになります。
インターネット配信サービスは、ネットフリックスやアマゾン・プライム・ビデオなどが立ち上がりましたが、後追いで立ち上げてもキャッチアップは難しいとされています。実際、追いつくには莫大な投資が必要です。ただし、アマゾンやディズニーのような巨大な資金力を持っていれば、その資金を使って追いつくことも可能でしょう。
既存のキャッシュカウの事業から新規事業への投資を行うべきですが、既存のメンバーが反対する場合が多く、経営者は決断を迫られます。
時間とともにトッププレイヤーとの差が開き、キャッシュが流出する状況では、組織内の緊張感が高まります。このような状況では、強力なリーダーシップが不可欠です。リーダーシップが強くなければ、継続することは非常に困難です。
このような状況では、次のプラットフォームを見越して賭けることを検討することは重要です。新たなプラットフォームが出現するかどうかは不確実ですが、既に差が開いている分野で負け戦を続けるよりも、まだ未確定な分野でゼロから勝負する方が成功の可能性が高いかもしれません。
同様に、現在のインターネット動画配信プラットフォームでの競争に参加するよりも、将来のプラットフォームを見据えて賭けることがチャンスを生む可能性があります。
勝利の保証はありませんが、負け戦を続けるよりも新たな可能性を追求することは有益です。 結局のところ、変化の激しいビジネス環境では、リーダーシップの強さや戦略的な視点が重要です。組織は柔軟でイノベーションに対応できる体制を整え、未来のプラットフォームや市場の変化に敏感に対応することが求められます。
新規事業において、パーパスが重要な理由
経営者が未来を予測し、バックキャスティングを行うことで、新規事業や成長の可能性を見つけることができます。バックキャスティングは、未来の状況や目標を想定し、現在から逆算して必要な戦略やアクションを見出す手法です。 経営者がバックキャスティングを行うことで、以下のような利点があります。
・パーパスの見直し
バックキャスティングは、組織のパーパスを見直す良い機会です。経営者は、将来の社会や市場の変化を予測し、それに対応するために組織のパーパスを再評価することができます。新たなパーパスを明確にすることで、組織の方向性やビジョンを再定義し、新規事業や成長のための意義ある目標を見出すことができます。
・新規事業の発掘
バックキャスティングは、未来の需要や市場のトレンドを予測する上で有用です。経営者は、顧客のニーズや社会の変化に敏感に対応し、新たなビジネスアイデアや事業機会を発掘することができます。バックキャスティングによって、未来の需要に合致する新しい製品やサービス、ビジネスモデルを開発することが可能となります。
・リスク管理と戦略の立案
バックキャスティングは、経営者にとってリスク管理や戦略の立案に役立ちます。将来の環境を予測し、それに伴うリスクや課題を洗い出し、対策や戦略を考えることができます。経営者は、現在のビジネスモデルや競争力の評価を行い、変化に適応するための戦略的な意思決定を行うことができるようになります。
バックキャスティングを通じて、経営者は未来の可能性を見つけ、組織のパーパスや戦略を再構築することができます。将来の変化に適応し、持続的な成長を達成するためには、経営者のリーダーシップとビジョンが不可欠です。
経営者はバックキャスティングを通じて見出した新たなビジネスの可能性を探求し、実現するための戦略を策定して実行に移す役割を果たします。柔軟性とイノベーションへの取り組み、リスク管理と変化への適応能力が求められます。
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