体験格差 (今井悠介)の書評

bonfire on ground

体験格差
今井悠介
講談社

体験格差 (今井悠介)の要約

貧困層の増加に伴い、子どもたちの間で体験の格差が拡大しています。多様な体験をすることは、子どもたちの世界観を広げ、将来の可能性を拡大させます。何も経験していないと、その事柄の魅力や可能性を理解するのが難しいため、多彩な体験の機会を提供することが子どもたちの想像力や選択肢を広げる上で重要です。

日本の子供の課題である体験格差とは何か?

私たち、日本社会で生きる大人たちの多くは、子どもたちにとっての「体験」の機会を、いまだ「必需品」だとは見なしていないのだろう。(今井悠介)

子どもたちの成長において、多様なスポーツや文化活動、休日の旅行などの体験は非常に重要ですが、現実には体験できる子どもとできない子どもの間に大きな格差が存在します。この格差は、経済的、地域的、教育的な条件によってさらに拡大することがあります。親の貧困が子供に連鎖し、子供が貧困から抜け出せなくなる可能性が高くなると著者の今井悠介氏(公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理)は指摘します。

子どもたちには新しい体験を通じて想像力を広げ、選択肢を増やす機会を提供すべきです。地域の施設や団体が子ども向けのイベントやプログラムを提供することや、教育機関と地域社会が連携して経済的負担を軽減する支援策を講じることが有効です。

子どもたちが多様な体験を通じて世界を広げることで、彼らの将来の可能性も広がります。何かを一度も経験していないと、その魅力や可能性を知ることは難しいため、子どもたちに多様な体験の機会を提供することは、彼らの想像力の幅や選択肢を広げるのに不可欠です。したがって、子どもたちの体験の機会を平等に提供する社会全体の取り組みが重要となります。

この社会で生きる大人たちが、「私の子ども」だけではなく、「すべての子ども」に対して、「体験」の機会を届けようとするかどうかにある。「体験格差」をなくそうという意思を、社会全体として持つかどうかにある。

現代社会において、子どもたちの成長において重要な要素となっているのが、豊かな体験の機会を提供することです。大人たちが自分の子どもだけでなく、「すべての子ども」に対してその機会を提供する姿勢が求められています。

年収300万円以下の低所得家庭の子どもたちは、体験の機会が不足していることが明らかになりました。過去1年間で体験の機会が一度もない子どもも多く、その割合は全体の約3分の1にも上ります。このような「体験格差」を解消するためには、社会全体での意識の改革が不可欠です。

特にシングルマザーなど、金銭的な負担だけでなく、子供の送迎や世話に時間的負担がかかる家庭では、体験格差が顕著になる傾向があります。例えば、経済的に余裕のある家庭では、子供がさまざまなスポーツや文化活動、旅行、キャンプなどの体験を積極的にすることができる一方で、経済的に苦しい家庭や時間的制約がある家庭では、そのような機会が限られてしまいます。その結果、子供たちの成長や教育において、格差が生まれてしまうのです。

具体的には、政策や支援プログラム、地域コミュニティの取り組みが重要です。全ての子どもたちが平等に文化的、教育的、そしてレクリエーションの体験を享受できる環境を整えることが、将来の社会を支えるために必要不可欠です。子どもたち一人一人が持つ潜在能力を最大限に引き出すことが、社会全体の発展につながる重要な要素となります。

体験格差を減らすためには?

この社会には、望んでいない「体験」をさせられる子どもたちもいれば、やってみたい「体験」があるのにできない子どもたちもいるのだ(させてあげたいのにさせてあげられない親たちも)。子どもたち一人ひとりに合った形で、一人ひとりが望む形で、放課後の時間を過ごすことができるべきだろう。

社会には、望んでいない「体験」をさせられる子どもたちもいれば、望む「体験」ができない子どもたちもいます。子どもたちが放課後の時間や休日を、それぞれの希望に合った形で過ごせるようにすることは大切です。

友達と遊ぶ時間、ぼーっと過ごす時間、習い事をする時間を、それぞれどのようなバランスで組み合わせるかは、その子どもの個性やニーズに応じて考えるべきです。大人たちは、自分たちの都合ではなく、子ども自身の視点を第一に考え、子どもの権利を重視しながら支援策を考えていく責任があります。

放課後の時間は、子どもたちが自由に選択できる貴重な時間です。友達との遊びを通じて社会性やコミュニケーション能力を育てる機会となり、自己表現や協力の大切さを学ぶ場です。

また、余白の時間は、自己を見つめ、心をリフレッシュするためにも重要です。習い事は、興味や才能を発見し、自己成長や達成感を得る手段となります。

しかし、体験格差の存在は一部の子どもたちに豊かな体験を提供する一方で、他の子どもたちが同様の機会を奪われている現実があります。特に低所得家庭の子どもたちは、習い事や家族旅行が贅沢な経験となりがちです。この格差は、経済的理由や地域の環境、教育機会の不均衡によって引き起こされます。

子どもたちの権利を尊重し、豊かな体験を平等に提供することは、社会全体の重要な課題です。大人たちは、子ども一人ひとりの個性や希望に合わせた支援を行い、彼らが健やかに成長し、自己実現を果たせるよう努力するべきです。子どもたちの幸福と成長を最優先に考え、体験格差を解消する取り組みが必要です。

著者は体幹格差を解消する5つの提言を行なっています。
①体験格差の実態調査を継続的に実施する。
②奨学金やクーポンを活用し、体験の費用を子どもに対して補助する。
③体験と子どもをつなぐ支援を広げる。(費用だけでなく、親の送迎などの時間の負担を軽減する。)
④体験の場で守るべき共通の指針を示す。
⑤体験の場となる公共施設を維持し活用する。

現代社会において、子どもたち全員に平等に「体験」の機会を提供することは大きな課題ですが、これまで学校が担ってきた役割を地域へと移行させる動きが進んでいます。人口減少社会ではリソースは限られるため、部活動の地域移行を含め、教育活動の一部が地域の組織や団体によって支えることが求められています。

子供たちが良い思い出を作ることで、彼らの未来がよりよくなります。そのために、地域全体で子どもたちが多様な体験をするための支援を拡充する必要があるのです。著者の「体験は決して贅沢品ではなく、必需品だ」という考え方に共感を覚えました。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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