LOVED 市場を形づくり製品を定着に導くプロダクトマーケティング(マルティナ・ラウチェンコ)の書評

multicolored wall decor

LOVED 市場を形づくり製品を定着に導くプロダクトマーケティング
マルティナ・ラウチェンコ
日本能率協会マネジメントセンター

本書の要約

プロダクトマーケティングの目指すところは、戦略的なマーケティング活動を通じてビジネスの目標達成を支援し、市場における製品の認知度を形成・強化し、製品の普及を推進することです同じような製品がたくさん存在する中で、自社の製品が他社との差別化を図るためには、優れたプロダクトマーケティングが必要です。

プロダクトマーケティングが重要な理由

競争が激化する今日の現実においては、成功するためには強いプロダクトと強いプロダクトマーケティング、その両方が必要なのだ。(マーティ・ケーガン)

市場競争の中で、最高の製品であっても負けてしまうことが珍しくありません。しかし、その「負け組」と「勝ち組」の間で勝負がつく要素は何なのでしょうか?

それは、より優れたプロダクトマーケティングを持っているかどうかです。製品をどのように売り込むか、どのように広めるかという戦略で優位に立てれば、競合に勝利できます。結果、市場のプロダクト評価が形づくられ、プロダクトのストーリーが語られるきっかけとなります。

例えば、ある製品が優れた性能を持っていても、それが消費者に伝わらなければ意味がありません。しかし、市場において優れたプロダクトマーケティングを行うことで、その製品の魅力をきちんと伝えることができます。広告や宣伝、販売戦略などを通じて、消費者に製品の魅力を伝えることができるのです。

また、良いプロダクトマーケティングは競争力を高めることにもつながります。同じような製品がたくさん存在する中で、自社の製品が他社との差別化を図るためには、優れたプロダクトマーケティングが必要です。消費者にとって自社の製品が他社と比べてどのように優れているのかを伝えることができれば、競争力を高めることができるのです。

プロダクトマーケティングの目的は、ビジネス目標を達成するための戦略的なマーケティング活動を通じて、市場のパーセプションを形成し、プロダクトの定着を促進することだ。(マルティナ・ラウチェンコ)

本書『LOVED』は、MicrosoftとNetscapeでプロダクトとマーケティングのリーダーとして活躍し、同時にカリフォルニア大学バークレー校の工学部大学院講師でもあるマルティナ・ラウチェンコによって、プロダクトマーケティングの方法が詳細に解説されています。

この本は、著者が数百もの企業とのコラボレーションを通じて得た教訓を基にしています。著者は「優れた企業におけるプロダクトマーケティングのやり方と、そうではないほとんどの企業でのやり方との間に、著しいコントラストがあることを学んだ」と言います。

プロダクトマーケティングとは、ビジネス目標を達成するための戦略的なマーケティング活動を通じて、市場のパーセプション(知覚)を形成し、プロダクトの定着(アダプション)を促進することを目的としています。

プロダクトマーケティングは、市場に向けたすべての活動につながる戦略的な意図とプロダクトのインサイトをもたらします。さらに、マーケティングチームと営業チームが成功するために必要な基礎的な活動を提供し、Go-to-Marketエンジン全体(マーケティングと営業)にまたがる勝つための計画をまとめ上げます。

プロダクトマーケティングの重要性は、良いプロダクトを作るだけではなく、市場牽引力を生み出すことにもあります。市場側に対しても一致団結した努力が必要です。具体的には、適切な市場を選定し、その市場にリーチする最善の方法を考える必要があります。また、プロダクトが信頼されるためには、誰が何を言うべきか、何をすべきかも重要です。

プロダクトマーケティングの成功には、市場への深い理解と継続的な市場調査が不可欠です。市場のトレンドや競合状況を把握し、プロダクトの戦略的な位置づけを行うことが重要です。さらに、効果的なマーケティング戦略を策定し、その実施と評価を行うことで、プロダクトの成功を確かなものにすることができます。

プロダクトマーケティングは、プロダクトチームと協力して市場での定着に良い影響を与える意思決定をすることも含まれています。市場や顧客の要求を分析し、プロダクトの機能を優先順位付けすることで、顧客満足度を向上させることができます。

さらに、競合他社の捉え方も変わるようなコンテンツの執筆もプロダクトマーケティングの重要な仕事です。競合他社との差別化やプロダクトの魅力を伝えるために、効果的なコンテンツを作成する必要があります。

世の中には多くの似通った機能を備えたプロダクトが存在し、同じような訴求をしていますが、その価値は単に価格だけで測れるものではありません。最近では企業と顧客との信頼関係や口コミなどが、消費者の意思決定に強い影響力を持つようになっています。

特にエンタープライズ向けソフトウェアなど、高額な投資を伴う製品では、顧客にとって意思決定が難しい状況が増えています。 現代の環境では、顧客は数多くのプロダクトの中から選ぶ際に迷うことがよくあります。

このような状況の中で、企業はGo-to-Marketエンジン全体を慎重に調整し、市場で明確なポジションを確立する必要があります。 プロダクトが人目につかずに埋もれてしまうと、競争力を持つことは難しいでしょう。

顧客にとって魅力的で信頼できるプロダクトであることを示すために、マーケティング戦略を練り、差別化を図ることが非常に重要です。顧客のニーズに合った情報を提供し、プロダクトの強みや利点を明確に伝えることで、顧客の心をつかむことができるでしょう。

さらに、信頼関係を築くためには、顧客とのコミュニケーションを大切にし、サポート体制を整えることも重要です。顧客の声を受け止め、フィードバックに対応することで、顧客の満足度を高めることができます。また、既存の顧客からの口コミや紹介を増やすことも、新規顧客の獲得につながります。 

プロダクトマーケティングの4つの基本

プロダクトマーケティングチームは、顧客とプロダクトと市場のインサイトをつなぐアンバサダーであり、そのインサイトはプロダクトのポジショニングにつながる優れたストーリーテリングを可能にした。そしてそのストーリーが、Go-to-Marketの構造のあらゆる部分で、さまざまな人々をエバンジェリストとするための活動やツールの基礎となった。

プロダクトマーケティングの基礎はたった4つの基本に集約され、そこからすべての重要な仕事へと続いていくと言います。

基本1:アンバサダー
顧客と市場のインサイトをつなぐ

基本2:ストラテジスト
プロダクトのGo-to-Marketを方向付ける

基本3:ストーリーテラー
世界がプロダクトをどう捉えるかを形づくる

基本4:エバンジェリスト
他者がストーリーを語れるようにする

基本1:アンバサダー
顧客と市場のインサイトをつなぐ
プロダクトマーケティングにおいては、顧客のカスタマージャーニーを明らかにすることが重要です。 具体的には以下のようなポイントが挙げられます。

1、顧客が何をしようとしているのか、どのような問題に直面しているのかを理解する。
2、顧客がその問題を認識し、優先事項にしているかを把握する。
3、顧客がその問題を解決しようとする動機や動機付けを理解する。
4、顧客の行動を引き起こす要因やトリガーを把握する。
5、プロダクトが顧客にもたらす最も大きな価値を明確にする。
6、どのような顧客がこのプロダクトに価値を見出し、購入する可能性が高いのかを特定する。
7、顧客がプロダクトを手に入れるまでのジャーニーの始まりを把握する。
8、プロダクトを見つける方法やジャーニーを経ることで顧客がより望まれるようになる方法を考える。
9、プロダクトを手に入れるまでのフリクション(摩擦)を減らすための改善策を検討する。
10、顧客がプロダクトについて知りたい情報や理解したいポイントを把握し、それに応じたコンテンツや情報提供を考える。
11、顧客が他の人にもプロダクトについて話したくなるような喜びや満足感を提供する方法を考える。

プロダクトマーケターは、顧客と市場の現実を伝えるアンバサダーとして、顧客と市場での定着を促進する最も重要な要素を確実に把握し、それをドキュメントにし、チームがより良い仕事ができるようにする役割を果たします。彼らは市場や顧客のインサイトを理解し、それをマーケティング戦略に反映させることで、製品やサービスの成功に貢献します。

市場や顧客のインサイトは、燃え盛るマーケティングの火にさらに燃料を供給できると言えます。顧客の日常生活、ニュース、トレンドなど、あらゆるものが、適切なタイミングを捉えれば推進剤になります。プロダクトマーケターは、これらの情報を収集し、分析することで、市場のトレンドや顧客のニーズを把握し、それに基づいて効果的なマーケティング戦略を策定する役割を果たします。

プロダクトマーケターが顧客と市場を深く理解することは、プロダクトマーケティングの基本です。この理解は製品のGo-to-Market戦略の基礎となります。彼らは顧客のニーズや要求を的確に把握し、製品やサービスの特徴や利点を伝えることで、顧客との関係を築きます。

基本2:ストラテジスト
プロダクトのGo-to-Marketを方向付ける
プロダクトのGo-to-Marketに向けた戦略的な構成要素は、必然的に下記のいずれかのテーマに分類されます。

①収益目標や事業目標を達成するための成長を促進する
これは、新製品のリリースや新規市場への進出によって、収益の増加を図ることを意味します。市場の成長を見込んで製品を展開することで、企業の成長を促進します。

②特定の顧客のコンバージョンを向上させる
既存の顧客や潜在顧客をターゲットに、製品の利用や購買につなげるための施策を講じることです。顧客のニーズや課題を理解し、それに合わせたマーケティングやセールスの活動を行うことで、顧客のコンバージョン率を向上させます。

③認知の向上
ディスカバリーの改善をして、ブランドを構築することも重要です。製品やブランドの知名度を高め、消費者に対して魅力的なメッセージを伝えることで、購買意欲を引き出します。広告やプロモーション活動を通じて、製品やブランドの価値を訴求し、顧客の関心を引くことが求められます。

④カテゴリー、エコシステム、またはプラットフォームを定義、再形成、またはリードする
市場の中で特定のカテゴリーやエコシステム、プラットフォームを築き、競争優位性を確保することを目指します。新しい技術やビジネスモデルの導入、業界標準の設定などを通じて、市場のリーダーシップを築くことが重要です。

⑤顧客の評価、ロイヤルティ、エバンジェリズムを生み出す
顧客の満足度を高め、リピート購買や口コミなどの形で顧客の忠誠度を向上させることが求められます。顧客との良好な関係を築き、顧客の支持を得ることで、企業の成長と継続性を確保します。

⑥新しい顧客セグメント、パートナー、プログラムを発見し、開発する
市場の変化や顧客のニーズの変化に対応するために、新たな顧客セグメントの開拓やパートナーシップの構築、プログラムの開発が必要となります。これにより、市場の拡大や新たなビジネスチャンスの創出が可能となります。

基本3:ストーリーテラー
世界がプロダクトをどう捉えるかを形づくる
プロダクトのポジショニングは、プロダクトを市場に送り出すために、時間をかけたすべての行動からもたらされる総合的な結果です。ポジショニングとは、あなたのプロダクトが顧客の心の中に位置する場所のことです。それにより、顧客はあなたのプロダクトが何をするものなのか、既存のプロダクトとはどう違うのかを知ることになります。

ポジショニングは、長期戦です。時間をかけて顧客に対してプロダクトの特徴や利点を伝え、顧客の認識や評価を築いていく必要があります。そのためには、メッセージングが重要な役割を果たします。 メッセージングには、プロダクトのポジショニングをより強固にするためにあなたが語ることが含まれます。つまり、どのようなメッセージを使って顧客にアピールするかが重要です。

適切なメッセージを伝えることで、顧客の関心を引き付け、プロダクトの信用が高まります。そして、人々がプロダクトをもっと知りたくなるのです。 ポジショニングとメッセージングは、互いに関連していますが、異なる役割を果たしています。

ポジショニングは、長期的な視点でプロダクトを位置付けることです。一方、メッセージングは、短期的な視点でプロダクトの魅力や利点を伝えることです。 ポジショニングとメッセージングの両方を適切に活用することで、顧客に対して効果的なマーケティング戦略を展開することができます。顧客の心に響くメッセージを送り、プロダクトのポジショニングを強化していきましょう。

基本4:エバンジェリスト
他者がストーリーを語れるようにする
「エバンジェリズム」とは、他者を通じて影響力を増幅させることを意味します。これには、Go-to-Market(市場進出)のリーチを拡大するための既存の営業、メディア、投資家、アナリストなどの役割だけでなく、Go-to-Marketエンジンの中で、各領域を通じてエバンジェリズムを活性化させることを専門とするスペシャリストたちも含まれます。

具体的には、ソーシャルメディアマーケター、コンテンツマーケター、パブリックリレーションズ、アナリストリレーションズ、テクニカルエバンジェリスト、コミュニティマネジャー、フィールドマーケティングマネジャー、イベントマネジャー、パートナーマーケティング、カスタマーサクセス、セールスマネジャーなどが挙げられます。

これらの要素の中で最も重要なものを特定し、それを製品の市場投入戦略に適用することです。 エバンジェリストには優先順位が存在します。たとえば、直販営業の部門が社内にある場合、その部門をイネーブルすることがプロダクトマーケティングの最優先事項となるでしょう。それだけでなく、リサーチファームのアナリストや、アプリストア、著名な出版物の編集者など、大きな影響力を持つ人々も同様に重要視する必要があります。

重要なのは、製品の市場投入にとって、どのような支持(アドボカシー)が最も重要であるかを把握し、それを可能にするための手段を見つけて活性化することです。専門家や評論家、インフルエンサーの認知や支持がなければ、商品は市場で光を見ることは難しいと言えるのです。

カスタマージャーニーは決して一直線ではなく、顧客は問題にぶつかり、情報の世界に飛び込み、ある時点でプロダクトを試したり購入したりするか、営業プロセスに入ることになります。マーケティングの仕事は、このジャーニーの途中にいる顧客を見つけ出し、リーチする技を発揮することです。

適切なタイミングで適切なメッセージを届けることによって、顧客のプロダクトに対する検討意欲を高めることが目標です。一方で、営業の仕事は、見込み顧客を見込み顧客を顧客に転換する技を発揮することです。

最近のマーケティングチームは、様々な領域のスペシャリストで構成されています。
・デマンドジェネレーション
・デジタル/ウェブ/検索、広告
・ソーシャルメディア
・コンテンツ
・インフルエンサー
・コミュニティ
・アナリストリレーションズ
・マーケティングオペレーション
・パブリックリレーションズ
・マーケティングコミュニケーション
・ブランド
・イベントなど

マーケティングのスペシャリストは、各領域でうまく仕事を進めるためにプロダクトマーケターと連携します。プロダクトマーケターは、プロダクトのどの部分を宣伝するか、どのようなターゲット顧客を想定するか、ターゲット顧客が興味を持つ理由は何か、どのチャネルが効果的かを明確にします。

また、ビジネスインパクトにつながるように、マーケティングと営業のGo-to-Marketエンジンの行動をプロダクト組織と連携して橋渡しする役割も担います。

これらのスペシャリストが連携し、統合的なアプローチでマーケティング戦略を展開することで、顧客のジャーニーに対応し、プロダクトの価値を最大限に伝え、効果的な営業活動を支援することが可能となります。顧客のニーズと要望を理解し、適切なコミュニケーションを行うことで、市場での競争優位性を築けるようになり、飛躍的に成長できるようになります。


Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました