資金調達を成功させる方法。フレデリック・ケレストの Zero to IPOの書評

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Zero to IPO 世界で最も成功した起業家・投資家からの1兆ドルアドバイス 創業から上場までを駆け抜ける知恵と戦略
フレデリック・ケレスト
翔泳社

フレデリック・ケレストの Zero to IPOの要約

資金調達は、多くの起業家にとって最初の大きなハードルです。投資家は単に数字だけでなく、その会社の物語、創業者の信念、そして事業が世界にどのような影響を与えるのかを知りたがります。創業者が自身の物語を説得力を持って伝えることができれば、投資家を引きつけ、資金を確保する可能性が高まります。

資金調達を成功させるチェックリストとは?

自社が成長できる(時価総額が10年以内に現在の10倍になる)と思える段階になったら、ベンチャー・キャピタルからの資金調達を考えはじめたほうがいい。これはふつうでは達成できないような目標だ。(フレデリック・ケレスト)

資金はスタートアップにとって、成長のための必要不可欠な燃料です。しかし、資金調達は多くの起業家にとって高い壁となりがちです。

成功した経営者であり、Oktaの創業者でもあるフレデリック・ケレストは、資金調達を行いたい起業家たちに対し的確なアドバイスを提供しています。 彼の指摘によると、自社が時価総額を今後10年で現在の10倍に増やす潜在力を秘めていると感じた場合、資金を調達するためにベンチャーキャピタルへのアプローチを考えるべき時だと言います。

通常の事業運営ではなく、野心的な成長を目指す場合、外部からの資金の注入はしばしば重要な要素になります。目標達成のためには戦略的な投資が不可避であり、そのタイミングでの資金調達が成功の鍵を握るというわけです。また、投資家に十分なリターンを提供するためには、大胆な目標設定が不可欠だということも強調しています。

ケレスとは以下の資金調達のチェックリストにすべて○が付いたら、投資家からの資金調達のタイミングだと言います。
□獲得可能な最大市場規模(TAM)が非常に大きい(つまり、10億ドル規模)ので、すぐに自社を10倍に成長させ、できれば100倍も見込める、有望なアイデアがあるか?

□創設チームが全員そろっているか?

□自分のアイデアがよいことを示す具体的な証拠はあるか?

□自社がどんな会社で、どうして成功するのかについての物語はあるか?それをすぐに説得力をもって語れるか?

□現実的なビジネスモデルがあるか?

□これから10年、この仕事しかしないという覚悟があるか?休暇もなく、週末もなく、誕生日も忘れ、眠れない夜がある覚悟はできているか?

また、 投資家との関係は、長期にわたるパートナーシップであり、信頼がその土台です。そのため、優れたパートナーを選んで資金調達を進めることが非常に重要です。彼らとの連携を通じて、企業は長期的な成長と成功を目指すことができるのです。

・その投資家にあなたの業界での経験があるか? 

経験があるなら、彼・彼女らはすぐに全力で取り組むことができる。彼・彼女らには、その業界がどう動いているか、どこにチャンスがあるか、どんなリスクについて考慮しておくべきかについて、貴重な洞察力がある。顧客を紹介してくれたり、すばらしい人材について助言してくれたり、あなたの利益になる広いネットワークがあったりするはずだ。そうした経験がなくても選ばない理由にはならないが、それでは理想的な相手とはいえない。

・その投資家は、自社と似たようなビジネスモデルの会社に投資したことがあるか? 

 ・彼・彼女らの長所が自社の短所を補ってくれるか? 

その投資家の評判を確認することも重要です。
・その投資家は協力してくれていたか?それとも、状況が厳しくなると、創業者と連絡をとらなくなったか?

・支援する方法を見つけてくれたか? それとも、投資家自身も答えを見つけるのに苦労していたか?

・創業者と厳しい話しあいになったとき、敬意をもって明快に話しあいをおこなったか?それとも、叫び声をあげ、創業者を叱りつけたか?互いの意思の疎通をはかろうとしているのに、それを理解してもらうことすら難しかったか?

・その投資家は、自分の役割が常にアドバイザーでなくてはならないことをわきまえていたか?それとも、経営の実権を握り、みずから運営しようとしたか?

起業家に物語が重要な理由

自分の物語の名人になることは、資金調達に欠かせないが、ほかのことでも重要になってくる。その物語を、初めて面接する社員にも伝えなくてはならない。顧客にも、特に実績のない会社にお金を出すリスクをとってくれた初期の顧客にも話す。

起業家として成功を収めるには、卓越した製品やサービスが必要不可欠ですが、それだけでは不十分です。起業家が力強く前進するためには、自分自身とそのビジョンを語る能力、つまり「物語」が重要となります。物語は、起業家が直面する様々な場面で、その中核をなすものです。

・資金調達
資金調達は、多くの起業家にとって最初の大きなハードルです。投資家は単に数字だけでなく、その会社の物語、創業者の信念、そして事業が世界にどのような影響を与えるのかを知りたがります。創業者が自身の物語を説得力を持って伝えることができれば、投資家を引きつけ、資金を確保する可能性が高まります。

・チームビルディング
新たなメンバーが加わるたびに、彼らはその企業のミッションとビジョンを理解し、共感する必要があります。起業家が自らの物語を情熱を持って伝えることができれば、社員はより強い絆で結ばれ、一丸となって目標に向かって努力することでしょう。

・顧客エンゲージメント
信頼の構築 特に初期段階においては、顧客に対する物語の共有は信頼を築く基盤となります。製品やサービスの背後にあるストーリーは、顧客にとって購入の動機となり、長期的な関係の構築へと繋がります。

著者は物語には以下の4つの要素が欠かせないと言います。
①創業者自身が物語の一部
創業者の人格や経歴が物語に深みを与えます。

②創業者の信憑性
真実味のあるストーリーは、聴衆に説得力をもたらします。

③パーパス:
企業が何を目指しているのか、その核心的な動機です。

④ビジョン
会社が目指すべき世界、実現したいこと。

私も投資会社のお手伝いをしていますが、起業家が素晴らしい物語を語ってくれると、その会社への期待値が高まります。逆に、起業家の創業ストリーやパーパス・ビジョンがよくなければ、投資対象から外すようにしています。

著者は投資家を口説くテクニックも教えてくれています。
・素晴らしい未来像の提示: 投資家に期待されるリターンを描き出します。
・類比の利用: 理解しやすい比喩を用いて、アイデアを伝えます。
・情熱: 熱意を込めたプレゼンテーションは、投資家の心を動かします。
・オリジナリティ: 自分の言葉で語ることで、起業家のパッションが伝わります。

また、起業家は顧客が最も重要な支援者であることを忘れてはなりません。彼らの支持があってこそ、ビジネスは成長し続けることができます。 物語は起業家が世界に打ち出すアイデンティティです。それは資金調達、チームの士気、顧客ロイヤルティを築くうえで、不可欠なコミュニケーションツールとなるのです。

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