エンゲージド・リーダー ― デジタル変革期の「戦略的につながる」技術
シャーリーン・リー
英治出版
エンゲージド・リーダー(シャーリーン・リー)の要約
インターネットとSNSの進展により、何十万人もの人々と同時につながり、共感し合い、関与させることが可能になりました。デジタル・コミュニケーションの時代には、対話を通してフォロワーとの信頼関係を深め、目標を達成するリーダー(エンゲージド・リーダー)が組織には欠かせなくなっています。
組織にイノベーションを起こすエンゲージド・リーダー
「組織構造(組織文化)」の変革なしに、イノベーションは実現できないということだ。どんなにイノベーションを推進しようとも、組織構造(組織文化)が上意下達のコマンドアンドコントロールである限り、従業員一人ひとりの意欲は低いままで、従業員同士のコラボレーションも活性化されない。(シャーリーン・リー)
本書出版時のギャラップ社の調査によれば、「積極的に仕事に関与(Engaged)」している従業員の割合は、アメリカでは30%、ドイツでは15%、韓国では11%、そして日本ではわずか7%となっており、日本は調査対象の142ヶ国の平均値の約半分であると報告されています。
最新の2023年の調査では、世界全体で「従業員エンゲージメント」の強い社員の割合が過去最高の23%に達した一方で、日本は2年連続で5%にとどまり、順位は125か国中124位と低い結果となりました。
現代では、SNSや様々なデジタルツールの普及により、社員や株主、顧客、取引先など、様々な階層が直接つながることが可能となりました。そして、リーダーも例外ではありません。これにより、情報の共有やコミュニケーションの手段が大幅に向上しましたが、デジタルコミュニケーションも含めてリーダーは対話を行う必要があります。
対話を通してフォロワーとの信頼関係を深め、目標を達成するリーダーをエンゲージド・リーダーが組織に変革をもたらすとリーダーシップ戦略、社員エンゲージメントのスペシャリストのシャーリーン・リーは指摘します。
エンゲージド・リーダーとは、フォロワーシップの一形態であり、リーダーがフォロワーとの対話を通じて信頼関係を築き、共通の目標を達成することに重点を置くリーダーシップスタイルです。
エンゲージド・リーダーは、フォロワーとのコミュニケーションを大切にし、彼らの声や意見に耳を傾けます。対話を通じて、フォロワーは自身のアイデアや提案を積極的に出すことができ、リーダーもそれを受け入れる姿勢を持ちます。このような信頼関係が築かれることで、組織のメンバーはより一体感を持ち、共通の目標に向かって協力し合うことができます。
情報の収集と共有はいずれもリーダーとフォロワーとの間の親善を深め、共通の目的の下に団結させる。そして両者の関係を強化し、エンゲージメントが実を結ぶための地盤作りをしてくれる。
リーダーは情報収集、情報共有、エンゲージメントのフレームワークを通じて、部下から信頼される優れたリーダーになることができます。組織内での役割を果たすためには、リーダーは部下とのコミュニケーションを重視し、彼らの意見や要望に耳を傾けることが重要です。信頼関係を築き、部下のエンゲージメントを高めることで、組織の目標達成に向けて効果的に指導することができます。
エンゲージド・リーダーに必要なこと
権力格差の減少、コミュニケーションの方向の変化、コミュニケーション頻度の増加により、リーダーはもはや隔離された存在ではなくなる。つまり、彼らはかつてのような「保護対象種」ではないのだ。 しかも、こうした新しい現象と引き換えに、途方もない利益と機会がやって来るのである。エンゲージド・リーダーが一対一、あるいは一対大勢とのエンゲージメントを通して組織全体を変革できることは、1つのチャンスなのだ。
インターネットとSNSの進展により、何十万人もの人々と同時につながり、共感し合い、関与させることが可能になりました。これは、従来の時間や物理的な制約によって難しいとされていたことを可能にする大きな変化です。このデジタル技術を経営に戦略的に活用すれば、以前は不可能だった多くのことを実現するポテンシャルがあります。しかし、実際には多くの経営者や経営幹部がこのデジタル技術を効果的に使いこなせていないのが現状です。
企業文化の改善には、リーダーたちがソーシャルメディアやSLACKなどのデジタルコミュニケーションツールを積極的に使用することが効果的です。このアプローチは以下のようなプロセスを通じて組織変革に繋がります。
①情報収集
リーダーたちはソーシャルメディアやSLACKを使用して、最新のトレンド、社員の意見や感情、市場の動向など幅広い情報を収集します。
②情報共有
収集した情報は組織内で共有され、全員が同じ認識を持つことができるようになります。これにより、透明性が高まり、社員の理解と参加が促進されます。
③エンゲージメント
リーダーたちがアクティブにコミュニケーションを行うことで、社員とのエンゲージメント(関与)が深まります。これにより、社員はより積極的に意見を述べ、協力的になります。
④組織変革
情報の収集と共有、エンゲージメントの向上は、最終的に組織文化の改善と組織変革に繋がります。社員がより参加意識を持ち、新しいアイデアや改善策を提案する文化が根付きます。
リーダーたちがデジタルツールを効果的に活用することで、企業文化はよりダイナミックで協力的なものに変化し、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。
エンゲージメントは、ソーシャル・キャピタルを蓄積できるという点で他の2つより強力なものだ。 従来のリーダーが築いてきたようなソーシャル・キャピタルとは違い、リーダーがみずから行動を起こし、人々が近づきやすい状況を作ることによって生まれるものだ。
リーダーシップにおいて、情報の収集と共有は重要ですが、エンゲージメント(関与)はそれらよりも強力な手段です。エンゲージメントを通じて、リーダーは従来の方法とは異なるソーシャル・キャピタルを蓄積することができます。これは、リーダーが自ら積極的に行動し、人々が近づきやすい環境を作ることによって生まれるものです。
効果的なエンゲージメント手法を持つリーダーは、フォロワーとの関係を改善し、変革を促すことが可能ですが、このプロセスは非常に慎重で意識的なアプローチが必要です。
デジタル時代におけるリーダーシップの重要な側面として、以下の点が挙げられます。
・デジタルリーダーシップへの変革
時代の変化を受け入れ、実践を厭わない姿勢と、デジタル戦略を明確な目標や目的に結びつけることが重要です。
・ユーザー中心の思考
デジタル化プロセスにおいても、常にユーザー(フォロワー)を考慮することが重要です。
・情報の分析と整理
必要な情報と不必要な情報を区別し、問題の全体像を分析する能力が求められます。
・対人関係と組織開発
バイアスを排除し多様な意見を受け入れる度量、自身の考えを明確に伝える能力、信頼関係の構築、相手の考えを引き出すスキルが必要です。
デジタル時代の特徴としては、迅速なコミュニケーション、多様な戦略の公開性、対象となる相手の量的な広がり、多くのリアクションを得られる可能性が挙げられます。これらは、デジタルコミュニケーションにおいてリーダーが意識すべき重要な要素です。
コミュニケーションがデジタル化する中で、リーダーの役割も変わっています。日本のリーダーも自分のコミュニケーション・スタイルを変え、メンバーのモチベーションを高めるべきです。
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