なぜJALは再生できたのか?経営――稲盛和夫、原点を語るの書評

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経営――稲盛和夫、原点を語る
稲盛ライブラリー+ダイヤモンド社「稲盛和夫経営講演選集」
ダイヤモンド社

経営――稲盛和夫、原点を語るの要約

日本航空の再生において、最も大きな要因は、意識改革とフィロソフィの共有によって、従業員が自発的にモチベーションを高め、自分から考え、経営に参画するようになったことです。JALは顧客体験を高めることで、利益を生み出せる体質に変わっていったのです。

稲盛和夫氏のフィロソフィー経営とは?

企業を大きく成長発展させていくには、まずは従業員をして、経営者に惚れさせること、仕事の意義を説くこと、さらにはビジョンを高く掲げ、ミッションを確立すること、またフィロソフィを語り続けること、そして経営者自身の心を高めていくこと、このことを徹底して行っていくしかありません。(稲盛和夫)

パーパス経営がトレンドになっていますが、それをいち早く取り入れていたのが、京セラ創業者の稲盛和夫氏です。稲盛氏は、京セラを創業する際に、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、 人類、社会の進歩発展に貢献すること」という経営理念を掲げました。

彼は、利益追求だけでなく、社会に貢献することが重要であるという考えを持っていました。パーパス経営は、単なる利益追求だけでなく、社会に与える価値を考えることが重要です。企業が社会的な課題に取り組むことで、顧客や社会からの信頼を得ることができます。稲盛氏はビジョン・ミッション・経営理念、パーパスを社員と共有するフィロソフィー経営で京セラを成長させていったのです。

また、社会的な課題に対する解決策を提供することで、新たなビジネスチャンスを創出することも可能です。 パーパス経営を実践するためには、経営陣や従業員の共通の目標や価値観を明確にすることが重要です。また、企業の活動や意思決定がパーパスに合致しているかどうかを常に評価し、修正することも必要です。企業のパーパスは、時代や社会の変化に合わせて柔軟に変化することも求められます。

私は、企業経営とは、まずはこれらのことを徹底して行い、従業員に共鳴・賛同してもらい、そのモチベーションを高めていくこと、それしかないと思っています。 成長する企業統治の要諦というのは、まさにこのことに尽きるのです。

企業経営において、従業員の共鳴と賛同が非常に重要です。これを実現するためには、従業員のモチベーションを高めることが必要です。意識改革を通じて、従業員が自発的に経営に参画し、自分から考えるようになることがポイントです。ただし、トップダウンのアプローチでは従業員の声が潰れることがあるため、経営層だけでなく、従業員全体が参加できる環境づくりが重要です。

組織の変革には、従業員の意識改革が欠かせません。従業員が自発的に考え、経営に参画することで、企業の成長が促進されます。経営層は従業員の共鳴と賛同を得るために、意識改革を推進し、モチベーション向上に尽力する必要があります。

JALの再生はフィロソフィー経営にあり

JAL再建の成功の最大の理由は、稲盛和夫氏のリーダーシップと経営哲学にあります。彼はJALの経営破綻後、その再建を引き受けましたが、その際に「会社にとって、安全が大事なんですか、利益が大事なんですか」と問われたことがあります。

その際の、彼の返答は示唆に富んでいました。「安全なくして、この会社が存立するわけがない。安全は1番大事なんだ。だけど、その大事な安全を守るためにはお金がかかるだろう? だったら、安全を守るためには、利益も生まないとダメなんだ」というものでした。

利益を出すためには顧客体験を高めること、そのためには社員の意識を変えることが欠かせません。稲盛氏はJALの従業員のマインドセット改革に着手します。

意識改革を図り、フィロソフィを共有することによって、従業員自身がモチベーションを高め、自ら考え、経営に参画をしてくれるようになったということが、日本航空の再生につながっていった最大の要因なのです。

JALの再生でもこのフィロソフィー経営が効果を発揮します。この取り組みは、当時の社長や幹部社員に京セラフィロソフィを学ばせるという形から始まりました。当初はフィロソフィー経営に否定的であった幹部社員と稲盛氏は激しい議論を重ね、リーダーたちは徐々に意識を変えていきます。

彼らがこの哲学や思想を共有する価値を見出すと、それを元に「JALフィロソフィ」が創り出され、会社経営に導入されました。 日本航空の幹部社員は数ヶ月にわたり、京セラフィロソフィを学びながら、「JALフィロソフィ」を練り上げました。この新たなフィロソフィは、京セラのものを基に航空運輸事業に合わせて調整されたのです。

幹部社員だけでなく、客室乗務員、整備士などの現場の人たちにに稲盛氏はダイレクトに話しかけ、JALフィロソフィを徹底します。従業員たちがこのフィロソフィに共感し始めると、接客態度が変わり、JALの業績は急速に向上しました。社員がフィロソフィに共感をし始めてから、業績はうなぎ登りに向上していったのです。

働く人たちの意識、心が変わっていけば会社は変わっていくのです。2年8ヵ月という時間がかかりましたが、フィロソフィー経営が浸透することで、JALは再建に成功します。多くの関係者が無理だと言っていったJALが稲盛氏のフィロソフィー経営によって復活したのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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