成功する練習の法則 最高の成果を引き出す42のルール
ダグ・レモフ, エリカ・ウールウェイ
日本経済新聞出版
成功する練習の法則 最高の成果を引き出す42のルールの要約
勝者を作るのは試合ではなく練習です。意図を持った練習を反復することで、個人やチームの可能性は広がります。得意分野を磨けば成功体験が自信を生み、挑戦意欲が高まります。成長はチーム全体に好影響を与え、楽しさと達成感を共有することで周囲にも良い影響を及ぼします。
勝者を作るのは、試合ではなく練習
個人、組織、コミュニティ、さらには国家にとっても、成功とは、才能をめぐる闘いに勝つことだ。具体的には、才能を引き寄せ、開発し、磨く闘いである。これはおそらくいつの時代にも当てはまることだろうが、今日ほどその闘いが熾烈になったことはない。これまでになく一地域の競争がグローバル化し、組織のあらゆるポジションで才能を探すことが急務となり、専門性より個々の効率性が重視されている。 (ダグ・レモフ, エリカ・ウールウェイ)
私たちは日々、競争を繰り返しています。野球やサッカーなどのスポーツの試合終盤の緊張感あふれる展開には心を奪われ、つい夢中で応援してしまうことがあります。しかし、本当に優れた成果がどのように生まれるのかを知りたければ、試合そのものではなく、日々の練習に目を向ける必要があります。
本書は、「勝者を作るのは試合ではなく練習だ」という視点を示し、練習の重要性を強調します。 ただ漠然と繰り返すだけではなく、練習を科学的に捉え、意図を持って取り組むことで、誰もが自分の可能性を大きく広げることができるのです。
教師出身のダグ・レモフ, エリカ・ウールウェイらは、練習の具体的な方法を解き明かしていきます。たとえば、効果的な練習を行うための基本原則、優れた実践例の活用、適切なフィードバックの取り入れ方、持続可能な練習文化を育てる方法が含まれています。
練習をただの反復作業と見るのではなく、科学的にアプローチするべき重要な活動として捉え直しているのです。(ダグ・レモフの成功する練習の法則 最高の成果を引き出す42のルール関連記事)
著者たちは、練習の価値が広く認識されている分野だけでなく、まだ十分に理解されていない領域においても、練習が持つ大きな力を明らかにしています。 特に注目されるのは、「練習をするかしないか」という単純な議論を超えて、「どのように練習するか」という質的な側面に焦点を当てている点です。意図的にデザインされた練習方法が、あらゆる分野でのパフォーマンスを飛躍的に向上させる可能性を秘めていることが示されています。
世界最高峰のサッカー選手、リオネル・メッシ。彼の卓越したプレーは、天賦の才能だけでなく、徹底的な練習から生まれています。試合後も一人でボールを蹴り続け、チームメイトが帰った後も練習場に残る姿は有名です。そんなメッシでさえ、練習を成功の推進力とし、継続的な進化に欠かせない要素と考えています。
しかし、プロスポーツや音楽など一部の業界を除くと、多くの職業では「上手くなれば練習は不要」という考え方が一般的です。練習を続けることは、むしろ能力不足の表れとみなされがちです。この認識のギャップこそ、本書が問題提起する核心です。
本書で紹介される42のルールは、競争の激しい現代社会で才能を開花させ、より効果的に成長するための指針を提供します。その本質は、メッシのように、一つ一つの要素を着実に練習することにあります。
成功への第一歩は、正しい方法を身につけることから始まります。新しいスキルを習得する際は、まず基本を確実に理解し、それを完全に習得してから複雑な要素を加えていくことが重要です。この過程で生じる失敗は、むしろ個性を育てる機会として捉えることができます。
また、効率的な成長のためには、最も価値を生む20パーセントの要素に注力することが効果的です。パレートの法則を練習に応用することで、パフォーマンスを高められると著者らは指摘します。
さらに重要なのは、基本的なスキルを無意識にできるレベルまで高めることです。これにより、より複雑な状況にも対応できる基盤が形成されます。基本的な動作が自動化されれば、より高次元の思考や創造的な活動に脳の処理能力を向上することが可能となります。
この原理は、日常的な車の運転でも実感できます。運転の基本動作が無意識のうちに行えるようになると、その間に深い思考や分析が可能となります。
メッシのプレーを見ていると、ボール操作が完全に自動化されているからこそ、周囲の状況を瞬時に判断し、創造的なプレーを生み出せることがわかります。 意図的な練習を通じてスキルを向上させることで、驚くほど複雑な作業をこなす能力が身につきます。
そして、基本的な動作が自動化されることで生まれた余力を、より重要な課題の解決に向けることができるのです。まさに、世界最高峰の選手であるメッシが示すように、練習は成長の源泉であり、卓越性への道筋なのです。
練習は強みを伸ばせ!
強みを強化することにはさらにいい点がある。頂点をきわめたい分野で自分がすぐれていることが再認識でき、前向きな気持ちになれるのだ。練習が楽しくなればもっと練習しようと思い、さらに上達する。プレゼンテーションが得意な人は、練習することでいっそう自信がつくし、楽しみながらできるようになる。スキルに応じて高度なプレゼンテーションをまかせたり、スキルが応用できそうなほかの仕事を割り当てたりしてもいいだろう。強みを見つけてそのスキルをもっと幅広く使えるようにすることは、会社としても(練習の目標としても)きわめて生産的なことだ。
人が自分の得意分野に取り組むと、成功体験を通じて前向きな気持ちが生まれます。例えば、プレゼンテーションが得意な人がそのスキルをさらに磨くと、楽しさと自信が増し、より高いレベルの挑戦を目指す意欲が湧きます。その結果、成果はより大きくなり、個人の成長がチームや組織全体に好影響を与えます。このように強みを見つけ、それを幅広い分野で活かすことは非常に生産的です。
一方で、人は心理的な壁に直面すると、困難を避けがちです。当惑や失敗への恐怖、あるいはプロセスへの不信感といった障害が、練習の妨げになることがあります。これらの障害を克服するには、まずその存在を認識し、積極的に対処する姿勢が求められます。障害を乗り越えた先にこそ、練習の恩恵が待っています。
練習が楽しいと感じられる環境を整えることが重要であり、楽しさと明確な目標を結びつけることがカギとなります。 練習において、成功例を効果的に活用することは、非常に有効な方法です。
例えば、優れた教師の授業を撮影し、それを手本として活用することが挙げられます。これにより、何が成功をもたらしているのかを具体的に理解しやすくなります。優れた手本を提示する際には、現実的で信じられる内容であることが重要です。ただ完璧な姿を見せるだけではなく、再現可能で具体的なスキルが示されることで、学びが深まります。
よいフィードバックとは、問題点ではなく、すぐに行動に移せる具体的な解決策を説明するものだ。
練習を通じて成長を促すには、フィードバックが欠かせません。良いフィードバックとは、問題点を指摘するだけでなく、すぐに行動に移せる解決策を示すものです。さらに、フィードバックを受け取るだけでなく、それを活用する文化をチームの中に築くことが重要です。
フィードバックをすぐに使う習慣を取り入れると、効果が確認できるだけでなく、スキルの定着も早まります。例えば、列に戻る際には後ろではなく前に移動させ、すぐに改善の機会を与えるといった工夫が挙げられます。
フィードバックを日常的に取り入れることで、練習や改善が特別なイベントではなく、当たり前の行動となります。こうした文化を育むには、前向きで建設的なフィードバックのやりとりを頻繁に行い、成功体験を共有することが有効です。
成功した例を通じて学び、繰り返し練習し、新しい状況で応用することで、スキルは確実に向上します。 また、スキルを個別に練習することも、全体的な成長にとって重要なステップになります。
新しいスキルを習得する際には、それを細分化し、一つひとつ丁寧に練習します。この過程を通じて基礎を固めることで、より高度な統合的な状況にも対応できるようになります。これは単調に見えるかもしれませんが、効果的な成長には必要不可欠なプロセスです。
練習と改善を通じて、強みを最大限に活かすことは個人やチームの成功につながります。それは単にスキルを高めるだけでなく、楽しさや達成感を共有することで、周囲にも良い影響を与えるのです。練習を懲罰のように捉えるのではなく、目標に向かうための自然な行動として取り入れることで、さらなる成長が期待できます。
本書は、結果を出すための練習の具体的な方法を示し、意図的な練習による成長を目指すすべての人にとって貴重な指針となっています。
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