知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質
荒川和久
ぱる出版
本書の要約
現在、ソロ活市場は結婚している人や結婚を考えていない人たちからも支持を受け、今後も拡大が見込まれています。加えて、個人の嗜好やニーズが重視される現代において、経営者はソロ活市場の潜在的な需要を見逃さず、適応戦略を考え、ビジネスチャンスをつかむ必要があります。
拡大するソローマーケットの現状とは?
今や、誰もが必ず結婚する時代は終焉を迎えた。生涯未婚率は男3割、女2割に達しようとしている。加えて、生涯子どもを持たない生涯無子率も男4割、女3割である。男性の4割は自分の子を持たずに死んでいく。 (荒川和久)
以前は、ほとんどの人が結婚し、家庭を持ち、子供を2人育てることが一般的でした。1970年代には、夫婦と子供の家族が全世帯の45%を占めていましたが、現在ではその割合は20%台まで減少しています。代わりに、一人暮らしの単身世帯が多くなっています。2040年までには、単身世帯率が40%に達すると予想されています。著者はこれらの単身世帯を「ソロ世帯」と呼び、マーケターはこの層を意識すべきだと指摘します。
独身者が増える一方で別の要因でもソロ世帯が増加しています。最近では、離婚し独身に戻る人が増加しており、特殊離婚率が2001年以降一度も35%を下回らない状況にあります。また、人々の寿命があるため、どちらかの配偶者が死去することで独身に戻る可能性もあります。子どもがいる場合でも、彼らはいずれ自立して独り立ちします。つまり、家族は保証されたものではなく、誰もがいつかはソロになる可能性があるということです。
これは、強制的な結婚と家族中心の社会の時代の終焉を示しており、社会が変化するにつれて消費も変化しています。現在はソロ世帯が増加しているため、家族向けの商品やサービスだけではビジネスが成り立たなくなっています。
社会構造の変化に伴い、消費の構造も変わっています。今や日常の買い物や家事は主婦だけでなく、ソロ世帯の方々も行う時代です。だからこそ、家族向けのビジネスだけではなく、ソロ世帯向けの商品やサービスも求められています。そして、独身が5割になるというのは誇張でも嘘でもない事実です。
死別や離別で独身に戻った人も含めると、2040年には独身の人が半数以上になると推計されています。日本は高齢者の多い超高齢国家といわれていますが、独身人口の方が高齢人口よりも多いソロ社会になっています。
独身人口が5割になるだけでなく、世帯の構造も大きく変化しています。現在、世帯の4割が単身世帯となっており、かつて世帯の中心であった夫婦と子供という家族は2割程度まで減少しています。
そろそろ私たちは、その現実を直視し、「人ロは減り続ける」という現実を前提に適応戦略を考えないといけないフェーズに来ている。人口が今の半分の6000万人になってしまう未来を「恐ろしい」「危機だ」と言っていれば未来が変わるものではない。「恐ろしい未来」ではなく「当然やってくる未来」としてとらえ、6000万人になってもやっていける道筋を構築する。そうした視点に考え方をシフトしていくべきだろう。
現代社会は、情報過多の時代であり、情報の選別には感情の力を活用することがますます重要になっています。消費者は、ポジティブな共感や喜び、ネガティブな嫌悪や怒りなどの感情に影響を受け、それがマーケティングにおいて重要なファクターとなっています。
同時に、社会が個人化する中で、単身者である「ソロ」と呼ばれる人々が増加しています。かつては家族や子どものために頑張ることで幸福を感じる人々が多かったのですが、グループや組織に所属しない単身者は、孤独に陥りやすく、幸福感を得にくい傾向があります。
こうした状況において、単身者が自分らしい生き方を見出し、充実した生活を送るためには、ソロ活での自己実現や自己肯定感の向上が必要不可欠です。 そこで、ソロ活に取り組むことで、自己肯定感や自己実現を促し、充実感や満足感を得ることができます。
ソロ社会マーケティングに対応できた企業が勝ち組に!
世代で価値観などたいして変わらないが、経済環境によって価値観は大きく変わる。逆にいえば、同じ時代に生きていたというそれだけの理由で、多くの人が同じ価値観になるわけなどない。
Z世代は、2020年時点で9歳から25歳の1916万人の人口です。しかし、実際には高校を卒業した18歳以上の人たちが対象であり、学歴が高い人たちだけを対象に考えると、規模は608万人にまで減少します。
一方で、独身単身世帯のマーケットは、20~30代には1387万人、40~50代には1122万人、60歳以上には1574万人もいます。特に収入が多い40~50代独身者は、消費も多く、客単価が高いため、需要の拡大が期待されています。
現代社会では、一人で過ごすことが一般的になり、若者の間では「ソロ」文化が広がっています。その中で、「ガチソロ」「エセソロ」「カゲソロ」という言葉が生まれました。 「ガチソロ」とは、本当に一人で過ごすことを好む人たちで、自分の時間を大切にするために、一人で旅行や映画館に行くことを楽しんでいます。「エセソロ」とは、結婚意欲はあるが、今は一人で過ごすことを演出することで注目を浴びたいという人たちのことです。
「カゲソロ」とは、結婚していても一人で過ごすことを好む人たちで、内緒で一人でお酒を飲んだり遊びに行ったりすることを楽しんでいます。
独身者合計40%をターゲットにすることが多かったが、「ガチソロ」「エセソロ」「カゲソロ」を合わせた60%を「ソロ市場ターゲット」として考えることが必要です。
ビジネスを展開する上で、Z世代よりも「ソロ市場」に注目することが必要です。この市場には多様なニーズが存在し、それに応える商品やサービスを提供することで、需要の拡大が期待できます。
ソロ市場ターゲットは、自分の趣味や嗜好に合わせた商品やサービスに対して高い関心を持っています。また、彼らは高いコストパフォーマンスを求めることが多く、リーズナブルで質の高い商品やサービスにも注目しています。 このような状況下で、ソロ飯、ソロ旅、ソロ温泉にポジティブに対応した企業は、実際に成長しています。
彼らはソロ市場ターゲットのライフスタイルやニーズを理解し、質の高い商品やサービスを提供することで、彼らの支持を得ることができます。ソロ市場ターゲットは、一人で過ごすことを好むため、自分自身と向き合うための時間や場所を求めています。ソロ飯に特化したレストランや、ソロ旅に特化したホテル、そしてソロ温泉に特化したスパなど、彼らのニーズに合わせた商品やサービスを提供することが、企業の成長につながっているのです。
人々は、独身か既婚か、集団派か個人派かという区分けではなく、時と場合によってソロ活を求める気持ちがあります。そのニーズが潜在的にあることから、ソロ活市場が活性化しています。
このように、ソロ度を考慮して市場規模を見ることは、新しい視点であり、ソロ度から推計されるソロ活市場規模は、家族市場規模を上回っています。
全体からすればまだオタク人口は23%と少数派であるが、今後も順調にオタク人口は伸長すると考えられる。ソロ活人口、行動も増えていく。しかも、オタク層というのは、一度気に入ったら浮気をしない優良顧客になりやすい。のめり込む体質が高いので、リピート性が高いのだ。一度気に入ったら優良顧客化になるということを考えた時に、どれだけソロ度の高い、ソロ活動をするオタク気質の人を優良顧客化として継続的な関係性を作れるかということがこれからのマーケティングの大きな肝になってくる。
「エモ消費」とは、所有することや体験すること自体が価値ではなく、それらが手段としての役割を果たし、自分たちの「精神的な安定や充足」を得ることが目的となっている消費のことです。このような消費の特徴は、群から個の消費の比重が高まる現代社会において重要な視点となっています。
多くの人がソロ社会化を経験し、心の欠落を感じているため、エモ消費はその欠落を埋めるための手段として活用されています。 消費を通じて幸福を得ることに違和感を感じる人もいるかもしれませんが、現代社会においては、自分自身のアイデンティティを表現するための手段として消費が必要不可欠となっています。
ソロ活においても、エモ消費は幸福感を得るための重要な要素となっています。 つまり、エモ消費は所有することや体験すること自体が価値ではなく、それらが手段としての役割を果たし、自分自身のアイデンティティを表現するための手段となっているのです。これは現代社会において当たり前となっている消費行動であり、消費を通じて幸福を得ることが一つの選択肢として存在していることを理解することが大切です。
ソロ活市場は、結婚している人や結婚に興味がない人たちからも支持を受け、今後も拡大が予想されています。現代では、消費者のニーズが個人的なものになっているため、経営者はソロ活市場に注目する必要があります。独身や既婚、男性や女性などの区別ではなく、時と場合によって誰でもソロ活を求めることがあるのです。
経営者は、このような潜在的なニーズを見逃さず、適応戦略を考えることが重要です。ソロ活市場は無視できない存在であり、経営者はその可能性を見極め、ビジネスチャンスをつかむべきです。
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