Z世代化する社会―お客様になっていく若者たち
舟津昌平
東洋経済新報社
Z世代化する社会―お客様になっていく若者たち(舟津昌平)の要約
Z世代は社会の変化を敏感に察知し、現代のトレンドや問題を体現しています。著者は、若者たちが経験する悩みが上の世代の影響を強く反映していると指摘しています。そのため、大人たちは彼らにプレッシャーをかけるのではなく、良い手本を示し、彼らを育てる役割を担うべきです。
Z世代のSNSの活用法とは?
Z世代と呼ばれる若者たちを観察することで、われわれが生きる社会の在り方と変化を展望しようというのが、本書のねらいである。(舟津昌平)
Z世代化する社会において、舟津昌平氏の著書は重要な示唆を与えています。舟津氏は、Z世代と呼ばれる若者たちが社会においてどのような役割を果たしていくのかに焦点を当てています。
舟津氏は東京大学の大学院で教鞭を執りながら、若者たちの行動や考え方について研究を行っています。大学教員という職業は、様々な場面で若者と話す機会が得られる特権的な立場にあるといいます。 若者はいつも新鮮で、新しい存在でありながら、同時に私たちと地続きでもあります。同じ社会に生きているのですから、当然のことかもしれませんが、その中には新たな発見や気づきがあることを舟津氏は強調しています。
私も大学で教えているため、若者たちと接する機会が多く、彼らの良い面をたくさん見ています。いつの時代でも若者たちがネガティブに捉えられることが多いですが、このような視点の偏りを正すためには、若者と直接対話し、彼らの考えや価値観に触れることが非常に重要です。
若者を見ることは、現代社会の構造を理解するための重要な手がかりとなります。若者たちの行動や考え方を観察することで、私たちが生きる「今」の社会の特徴や課題が浮かび上がってきます。舟津氏が指摘するように、若者たちが抱える悩みや価値観は、時代の流れや社会の変化を反映しているのです。
Z世代と呼ばれる若者たちは、SNSに慣れ親しんでおり、私たち世代とは使用法も異なります。
SNSは開かれているし、閉じられている。SNSを介せば世界中の人々とつながれる。だが匿名なので、本名で検索しても決して出てこない。そして、一度フォローし合うと互いの情報が逐一共有される。また鍵がかかっていると、鍵アカウント同士で何が行われているか外からは見えない。
Z世代の若者たちは新しい出会いにインスタグラムを好んで使い、既に親しい人とのコミュニケーションにはLINEを使用する傾向があります。彼らは「LINEは親しくなった後で」と考えており、初対面やまだあまり親しくない人には、個人の連絡先を教えるのはリスクが高いと感じています。
そのため、最初にインスタグラムのアカウントを交換し、もし相手が期待に応えなかった場合は、簡単に「ブロ解」を行います。「ブロ解」とは、ブロック後にすぐ解除することで、相手のフォローを自分のアカウントから強制的に削除する行為です。この操作は相手に通知されず、相手がフォロワー覧を確認しない限り気付かれないため、スムーズに関係を断つことができます。
また、かつて流行った「インスタ映え」する投稿は、今の若者にとっては時代遅れで、「イタい」と感じられています。過度に注目を集めることが逆に悪印象を与えるとされ、イタいとされる人は疎外されたり、陰口を受けることが多いと言います。このため、プロフィールに「自己満」と書いておくことで、自分のスタイルを自覚していることを示し、他者からの批判を避けるようにしているのです。
彼らは発展したSNSを利用して友達を選別し、プライベートなやりとりのために鍵付きの閉じたSNSでコミュニケーションを取りながら、自分たちの生活を楽しんでいます。
若者世代が陥る「コスパ志向の罠」とは?
コスパ志向の罠とは、コストを惜しむあまりパフォーマンスを何も得ていないということが往々にして起きる点にある。コスよりパの方がよほど大事である。でも、コスパとのたまう人のほとんどはコストを惜しんでるだけのケチなので、残念ながら別にたいしたパフォーマンスなど発揮できてはいない。
「コスパ」という言葉は、元々「コストパフォーマンス」の略で、費用対効果の良さを指す言葉です。しかし、実際にこの言葉を使う際には、多くの場合、コスト削減にばかり焦点が当たりがちです。本来ならば、支出したコストに見合うだけの、あるいはそれ以上のパフォーマンスが得られて初めて、高いコスパと評価されるべきです。
この「コスパ志向の罠」に陥ると、最小限の費用で最大限の結果を求めるあまり、実際にはパフォーマンスが犠牲になることがあります。例えば、ある商品を購入する際に、価格が安いものを選ぶことに固執することで、品質が劣るか、機能が限定された製品を選んでしまうことがあるのです。
このような状況は、結局のところ、購入した目的を満たせず、結果的に損をしてしまう可能性があります。 また、コスパを重視するあまりに、「タイパ」という概念も登場しています。これは「タイムパフォーマンス」の略で、コストだけでなく、購入や投資のタイミングも考慮に入れるべきだという考え方です。つまり、低コストだけではなく、最適なタイミングで最適なパフォーマンスを実現することが重要であるとされています。
コスパの本質を見失わないためには、単にコストを削減するのではなく、支出した金額に対して適切な価値が得られているかを常に考慮する必要があります。価格だけに注目するのではなく、総合的な価値を理解し、長期的な視点で考えることが求められます。
コスパ、つまり「コストパフォーマンス」という概念が流行しているのは、もともと経営者が用いる指標だからです。これは、投資した費用に対して得られる利益を示し、ROI(投資収益率)やROE(自己資本利益率)などの形で表されます。
つまり現代とは、経営者に求められるような指標を、当たり前のように一般人に転化して用いている時代であり、あたかもわれわれ一人一人が経営者であるかのように、コスパに監視の目を光らせる時代なのだ。
現代社会では、一般の人々も経営者のように日常生活で資源を効率的に管理し、個人の選択を最適化するために「コスパ」という概念を活用しています。この現象は、個人も企業のように経営の効率を追求するようになった社会的変化を反映しています。
しかし、この流行には副作用も見られます。 多くの若者が経営者のようにストレスを抱え、日々を過ごしています。コスパ、すなわち「コストパフォーマンス」に焦点を当てることが、しばしば彼らの生活に過剰なプレッシャーを与えています。
この状況は、特に成果を重視しない「パなきコスパ」、つまりコスト削減のみを追求する姿勢によって、大きな機会を見逃す結果につながっています。コスパを追求すること自体が悪いわけではありませんが、コストばかりに目を向けた結果、本来得られるはずの成果を逃してしまうのです。
一方で、成功している企業や個人は、コスパを適切に活用しながらも、必要に応じて効率が低いとされる努力を惜しまない戦略を取っています。例えば、長期的な目標達成のために初期投資が大きくても、その成果が大きなリターンを生むことを理解しています。
このようなアプローチは、費用と結果のバランスを巧みに取り、模倣困難な独自の価値を創造することにつながります。他者が容易に真似できないような独創的な取り組みは、高い「パフォーマンス」を実現し、最終的には類い稀な成功を手にすることができます。
Z世代化する社会とは?
しかし、酷い。酷すぎる。こんな社会に、言葉しかない薄い世界に誰がしたのだろう。Z世代だろうか。違う。オトナだ。オトナがやってるのを、子どもが真似してるだけなのだ。政治家やタレントを、見てみたらいい。言葉しかない。守られた公約など見たことがない。言葉は多々飛び交う中で、交わされた言葉がどれだけ現実に還元され、実になっているのだろうか。それらしい言葉だけが飛び交い、中身は何もない。
Z世代の若者たちは、現代社会のトレンドや問題を鋭敏に感じ取っており、それが「コスパ」「ガクチカ」「インターン」といった言葉の重視として表れています。しかし、これらの言葉の背後に実際の内容が伴っていないことに対する懸念が高まっており、大人世代がこれに大きく影響を与えているとされています。若者たちが大人の価値観を単に模倣しているだけであり、彼らに全責任を求めることは不当だと言えます。
一方で、インターネットには表の世界とは異なる、隠れたコミュニティが存在します。これらの非公開グループやフォーラムでは、共通の目的を持つ人々が集まり、時には非倫理的なビジネスやブラックな働き方が推奨されています。その結果、ビジネスに憧れる若者たちがこれらの環境に長く留まることで、様々な問題を抱え込むことがあります。
また、現代の職場はホワイト化が進んでいるにもかかわらず、若者たちの不安は増大しており、柔軟すぎる職場環境が原因で早期に離職するケースが増えています。会社や働く楽しさを見つける前に、仕事を変えてしまうのです。
Z世代は周囲への監視の目を絶やさず、他者評価に敏感であるため、一時は減少していた飲み会への参加率が最近では増加していることも報告されています。
Z世代は周囲への監視の目を絶やさず、他者評価に敏感である。そして、常に「横」を見る。みんな行ってるなら行く、なのだ。わざわざ断るほどの主体性はない。もっと極端なことを言おつ。私に言わせれば、Z世代はオジサンを信じていないのではなく、他人を信じていない。他者を警戒して監視して、損しないように立ち回って、平均ちょっと上で得することをめざしているから、同世代すら信じていない。
Z世代は他人を警戒し、損を避ける一方で、常に平均以上を目指す戦略を取っています。これは、彼らが独自の信頼関係を築いていることを示し、自分たちの行動や選択を他人と比較しながら社会に適応しようと努力しています。彼らは周囲を意識し、自己の立場を調整しながら社会に溶け込もうとしています。
同時に、現代の若者の間で「怒られることがない」という現象が見られますが、これは彼らにとって必ずしも好ましい状況ではありません。怒られないことで成長の機会を自ら逸している可能性があります。しかしこの「怒らない文化」を作り出しているのは私たち大人であることを忘れてはなりません。
さらに、社会が不安を煽るビジネスを行う現代において、若者はその影響を強く受けています。特にZ世代は感受性が高く、変化に迅速に対応するため、社会の動きをすぐに行動に反映させることがあります。これが彼らの行動を外から見ると時に異様に見える原因です。社会全体として、このような現象を理解し、適切なサポートを行うことが重要です。
Z世代はわれわれのZ世代以外を含む社会の構造を写し取った存在であり、写像であるということだ。若者は経験が浅く、雑味がなく澄んでいて、だから外からの影響を受けやすい。社会の構造なるものが生まれるたとえば不安を利用したビジネスが横行するとき、社会に在るわれわれは、多かれ少なかれその影響を受ける。なかでも若者は感度が高く適応が早いので、いち早く構造を反映して言動に移す。だから、異様に見える。
しかし、異様に見えるZ世代が社会の外部から来た存在ではなく、単に社会の動きをより敏感に捉え、反映しているだけです。不安を商材とするビジネスや、言葉が重視される社会の影響は、Z世代に限らず私たち全員にも及んでいます。彼らは単に、社会の変化をより純粋に表している先端を行く者なのです。
多くの企業は、若手社員に対して高い期待を持ち、その「コスパ」を重視します。これが若者に過度のプレッシャーを与え、彼らが自分自身を責める原因となり、不安を感じさせることがあります。その結果、職場での不満や未来への不安から転職を考えるようになります。
若者が職場での将来を見据えるには、「昇進したい」「偉くなりたい」といった希望を持てる環境が必要です。昇進は待遇改善の大きなチャンスであり、現状を打破する手段となり得ます。しかし、すべての人が昇進できるわけではないため、個々の社員が自分の立場を理解し、キャリアの岐路に立たされたときに適切な判断ができるよう支援することが企業に求められます。
企業が若者に提供すべきは、不安を完全に取り除くことではなく、不安の中でも将来への希望を持てるようなサポートです。このバランスが取れた環境を整えることで、若者は安心して仕事に取り組み、自らのキャリアを築くことが可能になります。行き詰まりを感じたときには、転職も一つの選択肢として検討することが、健全なキャリア管理の一環と言えるでしょう。
若者たちは仕事に楽しさを見出そうと努力していますが、単に「楽しい仕事に就く」のではなく、「仕事の中で楽しさを見つける」ことが、持続可能なキャリアを築く鍵です。教育の真骨頂は、この楽しさを発見するプロセスを支援し、個々の発見を促進することにあります。教育は知識やスキルの提供に留まらず、状況を前向きに捉える力を育成するべきです。
私は大学で起業のためのフレームワークやケーススタディを教えていますが、学生たちにはハードシングスがあるからこそ、それを乗り越えた際の喜びが大きいと説明しています。社外取締役やアドバイザーとしての経験から得た学びが自己信頼を強め、仕事を楽しむための源泉となっています。仕事の楽しみを感じるためには多様な経験が必要であるため、これを時間をかけて学生たちに伝えることに努めています。
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