CEOは開発者の罠に気をつけろ!


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シリコンバレー式 最高のイノベーション
スティーブン・S・ホフマン
ダイヤモンド社

本書の要約

多くのベンチャー・スタートアップは、よいものを作れば、マーケットから評価されると考えがちです。時間さえあれば成功できると信じ、マーケットとの対話をせずに、技術を深掘りする「開発者の罠」に陥ってしまいます。これを避けるために、プロトタイプを作り、顧客からのフィードバックを求めましょう。

スタートアップは自社の技術を過信するな!

機械でも何でも、自分が作ったものに関しては、その人がどれほどいいセールスマンでも、うまくいくかダメかの見分けがつかない。(マーク・アンドリーセン)

私は仕事柄、日々、スタートアップやベンチャーのピッチを聞いています。テック系の開発者ばかりの企業のピッチは自社のテクノロジーの優位性ばかりを話し、ビジネスモデルが置き去りにされることが多いのです。技術やスペックを深掘するばかりで、顧客の存在が忘れ去られています。顧客が興味を示さなければ、どんなすごいテクノロジーでも宝の持ち腐れになってしまいます。

CEOが戦略を組み立て、COOやCMOがマーケットとの会話を積み重ねることで、この失敗を避けられますが、多くのテックベンチャーは開発者で経営陣を固めてしまい、自分たちの技術力で勝負をしようとします。

22ヶ国でスタートアップを支援するアクセラレーターのスティーブン・S・ホフマンも、エンジニアがマーケットを無視すると失敗を犯すと述べています。

優秀なエンジニアはプログラミングしたがる。何かかっこいいものを作ることに熱中するのだ。問題は、エンジニアにとってかっこいいものをユーザーがかっこいいと思うとは限らないということだ。ユーザーは何か全く違うものを欲しがっているかもしれないのだ。だから、はじめからプロダクト作りに取り掛かるのは、時間のムダというだけでなく、失敗の可能性を高めることになる。(スティーブン・S・ホフマン)

プロダクトの開発に時間をかければかけるほど、メンバー全員が成功を信じます。開発者が暴走することで、サンクコストが積み上がっていきます。マーケットに評価されないプロダクトに数ヶ月もの時間を費やすと、軌道修正が難しくなるのです。特に資金に限りがあるベンチャーは、ここで会社を閉じることになります。

開発者の罠に気をつけろ!

自分たちの作ったものがユーザーの欲しいものではないという証拠があっても、チームは開発を進め、新しい機能を加え、問題を解決し、失敗プロダクトを成功させる道を探すものだ。失敗プロダクトに時間とリソースを注ぎ込めば注ぎ込むほど、真実を直視できなくなる。それがいわゆる”開発者の罠”だ。

2011年、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ノートン、イエール大学のダニエル・モーチョン、デューク大学のダン・アリエリーの3人は共同で研究を行い、「人は自分で作ったものには他人が作ったものよりはるかに高い価値を置く」ことを明らかにしました。

彼らの研究は異なる実験から成り、参加者はイケアの家具を組み立てたり、折り紙を折ったりしました。イケアの実験では、被験者は家具を組み立てるタスクを与えられ、自分で組み立てた家具をプロが組み立てた家具と比べて値段をつけるよう求められました。

被験者は、自分で組み立てた家具には、たとえ出来が悪くても、平均で63%も高い値段をつけていました。被験者が折り紙でカエルや鶴を折る実験もありましたが、皆自分の作品を評価し、プロと同じ値段をつけたのです。その一方で、折り紙を折らなかった被験者は、プロの作品にはるかに高い値段をつけました。

人はみな、自分が労力をかけたものに高い価値を置いてしまうのです。これが「イケア効果」で、人は時間と創造力を投資すると、感情が入ってそのプロダクトの価値がわからなくなってしまうのです。

イノベーションチームがプロダクトやサービスを開発し始めると、自分たちの作品に愛着がわき、その愛着から現実が見えなくなってしまつのだ。たとえユーザーがそのプロダクトを必要としていないことが証明されても、作り手はそれにほとんど価値がないことを認められず、「今あるものをどう改善しようか?」と考えてしまう。

多くのベンチャー・スタートアップは、よいものを作れば、マーケットから評価されると考えがちです。時間さえあれば成功できると信じ、マーケットとの対話をせずに、技術を深掘りする「開発者の罠」に陥ってしまいます。

これを避けるために、イノベーションと恋に陥るのをやめ、プロトタイプを作り、顧客からのフィードバックを求めましょう。PoCを重ねることで、顧客から評価されるようになり、製品やサービスを改善できるようになります。キャッシュを無駄遣いするのではなく、売り上げを狙える商品を作るようにしましょう。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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