ビヨンド・デジタル――企業変革の7つの必須要件(ポール・レインワンド, マハデバ・マット・マニ他)の書評

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ビヨンド・デジタル――企業変革の7つの必須要件
ポール・レインワンド, マハデバ・マット・マニ他
ダイヤモンド社

本書の要約

デジタルトランスフォーメーションは、単にデジタル技術を導入することではなく、ビジネスモデルや組織のあり方を根本的に変革することを指します。競争優位性を確立するためには、企業はビジネスモデルや組織文化を変革する必要があります。これを「ビヨンド・デジタル」と呼びます。

ビヨンド・デジタル時代に必要な7つのリーダーシップ

競争優位の本質が変わったこと、そしてデジタルなだけでは不十分であることを理解しなければならない。 いまこそ、デジタルを越えたその先、「ビヨンド・デジタル」に進むべきだ。(ポール・レインワンド,マハデバ・マット・マニ)

PwCの戦略コンサルティンググループであるPwC Strategy&のポール・レインワンド,マハデバ・マット・マニは、デジタルトランスフォーメーションとは、単にデジタル技術を導入することではなく、ビジネスモデルや組織のあり方を変革することであると述べています。

現代社会では、デジタル化だけでは競争に勝つには十分ではありません。競争優位性を確立するためには、企業はビジネスモデルや組織文化を変革する必要があります。これを「ビヨンド・デジタル」と呼びます。 ビヨンド・デジタルは、単なる技術の導入ではありません。企業全体を巻き込んだ変革プロセスです。

ビヨンド・デジタルは、企業が生き残り、成長するために不可欠な戦略です。ビヨンド・デジタルに取り組むことで、企業は競争優位性を確立し、顧客満足度を向上させ、生産性を向上させ、意思決定を改善し、リスク管理を強化することができます。

ビヨンド・デジタルには、変革を推進するリーダーが必要です。そのリーダーは、自社のあらゆる側面にチャレンジし、パーパス、ビジネスモデル、組織モデル、そして人材などに取り組む覚悟が求められます。彼らは自己にもチャレンジし、これまでのオペレーションの根本的なあり方に疑問を投げかける意志を持ち、それを実践することができるリーダーです。

トランスフォーメーションを実現するためには、リーダーが自身の役割を見直し、新たなビジョンを明確にし、そのビジョンを実現するための戦略を策定します。さらに、彼らは組織全体を巻き込み、変革の意識を醸成し、チームメンバーの能力や意欲を引き出すための環境を整えます。

このようなリーダーは、変化の中で自らの役割を担い、チームや組織を先導する存在です。彼らはチャレンジ精神と創造力を持ち、従来の枠組みにとらわれずに新たなアイデアを追求します。また、失敗を恐れずにリスクを取り、学びと成長を促進する文化を醸成します。

その上で、著者らは企業変革の7つの必須要件明らかにしています。
1.世界における自社の立ち位置を再構想する
2.エコシステムを作り上げて価値を創出する
3.顧客に関する専有的知見を体系的に構築する
4.成果主義の組織にする
5.リーダーシップチームの焦点を反転させる
6.従業員との社会的契約を再定義する
7.自身のリーダーシップのアプローチを創造的に破壊する 

ベスト・バイは、ビジネスのデジタル化だけでなく、顧客サービスの提供にも力を入れました。同社は、「ギーク・スクワッド」と呼ばれるチームを立ち上げ、顧客の自宅や店頭で技術的なサポートを提供しました。また、顧客の習慣やニーズを学び、家電製品やテクノロジーへの投資から最大限の価値を引き出せるように支援しました。

同社は、過去の仕事をデジタル化しただけでなく、パーパスから自社を捉え直し、「自社が果たす役割は何か」「それを果たすうえでデジタルがどのように役立つか」を再発明しました。その結果、多くの大型小売企業が店舗を閉める中でも、ベスト・バイは生き残れたのです。

ザラの成功の要因は、全社を巻き込んで確立され、拡大してきた強力なケイパビリティにあります。そのケイパビリティは、以下の要素によって支えられています。
・顧客に関する深い洞察
・トレンドに敏感なデザイン
・効率的な製造とオペレーション
・一貫性のある世界的なブランディング戦略。

ザラは、顧客に関する深い知見を持っており、そのニーズと好みを的確に把握しています。さらに、流行に敏感であり、常に最新のデザインを提供することで顧客の期待に応えます。一方、ザラは効率的な製造とオペレーションを実現しています。迅速な生産サイクルと効率的な供給チェーンを構築することで、需要の変化に素早く対応できます。 また、ザラは世界的なブランディング戦略により、一貫性のあるイメージを構築しています。

顧客は世界中のザラ店舗で同じブランド体験を享受できるため、信頼感を抱きます。 これらのケイパビリティは、互いに依存し合いながら相互補完的なシステムとして機能しています。顧客の深い洞察がデザインに反映され、効率的な製造とオペレーションがデザインの実現を支え、一貫性のあるブランディングが顧客に信頼を与えるという具体的な例です。

ザラは、これらの強力なケイパビリティを通じて市場での競争力を確立し、成功を収めています。その結果、多くの顧客に支持され、グローバル企業として成長を続けています。

ビヨンド・デジタルの世界で競争優位を保つために必要な3つの要素

デジタルを越えた世界では、企業は物事を違う方法で実行できるし、そうしなければならない。企業は顧客に提供できる独自の価値について再考できるようになり、そうしなければならなくなる。デジタルテクノロジーによって、業務のやり方を改善できるだけではなく、より良い業務を行えるようになる。未来を新たに構想することで、まったく新しいビジネスモデルが生まれることさえあるのだ。

デジタル化の進展により、ビジネスの世界は大きく変化しています。企業は、自社の立ち位置を再考し、持続的な優位性を確立するために、変革を迫られています。デジタル化の進展は、企業に大きな脅威を与える一方で、大きな機会をもたらしています。企業は、この変化に対応し、変革を起こすことができれば、持続的な優位性を確立することができます。

競争優位を保つためには、「需要の変革」「供給の変革」「経営環境の変化」といった根本的な要素が重要です。 デジタル時代において、多くの既存企業は持続的な価値を生み出すために、トランスフォーメーションを実施する必要があります。

単にデジタルイニシアチブを実行するだけでは、他社と同様のことをしているために競争で勝つことはできません。それでは差別化が図れず、競争力を維持することが難しくなります。 したがって、企業は「需要の変革」に注力する必要があります。市場の需要や顧客のニーズを正確に把握し、それに合わせた製品やサービスを提供することが求められます。

また、「供給の変革」も重要です。効率的な生産や供給チェーンを構築し、迅速かつ柔軟に顧客の要求に応える体制を整える必要があります。 さらに、変化する「経営環境」にも適応することが必要です。技術の進化や競合他社の動向、規制環境の変化などを的確に把握し、それに応じた戦略や組織の変革を行うことが求められます。

ビヨンド・デジタルの時代において、競争優位を確立するためには、これらの要素を組み合わせた総合的なアプローチが重要です。企業は独自の価値提案を創造し、顧客にとって不可欠な存在となるために、変革を進める必要があります。

ビヨンド・デジタルにおいてケイパビリティの獲得が重要な理由

今日の自社の提供物が最高だからといって、明日も最高だとは限らない。いまや賢明な企業は、自社が販売するモノだけでなく、活動やオペレーションを通じて差別化することに注力している。他社と差別化されたケイパビリティをしっかりと獲得できれば、商品、サービス、ソリューション、エクスペリエンスの流れがついてくる。

ビヨンド・デジタルの考え方を取り入れると、企業は単にデジタル技術を活用するだけでなく、革新的なアプローチと積極的な変革を追求する必要があります。このアプローチでは、以下のような要素が重要となります。

・イノベーションの推進: ビヨンド・デジタルの世界では、伝統的な枠組みにとらわれず、従来のビジネスモデルや業界の常識を疑い、積極的なイノベーションを促進する必要があります。組織は、従来の枠組みにとらわれない思考を育み、新しいアイデアやビジネスモデルを生み出すための環境を整えることが重要です。

・プラットフォームとエコシステムの活用: ビヨンド・デジタルの世界では、企業は孤立して活動するのではなく、他の企業や組織との連携を通じて、さらなる価値を生み出すことが求められます。プラットフォームやエコシステムを活用することで、さまざまなステークホルダーとの連携や共創が可能となります。これにより、企業は自社のケイパビリティを拡大し、市場の変化に柔軟かつ迅速に対応することができます。

・ユーザーエクスペリエンスの再定義: ビヨンド・デジタルの世界では、顧客の期待はますます高まっています。企業は単にデジタルツールやソリューションを提供するだけでなく、顧客の感情や体験にフォーカスし、優れたユーザーエクスペリエンスを提供することが求められます。デジタル技術を活用して、パーソナライズされたサービスやシームレスな顧客体験を提供することが重要です。

・データ分析と意思決定: ビヨンド・デジタルの世界では、データが企業の重要な資産となります。データの収集、分析、活用を通じて、企業は洞察を得て意思決定を行うことができます。

テクノロジーが私たちのケイパビリティにおいて重要な役割を果たしてきましたが、ケイパビリティは単なるテクノロジーの枠を超えたものです。それは、ナレッジ、プロセス、テクノロジー、データ、スキル、文化、そして組織モデルが複雑に絡み合い、高度に統合されたものであり、他社が真似できない価値創造を可能にします。

その複雑さと統合の必要性から、ケイパビリティは模倣が難しい存在です。したがって、自社が何を提供する企業であるかを軸にして自己を定義する企業は、他社とは一線を画し、長期的な競争優位性を築く傾向があります。

未来を手にするためには、2つの基本的な問いに明確かつ誠実な答えを出せる企業が重要です。「いまの世界に自社はどのような独自の価値を提供しているか」という問いに対して、企業は自身の特徴や強みを明確に定義し、他社との差別化を図る必要があります。

さらに、「その価値を誰よりも巧みに生み出すためのケイパビリティは何か」という問いに対しては、企業はナレッジ、プロセス、テクノロジー、データ、スキル、文化、そして組織モデルなど、複数の要素が絡み合っているケイパビリティを持つ必要があります。

アップルは、デザイン能力で知られる企業です。同社は、コンピュータ、音楽デバイス、電話、カメラ、時計など、同社が進出したすべての業界に創造的破壊をもたらしてきました。アップルのデザイン能力は、単なるテクノロジーを超えたものです。

アップルのデザインはナレッジ、プロセス、テクノロジー、データ、スキル、文化、組織モデルが複雑に絡み合ったものを高度に統合したものであり、他社にはできない価値創出を可能にします。

他にも、アマゾン、フリトレーなど、ビヨンド・デジタルの考え方を採用して成功を収めている企業は数多くあります。これらの企業は、テクノロジーとリアルの世界をうまく融合させることで、他の企業が追随できない価値を創出しています。

ビヨンド・デジタルの世界では、未来を手にするためには過去の信念体系を捨て、より大胆かつ革新的なアプローチで新たな価値提供を定義することが必要です。個々の組織が単独で実現できない方法で価値を生み出し、可能性の限界を常に押し広げていくためには、ネットワークとエコシステムの中で他社と協力する姿勢が重要です。

これには、伝統的なビジネスモデルや枠組みにとらわれず、新たなアイデアと革新を追求することが含まれます。ビヨンド・デジタルの思考を取り入れることで、企業は常識を疑い、既成概念にとらわれずに行動できるようになります。さらに、プラットフォームやエコシステムを活用することで、異なるステークホルダーとの連携や共創が可能となります。

重要なのは、協力と連携の精神です。他社との協力によって、企業は新たなパートナーシップを築き、相乗効果を生み出すことができます。それによって、企業は単独では到達できないリソースや専門知識にアクセスし、市場の変化や顧客の要求に柔軟かつ迅速に対応することができるのです。

ケイパビリティは、他社が容易に模倣できないほど複雑であり、企業の長期的な競争優位性を形成します。 したがって、自社がどのような独自の価値を提供し、それを巧みに生み出すためのケイパビリティを明確に持つ企業は、未来を手にすることができるのです。このような企業は、自身の強みを活かし、市場の変化に適応しながら持続的な成功を収めることができるでしょう。

ビヨンド・デジタルの世界では、従来の常識や枠組みにとらわれず、イノベーションと協力の精神を持つ企業が未来を手に入れます。これによって、企業は競争優位性を築き、変化の激しいビジネス環境においても持続的な成功を収めることができるでしょう。

フィリップス、日立、タイタンなど、ビヨンド・デジタルの世界で成功を収めた本書の12社のケースからは、貴重な教訓を学ぶことができます。今後、いくつかのケースをこのブログで紹介したいと思います。


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