カモメになったペンギン
ジョン・P・コッター, ホルガー・ラスゲバー
ダイヤモンド社
本書の要約
ジョン・P・コッターの「8段階の組織変革プロセス」は、企業の成長を促進します。企業変革は一回限りのものではなく、継続的な改良と発展が必要です。これにより新しい文化が生まれ、企業の成長がさらに進行します。リーダーは変化を感じ取り、チームと一緒に企業の未来を創造する役割を持っています。
組織変革を成功させる8段階のプロセスとは?
我々のコロニーがこの難局を乗り切るためには、みんなを導くチームが必要だ。私ひとりではこの仕事はできない。この仕事を進めるには、我々五羽でチームを組むのが最適だと思う。(ペンギンのルイス)
ジョン・P・コッターの有名な「組織変革を成功させる8段階のプロセス」の話を大学の授業でわかりやすく説明しようと思い、久々に本書を再読しました。経営者が企業変革を主導する際に、コッターの「変革の8段階プロセス」をステップごとに行うことで、成功確率が高まります。このプロセスを寓話にしてわかりやすく説明したのが本書になります。
□準備を整える
1.危機意識を高める
南極で平穏に暮らしていたペンギンたちは、彼らの住む氷山が溶け始めるという緊急事態に遭遇しました。異端者であるペンギンのフレッドがこの問題を発見し、氷山の模型を使って情報を共有しました。現状を維持したいと願うペンギンたちから多くの反対意見が出る中で、リーダーの一人、アリスは未来を予想しながら討議を進めました。
初期段階で重要なのは、組織内で現状の危機感を共有し、変革の必要性を認識させることで、それがアリスが目指したことでした。
2.変革推進チームをつくる
リーダーペンギンのルイスは5羽のリーダーを選び、一緒に問題を解決するためのチームを組みます。ルイスは変革を推進するための多様なスキルと能力を持つ5人のチームを作り上げることで、変革を推進しようとしたのです。氷山の危機を解決するためには、好奇心が必要だと考えたペンギンたちは、空を飛ぶカモメとの対話からビジョンを考え始めます。
この氷山は、我々そのものではない。ここは今我々が住んでいるというだけの場所に過ぎない。我々はカモメよりも賢く、強く、そして有能である。だから、彼らにできることが、もっと上手く、我々にできないはずがあるだろうか? 我々はこの氷の塊につながれているわけではない。この場所を去ることができるのだ。
リーダーのルイスは全体会議で、カモメのように移動の自由を手に入れることを宣言します。
□すべきことを決定する
3.変革のビジョンと戦略を作り出す
ペンギンたちは解決策となるビジョン(移動の自由)と、そのための具体的な戦略を策定します。これは、組織の未来像を明確にし、それを達成するための道筋を示す行為です。
□行動を起こす
4.変革のビジョンを周知徹底する
ペンギンたちは他の仲間たちにビジョンを伝え、理解と支持を得ます。これは、ビジョンを全員に分かりやすく伝え、賛同を得ることが重要であることを示しています。
5.行動しやすい環境を整える
他の氷山に移動するためには、氷山に残るというメンバーの意見を変えるエビデンスを示すことが重要になります。新たな氷山を見つけるための偵察隊をつくり、調査をスタートします。障害をできるだけ取り除き、メンバーが行動しやすい環境を整えます。
6.短期的な成果を生む
変革の途中で小さな成果を挙げることが、モチベーションを維持し、さらなる成功へと繋がる重要なステップです。ペンギンたちは偵察隊をヒーローにすることで、新たな動きを加速します。
7.さらに変革を進める
ペンギンたちは偵察を開始し、検討を重ねながら、現状よりも素晴らしい新天地を発見し、新たな氷山に移動します。これは、小さな成功を喜びつつも、継続的な改善と変革の必要性を忘れないことを示しています。
8.新しい文化を築き、それを定着させる
最終的に、ペンギンたちはカモメと同じように自由に移動できるようになり、新しい場所で生活を開始しました。さらに、より良い環境の氷山を見つけ出し、その場所へ移住する選択をしました。これは、変革が成功し、新しい文化が組織に定着したことを示しています。つまり、ペンギンたちは、より良い未来を実現するための変革のマインドセットを手に入れたのです。
ペンギンの寓話からわかるように、「変革の8段階プロセス」によって、企業の変革を成功させることも可能です。
変革に積極的な文化を作り、それを定着させよう!
ルイスは、氷山が溶けていることをフレッドが発見したところから話を始めた。そして、それから彼らが、(1)困難な問題に対してコロニー全体の危機意識を高めたこと、(2)変革を推進するチームのメンバーを慎重に選んだこと、(3)よりよい未来へ向けて適切なビジョンを打ち出したこと、(4)そのビジョンをコロニーのみんなが理解し受け入れられるように伝えたこと、(5)実践的な方法でできるだけ多くの障害を取り除いたこと、(6)早い時期にいくつかの成果を上げたこと、(7)新しい生活がしっかりと確立するまでは変革の手を緩めなかったこと、(8)最後に、凝り固まった古い因習からは変革を実現させる力は決して生まれないこと、を子供たちに話して聞かせた。
企業の変革も、個々の行動の変化から始まります。ペンギンがカモメに変身する物語を通じて学んだように、そのためには、まず自分自身の考え方と感じ方を変えることが必要です。
ペンギンの寓話から、思考と感情の変化の大切さを学び取ることができます。次の手順で、私たちは思考と感情を変えることで、自身の行動を変える力を手に入れることができます。
□考え方を変える
1.データを収集し、それを分析する
考え方を変えるためには、まず現状を理解することが必要です。データは客観的な現状を見せてくれます。そのデータを分析し、事実を把握します。
2.情報を論理的に提示する
次に、その事実を元に、新しい考え方を提示します。これは変革のビジョンを共有することに相当します。具体的で論理的な説明によって、周囲の人々の考え方を変えることができます。
3.行動が変わる
考え方を変えることにより、行動が変わります。これは、障害を取り除き、短期的な勝利を作り出すプロセスに繋がります。
□感じ方を変える
1.驚きや感動の経験を伝える
ある事象に対する感じ方を変えるためには、人々の感情に訴える必要があります。これは、ビジョンを伝えることに相当します。自分の経験を目に見える形で伝えることにより、他人の感じ方を変えることができます。
2.感じ方が変わる
人々の感じ方が変われば、その状況に対する反応も変わります。これは、ビジョンを理解し、賛同するプロセスに繋がります。
3.行動が大きく変わる
感じ方を変えることにより、行動が大きく変わります。これは、改善と変革を続け、新しい文化 を作り出すプロセスにつながります。
このように、自分の考え方や感じ方を変えることで、行動が大きく変わり、新たな結果を生むことができます。そしてそれは、企業の変革と同じ道筋を辿ります。変革は、ただ新しいことを始めるだけではなく、古い考え方や感じ方から新たな視点に移ることを含みます。
経営者として企業の変革を進める際には、この8つのステップを踏みながら、具体的な行動を起こすことが大切です。そして、その中で一緒に働くメンバー全員が変革の必要性を理解し、共有することが大切です。
企業変革は決して一度きりのものではありません。継続的な改善と進化が求められるのです。そしてそれが新たな文化を創り出し、企業をさらに成長させていくのです。リーダーは変化に敏感になり、メンバーと共に企業の未来を切り開いていくべきです。
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