中山淳雄氏の推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来の書評


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推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来
中山淳雄
日経BP

本書の要約

ユーザーにとってコンテンツは「消費財」ではなく「表現財」となり、いかに自分を「関与させていくか」という対象になりました。彼らは自分の好きな対象を「推し」として表現し、情報発信を積極的に行うことでヒット商品作りをサポートするようになったのです。

コロナ禍が早めたエンタメのデジタル化

個々人のスマホだけがエンタメの生命線であり、2020年3月からほぼ1年以上にわたってユーザーたちのエンタメ消費行動は強制的にデジタル空間に移行させられたのである。中山淳雄

コロナによるロックダウンがエンタメの世界を一気に変えてしまいました。予測されていた未来がいきなり、2020年から始まったのです。4000億円近い音楽ライブ市場がコンサート会場から、パソコンやスマホでの同時視聴に変わり、5000億円のマンガ出版市場が一気にスマホアプリにシフトしました。

コンサート会場も劇場も映画館も書店も営業が制約され、締め出されたために、2020年はエンタメのデジタルシフトが起こった年として、今後人々から思い出されるはずです。個々人のスマホだけがエンタメの生命線であり、2020年3月からほぼ1年以上にわたってユーザーたちのエンタメ消費行動は強制的にデジタル空間に移行させられ、人々の視聴行動を変えてしまったのです。

米国では2020年4~6月と10~12月を比べたときに、ビデオゲームのプレイ時間は30%増え、週に平均4.4時間費やすようになりました。ポッドキャストやクラブハウスのような音声サービスも成長し、週7.5時間も視聴するサービスへと変わりました。動画配信などビデオ視聴にいたっては「平均で」週20時間も視聴する巨大サービスとなっています。

ビジネスパーソンにとっての「余裕のあるスキマ時間」は以前の15%増しとなり、スポーツやテーマパークなどアウトドアに消費する金額は30%少なくなる一方、自宅で楽しむエンタメ消費の時間と市場が短期間で増加しました。

コロナワクチンのおかげで、人々の外出は増えていますが、一度習慣化したデジタル視聴は人々に根付き、特にゲームは2021年夏以降もほぼ変わらないプレイ時間で、消費も落ちていないと言います。

2020年に世界ゲーム市場は20兆円近くに及び、2025年には30兆円規模になることが予想されています。テレビ・ホームビデオの20兆円、新聞・雑誌市場や広告市場の10兆円、音楽市場の7兆円といったサイズを大きく飛び越えて、エンターテイメント産業のなかで、ゲームは最大のコンテンツ市場になっていきます。

ユーザーにとって趣味趣向は「消費財」ではなく「表現財」となり、いかに自分を「関与させていくか」という対象になった。だから「推し」として関与対象を表明し、かつては個人的・非政治的だったサブカルコンテンツを、社会的でときには政治的に楽しむ「祭り」型のコンテンツとして扱うようになってきた。この領域を世界的に先導しているのは日本であり、規模で日本を圧倒する米国や中国にはない先端的な事例にあふれている。

ユーザーは「自分が本当に好きなものにだけに時間を使いたい」と思うようになっています。時間を無駄使いしないために彼らはユーザーの時間対感動という「感動コスパ指数」を重視していると著者は指摘します。

コンテンツの供給者は、今後ユーザーの感動コスパを上げる方法を考えていくべきです。その際、推しエコノミーを意識し、アナログとデジタルの両方でファンの応援を獲得していく必要があります。

推し経済圏が日本のエンタメ産業の強みである理由

大ヒットをつくりためには、浮動ユーザーを味方につけるためのファン戦略が欠かせなくなっています。ファンとインフルエンサーのお勧め投稿によって、人々は安心してそのコンテンツに時間を使ってくれるようになるのです。

ネットの世界では、一定の発信リテラシーをもって、フォロワーを獲得できるような、面白い視点を持った投稿者が評価されるようになってきました。発信リテラシーがある人たちを数多く味方につけることで、その作品をヒットさせられるようになるのです。筆者の「鬼滅の刃」の分析を読むと、推しエコノミーの実態を理解できます。

発信が関与を生み、それがこれまでにない深い関心を育てるのだ。ユーザーは「消費」ではなく「体験」と「物語」にお金を使っている。モノとお金の交換の時代から、体験価値の時代に入っており、その時間をよりよく過ごすことにお金が消費される。時間をつぶすという行為はデフレ化しているのだ。

SNS時代において、会社の肩書や学歴を誇示することは、もはやオシャレではありません。ビジュアルでの差別化はイケメン・美人に許された特権で、金持ち自慢や恋愛リア充自慢は誹りを受けてしまいます。

しかし、キャラクターや2次元作品を使った自分の趣味嗜好の顕示は、自分自身の能力を問われず、誰もが親和的な気持ちをもって受け入れてくれる安全な自己表現分野です。人は趣味を使って、アイデンティティの差別化を図るようになっているのです。

「推し」という発信によって、その人の価値を高めることができるようになっているのです。キャラクターやアニメなどの「開かれた商品」を生み出し、それを物語にすることが重要です。ファンをその物語に参加させ、表現させることをコンテンツ会社はもっと意識すべきです。

ファンとの交流を軸にしたコンテンツを生み出し、その賞味期限を長くすることをファンとともに考え、彼らが喜ぶ商品開発をひたすら行なっていくことで、日本らしいコンテンツマーケットを創出できます。

ニッチで高品質な作品を求める一定数のファンによって支持される商品・サービス・プラットフォームを作り、運営することが、日本エンタメの目指すべき方向ではないか。そこには拡大や成長を志向するものよりも、バランスや調和をもって人々の交換作業のハブになれるような設計思想が込められている。1人の才能に依存しつつも、組織でその才能の再現性を高めることを担保し、ゆるりと永続的に思いのままのコンテンツをたゆまなく作り続ける。

日本のエンタメ産業は、米国と中国という2つの異なる強大な市場環境の合間にあり、今後、どちらに寄り添って生きていくかを試行錯誤していくはずです。

日本はキャラクターの経済圏をアニメ製作委員会という独自な仕組みで分散的にドライブさせています。その生み出した経済圏の総量は、米国ハリウッドを越えており、米国や中国にとっても見習うべきIP創出大国であると著者は指摘します。

この推し経済圏がどちらのマーケットから評価されるかはまだわかりませんが、江戸の版画が印象派に影響をもたらしたように米中の若者を虜にしていくはずです。

エンタメ世界の中心はニューヨークやロサンゼルスではなく、まさにこの東京であり、私たちは多くのアドバンテージを持っています。「推し」やリール型の活動によってファンが経済圏の創造に加担している事象が日本の強みで、これが日本のエンタメ産業を強くしていくはずです。

 

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この記事を書いた人

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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