マスター・オブ・スケール 世界を制したリーダーが初めて明かす 事業拡大の最強ルール(リード・ホフマン, ジューン・コーエン)の書評

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マスター・オブ・スケール 世界を制したリーダーが初めて明かす 事業拡大の最強ルール
リード・ホフマン, ジューン・コーエン
マガジンハウス

マスター・オブ・スケール(リード・ホフマン, ジューン・コーエン)の要約

起業家に必要なマインドセットには、好奇心、素早い行動力、チームワーク、そして不屈の精神力があります。正しいマインドセットを持つことで、個人や企業は顕著な成長を遂げることができます。よいパートナーを持つことで、自らの思考や物の見方を変えることができ、行動や結果にも大きな変化をもたらします。

起業時に必要なノーを乗り越える力とは?

本書では、「事業を拡大すること」は単なるデータの蓄積ではなく、心や意識の問題でもあると考えている。欠かせないのは確たる信念であり、それと同量の、失敗を厭わない情熱である。(リード・ホフマン, ジューン・コーエン)

本書は、シリコンバレーの巨人たちが実際に経験した事例を通じて、事業拡大のための最強のルールを紹介しています。リード・ホフマンは、リンクトインの創業者やペイパルマフィアとして有名です。

今はIT企業が集中するシリコンバレーで企業トップや国家元首のアドバイザーとして活躍しており、その経験を踏まえて本書を執筆しました。 ホフマンはポッドキャストの「MASTERS of SCALE」という番組で多くの経営者をインタビューし、自分の知見とともに本書をまとめています。この番組は、200カ国以上で何百万人ものリスナーを持つ人気番組です。

本書では、Instagram、Facebook、Google、スターバックス、Netflixといった名だたる企業の創業やビジネス拡大の内幕やSlackのピボットの事例を取り上げています。これらの物語を通して、シリコンバレーの大手企業がどのようにして成功を収めたかの秘訣を探ることができます。

さらに、ビジネス拡大における知恵や洞察、インスピレーションにも言及しています。成功した経営者たちの思考方法やアプローチを学ぶことができるでしょう。特に、ホフマンの洞察は優れており、起業家が取り組むべき事柄や避けるべき行動についても深く掘り下げています。

本書の冒頭で、「『ノー』から学べ」というルールが紹介されています。成功者たちは、失敗や挫折を経験しながら成長してきました。彼らは、『ノー』と言われても諦めずに自分の信念を貫き、新たな道を切り拓いてきたのです。

「ノー」にはいろいろあるからだ。 重要な「ノー」もあるが、それ以外はすべて意味のない「ノー」ということである。「中身のあるノー」なら、アイデアを修正することができる。「懐疑的なノー」はチャンスを再考するきっかけになる。傾聴する価値のある「ノー」もあるということだ。 しかし、「怠慢なノー」に耳を貸してはならない。素早く先に進むのが賢明だ。

人々は様々な理由で「ノー」と言うことがあります。意見の相違や不確かさ、リスクの恐れなど、さまざまな要素が関与しています。しかし、私たちが目指す目標や夢に向かって進むためには、それらの「ノー」に打ち勝つ必要があります。そのためには、自信と信念を持ち続けることが重要です。

一つの肯定的な返事があれば、それは私たちに希望とエネルギーを与えてくれます。それは、私たちが努力を続けることを可能にし、困難を乗り越える力を与えてくれます。たとえそれが一人の人からの「イエス」であっても、その一言が私たちの自信を取り戻すきっかけになるのです。

「煮えきらないノー」とは、「ノー」と「イエス」の間に存在する状態を指す表現です。この表現は、アイデアに大きな可能性があることを示唆しています。なぜなら、最高のアイデアに対して、人々はついつい「イエス」と「ノー」の両方を言いたくなるからです。

最高のアイデアは、あらゆる人の気分を激しく揺さぶる力を持っています。それは、普通のアイデアとは異なり、人々の心を魅了し、感情を揺さぶることができるのです。最高のアイデアは、人々の中に眠っている欲望や夢を呼び起こし、新たな可能性を見出させるのです。

「煮えきらないノー」の存在は、私たちにとって重要な示唆を与えてくれます。それは、最高のアイデアに対して、私たちは単純に肯定的な反応だけでなく、否定的な反応も抱くことがあるということです。この両方の反応が存在することで、私たちはアイデアの可能性を最大限に引き出すことができるのです。

ホフマンはノーにはさまざまな形があるといいます。相手のノーを見極め、正しい答えを得るようにしましょう。怠慢なノーは無視し、煮え切らないノーから次のアクションを考え、すぐに行動を起こすべきです。苦い体験が必要な解決策をもたらし、これが未来の成功につながるのです。

今しかない──会社の規模がまだ小さいから、顧客全員に会えて、知り合いになれる、そしてひとりひとりのために役立つことができるんだ。(ポール・グレアム)

顧客から直接受け取るフィードバックに基づいて製品を改良することは、創業時の企業にとって大きなチャンスです。この時期は、顧客の声を集め、製品を定義し、丹精込めて改良を加える好機でもあります。

顧客に愛される製品を作り上げるためには、顧客のフィードバックをマネジメントし、効果的に活用することが重要です。製品の改良に取り組み、顧客の期待に応えることで、企業の成長と成功を実現することができるでしょう。この時のパッションある行動が初期の顧客をファンにし、拡大のための口コミが起きるのです。

「100万人のユーザーにまぁまぁだと思って使われるよりも、100人のユーザーに熱烈に愛されるほうがいい」とChat GPTの代表のサム・アルトマンは、Yコンビネーターの社長の時に述べています。創業時には熱狂的なユーザーが必要だという教えは、起業家やビジネスパーソンにとって重要な指針になるはずです。初期のユーザーの熱烈なフィードバックが事業拡大の基礎になるのです。

起業家に必要な4つのマインドセットとは?

必要なのは、正しいマインドセットである。まずは、好奇心常に「これは、うまくいくだろうか?」「ビジネスとして成立するだろうか?」「これが僕の探し求めていたアイデアだろうか?」と問い続けなければならない。次に、素早い行動力価値を持つアイデアが見つかったら、即座に行動を起こすこと。さらに、共同で取り組む必要もある他の人の着想と能力を活用して、自分のアイデアを改善し具現化する。最後に、不屈の精神力だ。避けようのない数々の失敗を乗り越え、目標達成まで諦めずに立ち向かっていく姿勢だ。(マーク・キューバン)

起業家に必要なマインドセットには、好奇心、素早い行動力、チームワーク、そして不屈の精神力があります。起業家には正しい答えをともに見つける共同創業者という存在が欠かせません。

正しいマインドセットを持つことで、個人や企業は顕著な成長を遂げることができます。よいパートナーを持つことで、自らの思考や物の見方を変えることができ、行動や結果にも大きな変化をもたらします。マインドセットの変更は簡単な作業ではないかもしれませんが、意識的に取り組むことで、より良い成果を実現することが可能になります。

Instagramの成功にも共同創業者の存在とチームからの正しいフィードバックがありました。画期的なアイデアは個人ではなく、人とのつながりによって生まれることを忘れないようにしましょう。一人の力には限界があるのです。

異論を持つ人々は新しい視点や意見を提供し、これによって我々の考え方が深まります。彼らの異論は、私たちの思い込みに疑問を投げかけ、新たな発見やアイデアの可能性を開くきっかけとなります。

創造的な人々は常に新しいアイデアや解決策を思いつく才能を持っています。彼らとの対話は、我々自身の創造性を刺激し、さらなるアイデアの創出を促します。

懐疑的な人々は、異なる視点やリスクを考慮するのに長けています。彼らの疑問や懸念に耳を傾けることで、より現実的な視点を得ることができ、アイデアの実現性を見極めるのに役立ちます。

また、他の起業家との対話は、ビジネスの成功や失敗についての貴重な経験や知見を共有する機会となります。彼らのアドバイスや教訓を受け入れることで、我々のアイデアやビジネスプランを再考するきっかけになります。

企業文化の構築も起業家には欠かせません。会社を設立する際、最初に採用する人々は、ただのスタッフではなく、自社の文化を共に築き上げる共同創設者としての重要な役割を担うことを忘れないようにしましょう。

文化は、企業が成し遂げようとするものすべての根底をなすものなので、チームが小さくて文化にまだ可塑性がある時期に、意識的に考え始めることが重要である。(リード・ホフマン)

ホフマンは「文化とは常に構築中なものだ」と言います。経営者や従業員がともに正しいビジネス文化を共有し、相互に学び合うことで、より良いビジネス環境を構築できるのです。逆に、壊れた文化が起業に根付いてしまうことで、企業は成長できずに破綻するリスクを高めます。

起業家が直面する試練は多岐にわたりますが、それらを解決するためには、まずは文化の構築が必要です。良い文化を持つ会社は、人材の確保や戦略の実行、顧客との信頼関係づくりなど、あらゆる業務を円滑に進めることができます。起業家は、早急に文化の構築に取り組むことが成功の鍵となるでしょう。企業文化に合致した社員を採用することが、実は成功の秘訣なのです。いくら優秀でも不適切な人材を企業に入れないようにしましょう。

また、「従業員ファースト、顧客セカンド」への方針転換は、従業員一人一人のパフォーマンス向上につながり、結果として顧客へのより優れた製品やサービスを提供することができます。従業員を最優先に考える文化を適切に築くことが、この目標達成の鍵となります。

経験を捨て去ることが重要な理由

自ら20有余年にわたって苦労して得た専門知識を脇に置いて、ナイキをシューズ会社からブランドへと方向転換させた。シューズの市場が1980年代初めに変革期を迎えることも、もし彼自身とナイキがそれに適応できなければ会社は生き残れないことも見通していたからだ。

「これまでの知識を捨て去る」というルールも大切です。成功者たちは、常に柔軟な思考を持ち、新しいアイデアや手法に挑戦してきました。過去の成功体験にとらわれず、常に変化に対応できるよう努力してきたのです。ナイキが成長したのも、フィル・ナイトがブランドの重要性を理解し、顧客の定義を広げ、コミュニケーションを変えたからなのです。

仕事の効率を上げるためには、常に新しいアプローチやアイデアを模索することが必要です。過去の成功体験に固執すると、新しい成果を生み出すことが妨げられる可能性があります。過去の戦略が今でも機能しているかどうかにかかわらず、新しい視点で物事を考え、柔軟なマインドセットを持つことが重要です。

以前の成功体験を基に同じ手法を繰り返すのではなく、状況の変化に応じて新たな戦略を試す勇気が求められます。また、組織全体でこのようなマインドセットを養うことが大切で、古い枠組みにとらわれず、新しいアイデアや挑戦を積極的に受け入れる文化を築く必要があります。

時代は絶えず変化します。同じツールや知識、戦術がずっと効果を発揮し続けるわけではありません。解決しようとする問題が変わり、市場が変化し、競合が進化し、業界が変容し、そして何より私たち自身も変わっていきます。

自分自身を永遠のベータ版と見なす。(リード・ホフマン)

私たちもホフマンの考えを見習い、自己成長を追求し、新たな考え方で物事にアプローチしましょう。新たな挑戦や学びの機会を積極的に求め続け、自分自身を未完成品と捉え、常に改善し続けることが重要です。成功したければ、以前とは異なる作戦を立てる必要があるのです。

「ユーザーの行動に目を向けよ」というルールも示唆に富んでいます。顧客が求めていると答えたことと、実際の彼らの行動には大きな違いがあることがあります。ユーザーの言葉をそのまま字義通りに受け取ってしまうと、予期せぬ問題に直面する可能性があるのです。

顧客が何を求めているかを深く理解し、それに沿ってプロダクトの性能を微調整していくのだ。

時にはユーザーの言うことを無視し、彼らのすることを観察するほうが有益な場合もあるとホフマンは指摘します。顧客の観察において重要なのは、特定の意図や仮説にとらわれず、彼らの行動をオープンな姿勢でそのまま観察することです。

プロダクトにおいて顧客にとって本当に価値のある部分を見極め、それを何があっても守り抜く姿勢が必要です。これが、最も重要な約束となります。顧客について学び、顧客から学ぶことを明確にすることで、企業は飛躍的に成長できます。データと顧客の気持ちを両輪にプロダクト開発やマーケティングを行いましょう。

ホフマンは成功のルールを10個紹介し、ケース分析や理論を交えて詳しく解説しています。『マスター・オブ・スケール』は、事業拡大を目指すリーダーや起業家にとって、非常に役立つ一冊です。シリコンバレーの成功事例を学び、自身のビジネスに活かすことができるでしょう。


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